27
『一体、奴【浅葱】は何処で何をやっているのだ?』
吾郎がそんなことを思っている急に包帯の女性の
具合が悪くなり、吾郎らはすぐに包帯の女性が
最初に運び込まれた病院へと連れて行った。
色々な検査や診察などをしたが一向に原因が
わからなかったために数日、包帯の女性は
そのまま、病院へと入院することになった。
夏海は夏海も弘三の葬式の準備などで
自分の家へと戻っていった。
久しぶりに吾郎は家に一人きりになった。
いや、始めてかもしれない……
気が付けば、篤子がいたし……
包帯の女性や夏海なども……
誰か、家にいた。
せっかく、一人になったことだし、吾郎は
少し、自分のことを紐解くことにした。
手始めに吾郎は家のクローゼットの奥に仕舞いこんでいる
アルバムを引っ張り出してきた。
アルバムのページを開くたびに吾郎がすっかりと忘れていた
昔の写真が次々と出てきた。
会社で行った慰安旅行や篤子とのデートの写真……
最初のアルバムが終わり、次のアルバムの最初のページを
捲った瞬間、吾郎は顔色が曇った。
『だ、誰だ? この女性は?……』
篤子とは違う女性と楽しげに一緒に写っている写真に
吾郎は釘付けになった。
誰かに似ているようだが吾郎にはどうしても思い出せない!
『誰だ?……』
吾郎がさらに深く考え込んだその時、吾郎は
キーン!……
頭を締め付けられるようない痛みに襲われ、
そのまま倒れ込み、気を失った。
しばらくして、意識を取り戻した吾郎はハッとし、
再び、写真に目をやった。
写真に写っている女性の面影と自分の前に
よく現れる滑稽なピエロが似ているのだ!
『そ、そんなバカなぁ!……』
吾郎は驚いた。
吾郎は間違いかと何度も写真を見たが写真に写っている
女性の面影は間違いなく、自分の前に現れるピエロだった。
『一体、この女性は誰なんだ?』
吾郎は写真を見詰めたまま、しばらく考え込んだが
やはり、彼女の名前はおろか、彼女のことすら、
何一つ、思い出せない!
彼女の手掛かりすら、何もない吾郎は仕方がなく、
会社などの人らに彼女の写真を見せ、彼女のことを聞いたが
誰一人として彼女のことを知る者はいなかった。
『おかしいぞ!…… なんで誰もこの女性のことを
知らないのだ?…… 付き合っていたのではないのか?』
写真に写っている女性が誰なのか、わからないまま、
吾郎は漠然とした不安を感じていた。
『もしかしたら、家族の者だったら?……』
答えは同じと思いつつも、微かな望みを持ち、
離れて暮らしている家族の者にその写真を見せた。
だが、やはり、答えは会社の者と同じだった。
家族の者すら、彼女のことを誰も知らなかった。
吾郎は写真を見詰めながら、
『一体、彼女は誰なんだ?……』
と思った瞬間、
キーン!……
頭を締め付けられる痛みに襲われ、その場に
倒れそうになった。
その時だった!……
吾郎の頭の中に写真に写った女性が微笑む姿と
その彼女の名前・茉里が浮かんできた。
『茉里?……』
突然、頭の中に浮かんできた彼女の名前・茉里を
思い出した途端、吾郎の頭を締め付けられる痛みは
スーッと消え去った。




