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4話

 せいかいは、仙空界せんくうかい玉帝ぎょくていによって龍鳳りゅうほうかいに転移した。


 この時点で、覚龍杖かくりゅうじょう以外の彼の持参物は全て跡形なく消え、その現象に戸惑いが隠せなかった。


 日も沈みかけていて薄暗いなか、周囲を見回すと、思わず虫唾が走るほど凄惨な光景だった。


「な……何なんだ!?これは!?」


 晴開の目に入ったのは、一面のおびただしい数の屍体が差し込む夕日映されていた。急な崖に挟まれた谷底で土砂崩れが発生していたのか、何百人もの屍が生き埋めになっている。


 それらをよく見ると、身に付けていているのが西洋風でも和風でもなく、古代中国風の鎧甲冑や服装をしていた。


 自分がこの世界に転移する前にいた仙空界の霊霄宝殿れいしょうほうでんの建築様式から見ても、明らかにそのようだ。


 被害に遭った者は、無惨にも鎧や甲冑を身に着けていても意味がなかったかのように頭蓋が割れ、皮膚は裂かれその臓腑が身体から飛び出ていた。


 思わず晴開はそれがあったことを現場そばから見ていた。あまりもおぞましいものを見たあまり吐き気を催してしまった。


「うっ……ここは、秋兌国しゅうたいこくなのか……?こいつらは、一体……」

「教えてやろう。ここは秋兌国であっているぞ。こいつらは、北隣の冬坎国とうかんこくの王太子、泉孝然せんこうぜんとその随従だ。どうやら孝然本人の姿は無いようだが」

「――――誰だ、お前は!!」


 晴開がいることを知っているかのような口調で、何者かに声をかけられた。彼は声の主の方を見ると、崖の上に奇怪な者がいた。


 それはここから見ても身長が約1丈(2.3m)ほどと自分より一回り大きい。


 上半身裸のどす黒い肌に白い披帛を纏っており、顔には憤怒の形相で、白い眼が剥き出しになっていた。


 彼は白銀でできた鎖分銅を手にしてぶん回している。


 急に現れた異形の姿をした者に、晴開は思わず殺気を感じた。


「こいつらを生き埋めにしたのは、お前か!?」

「他に誰がいるという?それに貴様は変わった服装をしているな。、手に持っているそれを見れば――――もしやりゅうしょうなのか?」

「お前は何故、それを知っている!?」

「無論。貴様の姿を見りゃ、でげんから転移したということもな」


 自分の素性を言い当てられたことに虚を突かれた晴開だったが、それでも相手が攻撃してくることには間違いないと判断した。


 刹那、敵が崖上から相手が跳びかかってきた。


 晴開は手にしていた覚龍杖かくりゅうじょうでは敵わないと思ったのか、埋まりかけていた落ちていた直剣を拾う。


龍鳳界ここに来て早々、俺に襲いかかって来るんじゃねェ!!」

「そんな貧相な武器で我にかかってくるとは、笑止千万ッ!!」

「さてはおめぇ、”夜叉やしゃ大将たいしょう”の一人だな!!」

「御名答!我が名は博叉バクシャ。”白龍の龍召士”、お前を消してやろうか!!」


 自らを博叉と名乗った敵が晴開との間合いを上方から詰めていった。博叉は地の利を生かして高いところからこっちに向かって鎖分銅を投げてくる。


 晴開は直剣を横に構え防御態勢を取ったが、それもむなしく刃に巻きつかれてしまった。


「しまった!!」

「フハハハ!!貴様の動きを封じ込めたぞ!!だがこれだけではない。このさんざくの恐ろしさを思い知らせてやる!!」


 敵が告げたことに一瞬理解に苦しんだ晴開だったが、その答えもすぐ分かった。何と、自分の得物に巻き付いた相手のそれから染み出したどす黒い液体によって、直剣が錆びていったのだった。


「何!?どういう事だ!?」

「莫迦め!!この腐撒索は金徳のりゅうで、それその物に酸が染みついており、触れた物は全て腐らせることが出来る。もう、その剣は使えない」

「くそッ!じゃあ、他のを使うしか……」


これにより、使えなくなった直剣は晴開は捨てるしかなかった。それでも不幸中の幸いなのか、他にも土砂崩れに遭った兵の武器はそこら中にある。


 彼はその中から長柄の大刀を掴んで地中から引き上げた。それは晴開が思った以上に重く、持ち上げて横に構えるのに苦労した。


「ムダな抵抗をしても、貴様の命はいくつあっても足りねェんだよ!!」

「うわ!!おい、嘘だろ……!?」


 またしても、握っていた大刀の柄に相手の攻撃が掠っただけでも朽ちて折れてしまった。


 その後も晴開は辺りが日が暮れて薄暗い中、博叉が立て続けに仕掛けて来る攻撃を受けてダメになった武器を捨てては拾うを繰り返した。


 やがてまだ使える武器が少なくなり、晴開の体力も膝を着きそうになるほど限界を迎えている。


 しかも相手の攻撃を身体に受ければ受けるほど、その得物に付いた、酸のような液体が飛散って、晴開のにひっかけられると服が破け、皮膚が爛れていく。


 そして残っている武器を晴開は全て使い果たしてしまい、なす術がなくなってしまう。


 だからと言って、玉帝から授かった覚龍杖を使ってそれも同じようにするわけにはいかなかった。しかし敵は、腐撒索の投擲をやめるはずが無かった。


「これで、貴様の宿命は尽きたな!!喰らえ!!」

「待ちなさいッッ!!!」

「何者だ!!」


 敵が無防備になった晴開の身体めがけて武器を投げつけようとしたその時、どこからか少女の声が聞こえた。

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