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吾郎は確信していた。
今、自分の目の前にいるのは自分の妻と言い、
自分と一緒に暮らしていた篤子ではないと……
では、一体、自分の目の前にいるのは誰なのだ?
吾郎がそんなことを思いながら、目の前の包帯の女性を
見ていると突然、吾郎らがいる病室のドアが開き、
一人の若い刑事に連れられて、夏海が病室内に入ってきた。
『どうして?……』
驚いた顔で吾郎が夏海のことを見詰めていると
「自宅に行ったら、篤子さんが行方不明だと
この刑事さんに聞いて……」
夏海は自分を連れてきた刑事に目をやった。
『そうなんだ……』
吾郎が納得をし、夏海を連れて来た刑事に
目をやろうとすると夏海は続けざまに
「その人ですか?…… 篤子さんは?……」
吾郎に聞いて来た。
「ああぁ…… たぶん……」
驚いた顔で吾郎が頷くと夏海は繁々とベットの上の
包帯の女性を見詰め、
「あ…… 篤子さん?……」
と声を掛け、包帯の女性に近寄ろうとした。
すると、包帯の女性は夏海から逃げるように
ベットの端に寄った。
夏海は戸惑い、動きを止めた。
明らかに夏海に対して、怯えて避けている
包帯の女性の態度に吾郎と宮間は驚いた。
とりあえず、包帯の女性が自分の妻の篤子か
わからなかったが吾郎はしばらくの間、その包帯の女性を
自分の家で預かることにした。
吾郎は自分の家に包帯の女性を連れて帰ってきたが
包帯の女性はまるで他人の家に着たかのように
リビングのソファにちょこんと腰掛けた。
『困ったなぁ……』
吾郎は包帯の女性にどう接して良いのかわからず、困った。
自分で手に終えないと思った吾郎は夏海に助けを求めた。
吾郎の自宅にやって来た夏海はソファにちょこんと腰掛けて、
テレビを観ている包帯の女性を見ながら、少し考えると
「わ、わかりました…… 少しの間、私もここにあの方の面倒を
看ます!……」
と渋々、包帯の女性の面倒を看ることを承諾した。
吾郎はすごく嬉しかったが
「が…… 学校があるんじゃないの?……」
と夏海に学校のことを聞くと再び、少し考えた夏海は
「少しの間、お休みしますわ!……」
と答えた。
「良いのか?……」
驚いた顔で吾郎は夏海に聞き返すと
「相良さん一人だけじゃ、手に負えないでしょ?……
それに相良さんと一緒に居れるし……」
夏海は明るく微笑んだ。
夏海と吾郎の話を聞いていたのか、包帯の女性は
突然、吾郎らの方を見た。
吾郎にはそれが包帯の女性が睨んでいるようで
ゾッとし、恐怖を感じた。
そんな包帯の女性に吾郎が警戒をしているとは裏腹に
初めのうちこそ、包帯の女性は夏海のことを避けていたが
夏海が包帯の女性のことを献身的に世話などをするうちに
夏海は包帯の女性とすっかりと打ち解けて、まるで姉妹のように
仲良くなっていた。




