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「ええぇ…… 私が吾郎ですが……
何でしょうか?……」
吾郎が頷きながら、刑事らにそう言うと刑事の一人が
「今朝、近くの河川敷で若い女の子の死体が
発見されたのですが……」
といったが何を言っているのか、吾郎にはピンと来ず、
「そうですか! それで私に聞きたい事とは?……」
少し苛立ちながら、刑事らにそういうと
「では…… この女の子をご存知ですか?」
刑事の一人は洋服の内ポケットから一枚の写真を取り出し、
吾郎に見せた。
その写真に写っていたのは刺殺死体の彩佳に
そっくりな悠子だった。
驚いている吾郎を見ながら
「この子をご存知なんですね?…… この子の名前は?……」
刑事の一人は吾郎に悠子のことを聞いてきた。
「さあ…… 私も一度しか、会っていませんから……
名前までは……?」
吾郎が首を傾げると刑事の一人はそんな吾郎を見ながら、
顔色を曇らせると
「それはおかしいですね?…… あの子の携帯電話から
あなたの名前が出てきたのですが?……」
と吾郎に言った。
『はぁ?…… 俺の名前?……』
吾郎は意味がわからず、首を傾げた。
刑事らは顔を見合わせると
「ちょっと、(警察)署の方まで同行してくれますか?……」
刑事の一人は吾郎に警察署まで一緒に来るように言った。
『はぁ?……』
まったく意味がわからなかった吾郎だったが
このまま、疑われているのもいけないと思い、
「わ、わかりました…… ちょっと、待ってもらえますか?
用意をしてきますから……」
刑事らにそう言うと吾郎は一旦、奥へと引っ込んだ。
リビングに戻ってきた吾郎を篤子は心配そうに
見詰めていた。
そんな篤子を心配させないように
「ちょっと、彼らと一緒に行って来る……」
と言うと吾郎は用意を済ませ、玄関へと再び戻った。
吾郎が刑事らと共に警察署にやって来て、取調室で
刑事らの取調べを受けていると突然、刑事らの
上司らしき男【宮間】が取り調べ室内に入ってきて、
吾郎に頭を下げ、平謝りをしながら
「すみません!相良さん。 相良さんの疑いは晴れました。
お帰りになって、結構です!……」
と吾郎に言った。
『え?……』
吾郎が訳がわからず、驚いていると吾郎を取調べしていた
刑事は不満そうに
「課長! どういうことですか?」
宮間に喰って掛かった。
宮間は怖い顔をし、自分に喰って掛かってきた刑事を
自分の傍に引き寄せ、小声で
「しょうがないだろう…… あの子からこの者の指紋などが
一切、出ない上に証人まで現れたのだから……」
と言った。
『証人?……』
そんな宮間の声が漏れて聞こえた吾郎は首を傾げていると
取調室のドアが突然、開き、
「お迎えに上がりましたよ!……」
吾郎の前に浅葱が現れた。




