いっしょに暮らそっ!(承)
翼さんとの同棲生活も早3日、大学にも無事入学して、特に火事が起きる等の問題は無く、とても平和に過ごしていた。
ただ、小さな問題は良くある。
そりゃ異性と同棲してるんだから意識せざるをえない。
「翼さんが入った風呂……」
どうも自分が変態に見えてきた。これはまずい。
「だぁ! 考えるな俺!」
思春期の学生か俺は!
考えれば考える程、多分俺は顔が赤くなっていくだろう。
しかし、彼女でもない人との同棲なんてやはりおかしい。世の中の秩序が乱れてしまう。
いや、俺は翼さんに一目惚れしたけど、翼さんはクソ兄貴が好きなわけで……ってあれ?
なんか俺があたかもバカ兄貴より劣ってるように感じるな。おかしい。
「よし、俺は翼さんに惚れられるような人間になろう! 翼さんからゴミ兄貴に向けられた熱い眼差しを俺の方に向かせてやる!」
風呂の中で立ち上がり、俺はそう決意した。
次の日、まだあまり慣れていない大学へ。
ハッキリ言ってつまらない授業を受けた。なんなんだあの授業は。退屈すぎる。
そして授業終了後、目的の人物を探し練り歩く。
見つけた。
「翼さーん」
20メートルほど離れた位置に1人でいる翼さんを発見した俺は、大きな声で呼んだ。
それに気付いた翼さんは手を振り返してきた。
そして俺は翼さんのもとへと駆け寄っていった。
「こんにちは翼さん」
「やぁ虎次君」
しっかりと男物の服を着込んでる翼さんはやはり中性的でジャニーズ系に見える。かっこいい、というのだろうか。
ここで作戦実行!
奢ることで男らしさと金銭的余裕があることをアピールしてみる。
上手くいけば好感度アップ!
「もうお昼ですけどいっしょにご飯でも食べません? 奢りますよ」
「え、ホント? わーありがとう。 ちょっとお金なくて困ってたんだよねー」
よし、作戦成功!
ついでに翼さんと話す機会ゲット!
翼さんといっしょに大学内にあるカフェテリアへ。
お昼時ということでなかなか人がいる。
「じゃあ何食べます?」
「カレー!」
「男っぽいですね」
「……まぁ『男』だから」
……しまった。
大学内では男と言う風にしなければならないのか。不注意だった。
わかりましたよ翼さん。
「カレーですね、わかりました。 じゃあ買ってきますんで適当に座っててください」
翼さんに座っとくように言い、俺はカレーと俺の分の昼飯を買いに行った。
「よー弟、俺にも奢ってくれないかね?」
どこからともなくクソ兄貴が現れた。
「やなこった」
「翼には奢ってんじゃんかよー。 実兄の俺にも奢れよ」
「翼さんには居候させていただいてるんだから当然だろ」
「翼紹介したの俺じゃん」
「放火したのお前じゃん!」
「放火とはまた人聞きの悪いことを」
ああ、兄貴が邪魔だ。
このままだと翼さんと色々話そうと思ってたのに兄貴の介入で断念しなければならないではないか。
それはなんとしても阻止せねば。
「とにかく兄貴、邪魔だからどっかいってろ」
「あぁ、俺は翼に用があるんだよ」
ジーザス!
なんでこんなときに限って兄貴が暇じゃないんだ!
仕方が無く兄貴と一緒に翼さんの座ってる場所へ行く。
「よー翼」
「あ、竜一」
なんか翼さんの顔が凄く笑ってるように見える。畜生、何故アホ兄貴なんかに。
「ほれ、この前借りてたお前のレポート返すぜ」
「あ、ありがとう」
……兄貴も大学生らしいことしてたんだなぁ。奇跡だ。
「翼さん、カレーどうぞ」
「あ、ありがとう」
そして俺も自分のために買ったそばを食べる。うん、美味。
「翼、うちの出来の悪い弟はお前に迷惑かけてないか?」
出来悪いのはお前だろカス兄貴。
「ううん、全然。むしろ家事とか色々手伝ってくれて助かってる感じ」
「それを聞いて安心だ」
兄貴と話してる時の翼さんの顔はどこかやはり恋する乙女のようで、輝いていた。
あぁ、翼さんは本気で兄貴が好きなんだなぁ。
俺のことを好きになってくれることは……ないのだろうか。
そんなことを考えてしまった。
…正直な話あまり上手く出来た気がしませんが、きっと後の方が何とかしてくれます。
起承転結を個別で書く企画の、この作品は『承』にあたります。後は『転』と『結』におまかせです。
順番は、
(起)影之兎チャモさん→
(承)神崎颯→
(転)月野真昼さん→
(結)春野天使さん
です。
続きは月野さんのところで!