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3話

 龍鳳界りゅうほうかいへと行かねばならない理由を玉帝ぎょくていが説明し続けているなか、晴開はるあきは”異世界転移”されることに心が躍った。


「うはっ!それって、”異世界転移”じゃねぇか!!まさか、この俺が……」

「まだ、説明は終わっておらぬ。うぬには“白龍の龍召士りゅうしょうし“として秋兌国しゅうたいこくに転移するのだ。そして、その国だけでなく龍鳳界を救う為に白龍祠はくりゅうしへ行ってその封印を解いて召喚せねばならぬ。特にその国は、夜叉やしゃ大将たいしょうと呼ばれる天魔てんまの一団によって苦しめられておる」


 更に玉帝が説明をし続けるが、晴開は“異世界転移“することに対して、喜びとも不安ともとれぬような複雑な気分となってしまう。


 何故なら、昨夜失恋してメンタルが落ち込んでいる中でそのような目にあわされるからだ。


 それに晴開は文芸部に所属していて読書が趣味であり、ライトノベルを一部含む様々な書籍を読んでいた。


 しかし現にそれらの本は――――そこまでは読まなくはないとはいえ、”異世界転移”という展開が多いことを知っていた。


「マジで!俺が、その“龍鳳界”にとかいう異世界に今行くの!?ちょ……ちょっと待て、いきなりそんなこと言われてもな……」

「落ち着かんか!!これはうぬにしか出来んのだぞ。いち早く夜叉五大将を倒し、秋兌国に平穏を取り戻すのだ。そして余の後ろの壁画にある通り、他の五龍王の龍召士があと四人おるのだが、そのうちあと一人中央に配しているおうりゅうのそれが見つかっておらぬのだ」


 晴開が心の準備が出来ない中、玉帝は彼に目もくれず龍鳳界で起きている現実を語り続ける。


「五龍王の龍召士のうち、そうりゅうの龍召士は1年1ヶ月前に、こくりゅうこうりゅうの龍召士は半月前に二人一緒に龍鳳界に転移させたぞ。これまで6,458年間捜し続けてきたが、五人のうち四人もここ一年弱で見つかるとは……」

「もうこの時点までで三人も転移したんなら、俺までそうする必要あるか!?」

「いや、今玉帝陛下が何度も申した通り、貴方しか”白龍の龍召士”はいない。貴方がいた世界――――つまり”げん”は龍鳳界の40倍の速さで過ぎるのだ」


それでもかと、玉龍ぎょくりゅうも加わって、苛立ちを含んだ口調で説明した。晴開は元の世界の名を”ゲンセ”だと彼が言っていたのを聞いて、同じ読みの”現世”だと勝手に思い込んだ。


 それにそこから転移された者が既に自分も含めて合計四人もいることに驚愕した。

 そのあまり口を開けたままの晴開に呆れていた玉帝は、おもむろに何かをゆったりとした錦糸で龍が刺繍された袍の袖から取り出した。


「そういうことだ。これを……覚龍杖かくりゅうじょうをうぬに渡さねばならぬ。受け取るがよい」

「おぅわッ!!何だこれ……?」


 晴開に向かって投げられたそれは約二尺(48cm)の鋼鉄の杖で、それに金色の龍の装飾が螺旋状に巻きついていた。


 彼はそれを自分の手でつかんで持ち上げ怪しみながら見ていると、その先端が龍の頭があり、金剛石ダイヤモンドの塊を咥えていた。


 やがて普通に目にいれても輝かしいそれは、更にまばゆく煌めかせていった。それを見た玉帝は、不審そうな顔をしている晴開に向かって声をかける。


「やはりな。うぬは龍召士だから覚龍珠かくりゅうじゅが反応しておる。これで龍鳳界に転移することになるが、名を何と申す?」

「名前は輪崎晴開だけど……って、もうここから跳ばされるわけ!?」

「そうか。向こうでは”輪晴開りんせいかい”として転移してもらうぞ。心してかかれ」

「なんか名前、無理やり変えらるの!?しかも、”リンセイカイ”って中国人みたいなんだけど!?やっぱ、ここに来た時点で気づいたけど、俺が考えていた異世界じゃないってことなのか!?」


 晴開は玉帝から霊霄宝殿の御殿の中に自分が召喚された時から薄々感づいていていたが、転移先である”龍鳳界”が典型的な中世ヨーロッパ風の異世界ではなく古代中国風のそれだとに勘付いた。


 自分の思惑が外れ、彼はなおさら不安になってくる。


「ま、ままま……待てって!?まだ、心の準備が出来てない……ううぉあッ!!眩しい……」

「では輪晴開よ、白龍を召喚出来るよう健闘を祈る。心してかかれ……」


 やがて晴開の身体を覆い隠すように、金剛石の覚龍珠が放つ光に包まれ姿を消していく。


 その時、今まで苛立っていた彼は、この時気持ちが和らいでいくのを感じていく。


 ――――そう、自分がいるべき場所へと帰るかのように。


 しかし晴開には、龍鳳界に転移して早々に受難が待ち受けているのだった。

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