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下町の魔法屋『霧の魔女堂』  作者: あどん


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ミーアと幻獣と黄金の実(前)

今日もいい日です。お日様がぽかぽかで森もキラキラしているの。今日は森に”さいしゅー”をしに来てます。

アリシアお姉ちゃんに頼まれたのです。


「ミーア、お使いをお願いしたいの。いつもの森で『黄金の実』を採ってきて欲しいのよ」

「はいっ!ミーアが採ってきます!お任せあれ~」

「そんな言葉どこで覚えたんじゃ……」


クロちゃんのツッコミなんて気にしないの!ミーアはかしこいお使いができるのだから!アリシアお姉ちゃんが”さいしゅー”する時に何度も行ったことがあって森の中は知ってるの。大きい岩から川沿いにまっすぐ行けばいいの!


「やっぱりアルについて行ってもらおうかしら……」

「大丈夫!ミーアは一人でできるもん!」


アリシアお姉ちゃんは「本当に……?大丈夫かな……」と心配そうな顔をしてたけど、平気平気!だって森は怖くないもん。お友達がたくさんいるし。


お弁当と水筒。『黄金の実』を入れる袋。小さなナイフに念のための魔法薬。この魔法薬は私が作ったの。アリシアお姉ちゃんからも”おすみつき”を貰ったから完璧なの!準備万端です!


「行ってきます!」


玄関から飛び出したミーアはまず北門を目指しました。街外れの丘を越えるとそこは広大な原っぱ。風がさわさわと草を揺らしています。そこで深呼吸!


「はーっ。いいにおい!」


ここから森までは歩いてすぐ!子供の足でも平気なの。だって毎回お出かけしてるから。


(む?アリシアよ。どこに行くつもりじゃ?)

(ちょっとそこまでよ)

(奇遇じゃのぉ吾輩もちょっとそこまでじゃ)



ーーー



森の入り口につきました。高い木々がお迎えしてくれるけど怖くない。だってお友達がいっぱいいるもの。でもアリシアお姉ちゃんは「道草は控えめにね」と言っていました。そうそう、”さいしゅー”だもの。お仕事だもの。

いつもの場所に到着。そこは大きな岩が地面に3つ並んだ場所。その向こうに川が流れていて水面がキラキラしています。


「よしっ。さっそく探すぞ~」


さっそく『黄金の実』を探すの!あれはいろんなお薬を作るのに必要なのだ。大きな木の根元や低木の茂みを覗いて回りました。でもなかなか見つかりません。困ったな。いつもはもっとたくさんあるのになあ……。


(手伝った方が良いかのぉ)

(心配性ね。大丈夫よ見守りましょう)

(こっそり後を付けきて……心配性はお互い様じゃろう)


しばらくすると太陽が真上に登り始めていました。もうお昼かな?


ん!お昼にしよう!いい仕事をするにはお腹が空いていてはいけないってアイリスお姉ちゃんもいつも言ってるし。せっかくお弁当を作ってもらったんだから食べなきゃね!お弁当箱を開けるとサンドイッチとリンゴと卵焼き!最高!


「いただきまーす!」


おいしい!サンドイッチはチキンときゅうりが挟んであってパンもふわふわ!卵焼きは少し甘め。おいしいお弁当を頬張るミーアを見て銀色のキツネちゃんが木の上からこっちを見ています。金色の目がキラキラしていて可愛い!耳をぴんと立てて尻尾をフリフリしています。仲良くなりたいかも……。


「おいでおいで」

「キュウ……」


銀色のキツネちゃんは少し警戒しながらもゆっくり近づいてきました。すごくふわふわなの!手を差し出すとペロッと舐めてくれた。


「可愛い〜!」


撫でてあげるとゴロゴロ喉を鳴らしはじめたの。幸せそう!


(おい、あれは幻獣のシルバーテイルじゃないか?)

(珍しいわね。大人しい幻獣だから危険はないけど……なんでこんなところにいるのかしら)

(いや、その前に幻獣に簡単に好かれてしまうミーアに驚かんのか……)


銀色のキツネちゃんもお腹が空いているようです。林檎を半分こしてあげました。パクパク食べる姿が可愛い!ミーアは森の中にいるとよく動物たちに出会うけれど、ここまで懐いてくれるのは初めてです。


さて、お腹いっぱいになったしお仕事頑張るぞ!と思ってお弁当箱を片付けていると……。


「キュッ!」


キツネちゃんが一声鳴き、くるっと振り返ってこちらを見ます。細くてしなやかな銀色の尻尾がふわっと揺れます。そしてゆっくりと森の奥へ歩き出したのです。


「待って!どこに行くの?」


慌てて追いかけるとキツネちゃんは時々立ち止まり、ミーアが来るのを確認してまた歩き出します。まるで「一緒に行こう」と誘っているみたい。


「『黄金の実』がある場所を教えてくれるのかも!!」

「キュッ!」


銀色のキツネちゃんは嬉しそうに跳ねながら先導してくれます。木々の間を器用にすり抜けたり、倒木を飛び越えたり。ミーアも負けじとついて行きます。どんどん森の奥へ進み、気づけば見慣れない景色になっていました。木の幹が太くて苔むしていて、光が差し込む角度も違う。見上げると空が小さく見えます。


「すごい!知らない場所だ~!」


キツネちゃんの足取りが次第に速くなります。すると突然立ち止まり、ミーアの方を振り返りました。金色の目がキラキラしています。そして急に走り出し、細い枝をくぐってさらに先へ消えてしまいます。


「あっ!待って!」


空き地の中心には幹も太く立派な巨木がそびえ立っていました。その枝々にはびっしりと金色の果実が実っていて、まさに黄金の雨が降っているようです。


「わぁぁっ!すごいっ!」


ミーアは思わず歓声をあげました。これがアリシアお姉ちゃんが欲しがっていた『黄金の実』!嬉しくてスキップしながら近づきました。すると—。


「グォオオッ……!」


低い唸り声と共に、地面がぐらりと揺れました。そうして大きな大きな銀色の塊が茂みから姿を現したのです!お店よりも大きな銀色の身体、背中に輝く月光のような毛並み。牙を剥き出してミーアを見下ろしていました。


「ひゃっ……!」


ミーアは反射的に後ずさりましたが、大きな体の片足が赤黒い血が見えます。


(ま、まずくないか?)

(大丈夫。こっそり【どんな強力な攻撃も反射する魔法】のアミュレット持たせてるから)

(ちょ、いつの間にそんな護符を仕込んたんじゃ)

(でもいざとなったら飛び出すわよ)

(お主も大概過保護じゃのぉ)


「!!あなた怪我してるのね!?」


思い切って前に出て話しかけました。震える声でしたが勇気を振り絞ります。すると大きな銀色さんはミーアを見つめました。なんだか不安そう……。助けて欲しいそう……。きっとこの大きな銀色がさっきのキツネちゃんの親なのかも!

そう思って持ってきた魔法薬の小瓶を開けると、慎重に近づき、傷口にかけるように薬を振りかけます。


ピンク色の液体が傷口に触れるとみるみるうちに赤みが引いていきました。銀色さんが痛みに耐えているようで震えています。でもしばらくすると大きく息を吐き出し顔を上げました。キツネちゃんもピョンピョン跳ね回っています。どうやら治ったみたいです!よかった!


「ふぅ。良かった~!」


(やれやれ、どうなるかと思ったが大丈夫だったか)

(うーん。あの大きさだと幻獣というよりも神獣の域に達しているわね。それが怪我をするなんて……)

(縄張り争いか?)

(わからないけど、しばらくはミーア一人で森には行かせられないかもね)


思わず地面に座り込みます。怖かったけれど頑張ってよかった。大きな銀色の人は優しくミーアの頭を舐めてくれました。ザラザラしていてちょっぴりくすぐったいけど嬉しい気持ちでいっぱいになります。


「ねえねえあの木の実もらっていい?」


そう聞くと銀色さんはすぐに頷いてくれました。ミーアは”さいしゅー”用の袋を取り出すと、夢中で『黄金の実』を摘み始めました。つやつやした金色の果実は光に当たると七色に輝いて綺麗です。一つ一つ丁寧に袋に入れていきます。キツネちゃんもミーアのそばで一緒に実を拾っては渡してくれます。ありがとー。仲良しの証拠だよね?

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