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5話

 晴開せいかい博叉バクシャからとどめを差されようとした時、少女の声がした。


 彼女は肌の胸元や四肢の露出が際どく、丈が膝上までしかない黄色い服を着ていた。


 髪は赤いショートヘアを生やしており、上衣と同じ色のつばの無い帽子を被っていた。


 彼女は気だるそうな目つきで、晴開と博叉とを交互に目に映す。


「あなた、夜叉五大将やしゃごたいしょうの一人ね。じゃあ、ここで死んでもらうしかないわね」

「誰だお前?邪魔するんじゃね……ゴフッ……!!」


 敵がそう言った瞬間、彼は何かに圧し潰されたかのように勢いよく崖に嵌り込んだ。


 その身体は灼熱の溶岩にまみれ、そして焼き尽くしていった。


 その原因は少女が瞬時に博叉に迫り、握っている溶岩にまとわれた槌を彼にぶつけたのだった。


 そして、少女は晴開の目の前に立つと、彼は自分が思っていた疑問をぶつける。


「た……助かった……なぜ、俺を?」

「見りゃわかるでしょ?さっき言った通りなんだけど。助けてやったんなら、礼ぐらい言いなさいよ」

「あ……ありがとう……」

「何よ?そんな目で私を見ないでくれる?」


 ぞんざいな態度を取る少女を相手に、晴開は呆気にとられたかのような目を向けていた。対する彼女は、終始ジト目で晴開を見返している。


「あなた、”白龍の龍召士りゅうしょうし”でしょ?何でここにいるの?」

「だって今、幻世からこの龍鳳界りゅうほうかいに転移したばかりだよ、俺は!それで、さっきお前が倒した奴に襲われてて……ってお前、なんで俺が龍召士だって分かるのかよ!?」

「そのくらい分かるわよ。それに、あなたを助けに来たわけじゃないから。さっきあなたを襲ってきたのは、夜叉五大将のうちの一人よ」


 少女はけだるそうに事実をズバズバと言い当てたので、晴開はせっかく助けてもらったのに彼女のことを気味が悪く思わざるを得なかった。


「そんなことより、名前はなんていうの?私は岩杏琳がんきょうりんよ」

「俺は輪晴開りんせいかい……あれっ?俺、そんな名前だったか?」


 晴開は自分の名前が”輪崎晴開わざきはるあき”から”輪晴開りんせいかい”に自動的に変わっていることに異変を感じた。


 彼の名乗り方に対して、杏琳は訝しむ。


「いや……待てよ、確か幻世からこの龍鳳界に転移する前、仙空界せんくうかい玉帝ぎょくていから……」

「もういいでしょ!!あなたの名は”りん晴開せいかい”でいいんだよね?分かったから」

「お前は杏琳だったよな?この土砂崩れはなぜ起きたのか?」

「この土砂崩れは冬坎国とうかんこくの王太子、泉孝然せんこうぜんとその随従を亡き者とするためにことを起こしたものよ」


 すると、杏琳の持っていた溶岩にまみれた槌が消えた。


 そして彼女の右手人差し指が光り出したのでよく見ると、翡翠の指輪がはめられていた。


 そして彼女は、目の前の晴開に興味津々ににやけた目を向けて近寄ってきた。


 それに気づいた晴開は、異性が自ずから自分に近づいてきた来たことに、身体を引きつかせてしまった。


「な……なんだよ!?お前……」

「あなた、この国には自分が必要だということを分かっているでしょ?その”玉帝”のいう”白龍の龍召士”として」

「こっち来んな!!そ、それよりさっきの敵もお前も何でそれが分かるんだよ!?」

「まだそんなこと言うの?自分の立場が分からないなんて。うふふ……」


 そう言って晴開に迫る杏琳は、持ち前の巨乳を覆う懐から、手のひらサイズの漆塗りの容器を取り出す。


 晴開は彼女の豊潤な胸元に釘付けになってしまう。そして彼女はその容器のふたを開ける。


 それには赤い膏薬のようなものが入っていた。杏琳はそれを人差し指で掬って晴開に近寄ってくる。


 彼は思わず後ずさりしてしまうが、彼女はその距離を縮めて来る。


「ちょっと、動かないで!そのままじゃ、爛れが全身に回るわよ。じっとして」

「うわッ!!何すんだよ!?その赤いのは薬なのか?」


 急に晴開に迫ってきた杏琳は、彼の服の破れから覗く爛れた皮膚にその膏薬を塗ろうとそれに触れた。


 彼は杏琳が自分の身体に触れるのを防ごうとのけぞったが間に合わなかった。しかしそれによって、膏薬が塗布された皮膚の爛れが綺麗に消えていく。


「ひぇッ!!やめ……何だ、これは?何故こんなに治るのか?」

「これは相剋膏そうこくこうよ。五行の五徳のうちの火徳のね。さっきの敵は金徳の流気具の攻撃をあなたは受けたのよ。ちなみに、私のとっづいは火徳の流気具になるの」

「りゅうきぐ?かとく?きんとく?何だそれは?」

「あなた、五行の法則について知ってるの?」


 杏琳が言っていることに対して最初は理解出来ずにいた晴開だったが、彼女が口にした”五行”という言葉を聞いて、自分が今まで読んでいた本――――この龍鳳界のような中華風の異世界を舞台としたライト文芸の中で聞いたことのある用語だった。


「ああ!そうか!!敵が言ってたな。自分の武器を”金徳の流気具”だとよ。それだと”火尅金ひはきんをこくす”でそれは火徳の膏薬だから、相手の攻撃の効果を打ち消したんだろ?」

「それくらいは知ってるのね。この国の流気の源となる“太白たいはくこう”は金徳になるのよ。さっきの相手もその流気を使っていたのよ」

「ああ!!だから、奴の攻撃の威力がハンパなかったのか!!」


 五行の性質を知っていた晴開に杏琳は感心した。

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