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吾郎は夏海が包帯の女性と仲良くなったことが
不気味で怖かった。
吾郎が包帯の女性のことをそんな思いで見詰めていると
突然、吾郎の携帯電話が鳴った。
「はい! もしもし……」
吾郎が慌てて、電話に出るとそれは浅葱からの電話だった。
「一体、今まで何処にいたんだ! 色々と大変だったんだぞ!」
吾郎が電話を掛けてきた浅葱に文句を言うと
「す、すみません!…… 色々と調べていたので……」
浅葱は吾郎に謝った。
『色々と調べていた?……』
吾郎が首を傾げていると
「会って話せませんか? 調べたことを
色々と報告をしたいのですが……」
浅葱は吾郎に会えないかを聞いてきた。
『会えないかと言っても……』
目の前にいる包帯の女性を見ながら、吾郎は答えに困った。
だが、浅葱の話したいことが気になった吾郎は
日曜日に近くのショッピングモール内で会うことにした。
しかし、夏海と包帯の女性を二人気にするのは危険だと感じ、
吾郎は
「みんなで近くのショッピングモールへ買い物に
行こう!……」
夏海らを騙し、日曜日に浅葱との待ち合わせ場所の
ショッピングモールにみんなで行くことにした。
日曜日。
喜んで近くのショッピングモールにやって来た
夏海らの後を吾郎は
『アイツ(浅葱)はどこだ?……』
浅葱を捜し、歩いた。
だが、浅葱らしき男の姿は何処にもなかった。
『アイツ(浅葱)、騙したなぁ……』
吾郎が浅葱に騙されたと思い、少しイラつきながら
疲れたように近くのベンチに腰掛けると吾郎の腰掛けた
ベンチのすぐ後ろのベンチに可愛いクマの着ぐるみが座った。
その後、すぐに
「遅れてすみません……」
吾郎の後ろから浅葱の声が聴こえてきた。
『え?……』
吾郎が驚き、後ろを振り返ろうとすると
「振り返らないで! 奴が見ている!」
クマの着ぐるみを着た浅葱は自分の方を振り向こうとする
吾郎のことを止めた。
『やつ?……』
浅葱が言った意味がわからず、吾郎がキョロキョロと
辺りを見ていると
「あなたが言っていたピエロですよ!……」
浅葱は吾郎にそう答えた。
『え?……』
吾郎は浅葱が言ったことに驚き、辺りに眼を凝らした。
「そんなに辺りを見ないでください!……
奴に私のことが気付かれます!……」
クマの着ぐるみの浅葱は小声で吾郎にそう言うと
「ご、ごめんなさい!…… で、調べてきたこととは?……」
吾郎は浅葱に謝ると浅葱に調べていたことの内容を尋ねた。
「つい最近、あなたは自分の履歴書に書かれていた
住所に行って、そこに住んでいた家族のことを知りましたよね?」
浅葱は吾郎が履歴書に書かれていた住所に行ったことを
知っていた。
「なぜ、そのことを?……」
吾郎は浅葱が自分の行動を知っていたことにびっくりした。
吾郎の問いに答えないまま、浅葱は
「あの履歴書に書かれていた住所はあなたの
本当の住所ではないです! あれはあなたの前に現れた
ピエロのモノなのです!」
『どうして? あのピエロの住所が俺の履歴書の住所に
書かれているのだ?……』
吾郎はさっぱり、訳がわからなかった。
「なぜかはわかりませんがあなたの前に現れたピエロは
あなたになりすまそうとしていたのです!……」
『俺になりすます?……』
吾郎はますます、意味がわからなかった。




