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キーン!……
吾郎にあの頭痛が襲ってきた。
『またか!……』
頭痛の痛みに負け、吾郎がその場に倒れ込みそうに
なったその時……
「あれ?どうしたの?…… 本屋に行って
来るんじゃなかったの?……」
目の前のトイレからハンカチで手を拭きながら、
夏海が吾郎の前に突然、現れた。
『え?……』
ひょっこりと自分の前に突然、現れた夏海に
吾郎が驚いた顔で夏海のことを見詰めていた
吾郎だったがふと、包帯の女性のことを思い出し、
「か、彼女は?……」
夏海に包帯の女性のことを聞いた。
夏海は今、自分が出てきたトイレの方を見ながら
「もうじき、出てくると思うけど?……」
と答えた。
『良かった!……』
吾郎が安どの表情を浮かべていると
「どうしたの? 私達がいなくなったとでも?……」
夏海は意地悪っぽく、吾郎をからかった。
「ち、違うよ! そろそろ、お腹が空いたから
ご飯でも食べようかと……」
吾郎が慌てて、誤魔化していると夏海が出てきた
トイレから包帯の女性がまるで幽霊のようにぬるりと現れた。
「さあ。飯に行こう!飯に……」
吾郎は夏海らを連れ、レストラン街へと歩き出した。
食事が終えた後、吾郎は夏海らのショッピングに
つき合わされ、一日中、ショッピングモール内を歩き廻った。
ヘトヘトに疲れきり、家に辿り着いた吾郎は
いつの間にか、リビングのソファで眠ってしまった。
夜中に吾郎が目を覚ますと時計は深夜の1時を
少し回ったところだった。
『1時かぁ……』
吾郎がソファに腰掛け直し、
『アイツ【浅葱】は最後に何を言おうとしていたんだ?……
やはり、あの家に住んでいた双子が俺の記憶の謎を
解くカギなのだろうか?……』
と思っていると
キーン!……
再び、吾郎にあの頭痛が襲ってきた。
『ま、またかぁ……』
吾郎が頭を抱え込み、蹲っていると自分以外は
リビングには誰もいないはずなのに吾郎はリビングに
人の気配を感じた。
『だ、だれだ?……』
吾郎が頭を抱え込み、蹲ったまま、辺りを見廻すと
玄関へと通じる廊下にあの滑稽なメイクをした
ピエロが立っていた。
『どうして? お前がここに?……』
突然、目の前に現れたピエロに吾郎がびっくりし、
目の前のピエロを見詰めているとまるで吾郎を
小バカにするように微笑むとナイフを振り翳し、
吾郎に襲い掛かってきた。
『うわぁ!……』
吾郎はびっくりし、ソファに仰け反り、あまりの恐怖に
そのまま、気を失った。
気が付くといつの間にか、夜は明け、朝になっていた。
『俺は死んだのか?……』
状況を確認しようと吾郎が恐る恐る、目を開けると
そこにはいつもと変わらない風景が広がっていた。
だが、キッチンに立っていたのは篤子ではなく、
夏海だった。
しかし、キッチンに立ち、朝食の用意をしている夏海は
何処か、篤子に似ていた。
吾郎が起きたのに気付いた夏海は
「あら? 起きた?…… 風邪は引かなかった?」
吾郎に優しく、話し掛けてきた。
「ああぁ……」
吾郎が頷くと
「そう…… もうじき、朝食ができるから……」
夏海は優しく、吾郎に微笑むと朝食の用意を続けた。




