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空白の旅  作者: 竹中 昴
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奴隷商の国

初めましての方は初めまして。また会ったよって方はおはこんばんにちは。

どうも、この作品の作者の竹中昴です。気軽にスバルちゃんでも外道でも好きに呼んでね!


読む前に一応……。これから読む作品ですが「この作品、何なんだよ?」思うかもしれません。

二番・三番煎じ感が強いですからね。この作品は私のやりたいことを好き放題やる作品です。

長い前置きはさて置き、『空白の旅』これより開幕です。

「君は何もかも諦めたことはあるかい?」


 目の前に立つ人物がそう問うてくる。目の前に突き出された自分を殺す為だけに向けられるその剣の切っ先をものともせずに。ただ、ただその容姿は美しいと形容する以外に思い浮かばなかった。


「いや、その質問には答えなくてもいいよ。君たちだって多かれ少なかれ絶望を味わうことが多い。学業・仕事でいい成績をとれなかった。食物なり提出なりの期日を切らしてしまって取り返しのつかない事態に陥った。特に大きいのは大切な人を失うとかね。折角だ。ここに来たのなら私の話を聞いてもらおうじゃない。そう、『魔王』の物語を………」


 そう言うと一呼吸おいて其は話し始める。魔族の特徴である角も尻尾も無い魔王は今まさに走馬灯のように多くの思い出を振り返っているようだった。


「これから語るは魔王の物語。奇妙で愚かで哀れで残酷。それでいて素晴らしく美しい人類の物語。作業しながらでもいい。寝っ転がりながらでもいい。飽きずに聞いてもらえると嬉しい」

 


 

 

 瞳を閉じれば何もかも諦めたような目をしていたその男のことを今でも思い出す。現状を変えられる力を持ちえながらも彼は何度も何度も何度も失敗し続け、次第に心を壊してしまった。ただ、その瞳の奥底には微かな希望への渇望が感じられた。そう、その希望こそ———————





 それはその男が私に出会う前の日のこと。その男はボロボロになって今にも朽ち果ててしまいそうな異世界の学生服を身に纏った少年の姿をした、かつて『英雄』とも『厄災』とも呼ばれた人物がこの国へと入国した。



「コチラ奴隷商の国です。お間違いありませんか?」


 入国審査官がそう問うてきた。真面目な仕事人という印象以外は特に抱かないそんな人を尻目に荷物の中からパスポートを取り出す。元居た場所では赤や青の手帳だったが今、俺が持っているのは木目が見えるただのプレートでしかない。


「あぁ。俺の目的の国だ」


 間違える訳がない。だが、彼も仕事上必要不可欠な行為であるから仕方がない。


「左様ですか。では、聞くまでもありませんが入国目的と滞在日数をお聞かせください」

「目的は奴隷を買う、そして日数は2日だ」


 端的に伝え、もはや意味をなさなくなっているパスポートを提示して入国できるのを待つ。


「認証できました。この国は貴方の入国を心より歓迎致します」

「ありがとう」


 ハンコを押されたパスポートを受け取ってそう感謝を告げる。重々しい扉が開かれると石造りの櫓の門を潜って入国する。見渡す限りの奴隷と奴隷専門店、そしてわずかに存在する生活必需品の店と宿屋。だが、どれも奴隷という高利益を得られるもののおかげでかなり豪華な外装になっている。

 豪華絢爛なこの町をゆっくり見て回りたいところだが、この長旅の間、ずっと背負っていた荷物によって肩を痛めているので一刻も早く荷物を預け置きたかった。そして、そのために街の中央にある宿屋に向かう。きらびやかな装飾に溢れたこの街の風景の中で一際異彩を放つみすぼらしい………いや、慎ましい宿屋が気になって知らないうちに歩を進めていた。


「いらっしゃい」


 宿屋のカウンターには見るからに限界に近いのに精神だけでなんとかやっていそうなヨボヨボの老婆が腰掛けていた。愛想はあまり良く無く、俺を見ると舌打ちが聞こえそうなくらいに露骨に嫌そうな顔をしていた。まるで生活のために仕方が無くやっていると言わんばかりの態度だ。


「荷物を預かるよ」

「あぁ。頼む」


 俺は持っていた荷物を預ける。………と言っても大した荷物では無い。四次元アタッシュケース。よくポケットの方が便利と思われるが持ち運びが不便なだけで入れやすさは月とスッポンレベルに違うだろう。


「あんちゃん、若いのに奴隷なんて高いの求めに来たのかい?」


 そんなことを老婆は問うてきた。よく似たような質問をされてきたから対応はよく覚えている。


「若くない。こんな身なりだが既に一世紀は生きている」

「一世紀……その見た目、その長ラン……アンタまさか、『空白』じゃないだろうね!?」


 老婆は近くにあったペーパーナイフの切っ先を俺に向けて警戒する。俺は「またか」と思いながら敵対の意思がないことを証明するために両手を挙げる。

 

「なんだ、知っていたのか? 悪いが仇討ちなら勘弁してくれ、今は疲れてるんだ。それに俺はこの通り死ねないんでね」


 魔法で出現させた剣で自分の心臓を突き刺す。熟れた林檎のように紅い鮮血が吹き出る。だがその剣を抜いた瞬間に吹き出した血が逆再生のように元に戻っていく。


「アンタは親戚の敵だが、今は客だ。料金さえ払ってくれればそれ相応のサービスはするよ」

「ありがたい。ならこれで頼む。2泊3日だ」

「金貨5枚……桁が違うよ。銀貨5枚で十分だ」

「いや、持っておいてくれ。敵というなら尚更だ。それだけの罪が俺にあるのだから」


 老婆はしばらく思考していたがのちに溜息を大きく吐いて金貨に手を伸ばす。


「そうかい。アンタがそう言うなら受け取るよ。だが、一つ忠告だ。アンタのしでかしたことはあの国では英雄ともてはやされているが、コッチ側からすれば単なる一方的な殺戮だ。それはコッチ側の能力不足というものもあるがそれを償うなんて考えるな。殺したのを生きて償ったり金で払ったり全員の心の傷を埋めるなんて驕りは今すぐ捨てろ。そんな驕りなんざ誰も幸せにしやしない。一度失った生命は二度と戻ることはない。それが人間の不可逆性なんだからな。年老いたババアからの忠告だ。……いや、アンタのほうが長生きだったな」


 この宿主は俺のことを思って言ってくれたのだろう。


「ありがとう」


 俺はこういうとき、この言葉以外どう言えばいいのかわからなかった。


「ふん、せいぜい長生きして闘いから引くんだね」





 この国に来てからよく「奴隷を欲しがる人がこんなに若いなんて」と言われる。そんなにおかしいのかと思いながらその店の敷居をまたぐ。


「いらっしゃいませ。ここはこの国最大の奴隷専門店です。どうぞごゆるりとご覧ください」


 いかにも胡散臭いアラフィフが対応をしにきた。黒のシルクハットにモノクル、そして太った体型に合わせたスーツと金の刻印が所々された杖に金の懐中時計とかなりの裕福さが見えるあたり大層儲けているらしい。


「そうさせてもらおうか」

「では、こちらにおかけください。ここは歩き回るには少々広すぎるのでこの乗り物に乗っていただいたほうが早いのです」


 見るだけで分かるレベルのかなり高級そうな椅子がトロッコのような形のハンドルとアクセル、ブレーキがついたかなり簡素だが十分な乗り物に腰掛ける。座り心地は正直、悪くない。誰かがこのような椅子を雲のようだと表現したがまさにこの椅子はそれに該当するのだろう。かなりいい。


「では発進致します」


 アラフィフのその声とともにトロッコが発進する。この世界の乗り物は俺の元居た世界と比べるとほぼ例外なく乗り心地が最悪に近いがこのトロッコはかなり揺れが少ない。

 

「最初は魔物か」

「えぇ、ドラゴンの卵からペット用スライムまで幅広い種類がございます」


 この国以外は恐らく手に入らないような不死鳥の卵や生きたバジリスクにどこかで見たような七色に光りながら首を回すオウムなど珍しい魔物や動物が居たがここに気に入るものはなかった。


「どうやらお気に召すものはこのコーナーにはなかったようですね。貴方様は聞くところによれば旅をなさっているそうですが、どうやら荷物持ちになる魔物を所望なさらないとなれば旅の話し相手及び、同行人をお探しでしょうか?」

「………」

「貴方様の望みは当たらずとも遠からずと言ったところですかね。では、人型の奴隷コーナーへと参りましょうか」


 奴隷商はアクセルをかけて他のコーナーを次々と飛ばしていく。


「到着いたしました。こちらは人間奴隷のコーナーです」


 着くと高待遇を望んで助けてと叫ぶ者もいれば、色仕掛けをしてくるような者もいた。だが、一人だけ目に止まる者がいた。


「お前、名前は?」

「…………」


 その奴隷は生きながらにして死んでいると表現するのが正しいヤツだった。手入れをされていないためにボサボサの金髪。どこを見ているのかわからない焦点が合わない紺碧の瞳、痩せこけた身体。俺と同じくこの世の全てに絶望したような生きる気力を無くしたような人物に何故か興味を抱いた。


「すみません、こちらの奴隷は名前無しです。彼女自身が何も話さないので奴隷となる前の名前があったのかは不明ですが現在は奴隷番号25847で呼ばれています」


 ほら、タグあるでしょ? と言わんばかりに奴隷商はその奴隷の首元を指差す。


「いくらだ?」

「金貨5枚です。ですがお客様、ご契約の前に行っている慣例ですので申し上げますがこちらの奴隷は顔はかなり美形ですが無口でありながら身体は貧相です。長旅にはあまり向いていないでしょう。それでもよろしいでしょうか?」

「あぁ。これで足りるか?」


 金貨500枚の入った麻袋を手渡す。


「金貨516枚……桁が2つ多いですよ?」


 麻袋を開けてすらないのに枚数把握できるのか……。


「金貨5枚、頂戴致しました」


 5枚だけ抜き取って麻袋を手渡してくる。


「いいのか?」

「? どういう意味でしょうか?」


 キョトンとした顔をしてくる奴隷商に俺はますます疑問に思う。


「桁が少ないならともかく、多いなら搾り取ればいいじゃあないのか?」

「いえいえ、私達はグレーな商売をしているのではなくちゃんとした商売を行っているのです。適正な価格で売らなきゃ私達の面子が潰れてしまいます」


 それに……と言いかけて奴隷商は言わなかった。


「そうか。そっちがいいのならそれでいい。それと余った金貨をソイツに渡してくれ」

「貴方様はもしや私達の想像する以上の変人かもしれませんね。気に入りました。何かサポートさせてください。お代は貴方様の取る選択肢の行く末を見せてください」


 なんだコイツ? と思いながら支援はありがたいので承諾する。


「おい」

「………」


 金貨の入った袋を奴隷が持つようにさせると魔法で枷を外す。


「……?」

「お前には選択肢がある。その金を持って一人で生きていくか? 俺と一緒に旅をするか? 選択肢はその二つだ。今ここで選べ」


 奴隷商は後ろでニヤニヤ笑って面白がっている一方で奴隷は何も話さないし反応しない。


「沈黙は無しだ。今、ここで決めろ」


 数十分待ったが結局変わりなかった。奴隷商も待ちくたびれたようで他の奴隷の世話に行ってしまった。そして俺も待ち疲れた。


「そうか。俺はもう行く。じゃあな」


 そう踵を返すと長ランの裾がわずかにその場に留まった。

「ハッキリしないヤツだな」


 奴隷は小さな手で俺の長ランを掴んでいた。


「おい。奴隷商」

「お客様、反応がありましたか?」


 待ってましたと言わんばかりに俺のもとに駆け寄ってきた。


「あぁ。コイツと旅を続ける」

「やはりとは思いましたがそうでしたか。では、こちら支援物資です」

「助かr……何だコレは?」


 大袋に入っていたのは童話の本ばかりだった。


「この奴隷が話さないのは心を開いていないから。もしくは語彙力の欠如といったところだと考え、心を開くために彼女だけの時間を作るのに最適なツール及び語彙力を鍛える楽しい辞書にと考えこちらを用意させていただきました」


 不要な気がするがそこまで言われたら貰わない訳にいかない。


「……なるほど。ありがたく頂戴する」

「えぇ。彼女の心が開いたあとには大切なモノの喪失などのショッキングなことが起こらないように気をつけてください」

「あぁ。心得た」





 そして俺と奴隷は国を出た。国境近くに移動手段を置いてきたのを思い出して向かう。


「何も話さないのか」

「………」

「まぁ、いい。俺は気長に待つからよ」


 移動手段というのはバイクだ。近くに来ると奴隷が不思議そうに見つめていた。


「見たことないようだな」


 そう言い、奴隷にヘルメットを被せて同時に俺もヘルメットを被りバイクに跨る。


「どうした? 早く乗れ」


 奴隷は怖がるかのように首を横に振る。


「ほら、次の国まで時間無いんだから……」


 俺は奴隷を引き寄せて後ろに乗せた。


「しっかり捕まってろよ? でないと死ぬぞ?」


 エンジンをかけて助走をつけた後にフルスロットルで次の国へと向かった。その途中、すぐ後ろから奴隷の悲鳴が聞こえてきた気がする。

……何故、空白が旅立つ前から書かなかったのか疑問に思う方も居るでしょう。まぁ、それはおいおい説明しますね~。

私の作品で割と出ているふざけた登場人物紹介は第3章くらいからですかね。この時点で流石に登場人物紹介する必要はミステリーでもあるまいし、やりませんよ。

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