第04話 02 紅き鎧の戦士
かつて神器を打つ鍛冶と言われた男がいた。
彼が作りし白銀の鎧ベルガイアは、勇者と呼ばれたウェインが身に着けた鎧だ。
また、彼の代表作の一つにエルフォスという深紅の鎧がある。言い伝えによると“すべての炎を受け付けない”最強のアンチファイヤプロテクタと言われている。
エルフォスは独立国家モルベスの宝、王族の鎧としてまつられていた。
「・・・イルグド・モルベス。我がモルベスの皇太子として元服せし汝に、国の宝エルフォスを託す・・・」
そのモルベスで、国王であるサリウス・モルベスが宣言をする。
皇太子イルグドの元服式だ。
中肉中背といった体格には特に特徴はないが、質素な服装から見える腕は鍛錬した筋肉が見える。
イルグドには若くありながら近衛隊長と対等に渡り合える剣技とパワーがあった。
短い赤い髪に褐色の肌。質素な服装の彼は恭しくその儀式を受けた。
「イル様が元服なさった!」
小さい国での皇太子の元服。国を挙げての祭りとなった。
「イルグド皇子、街中あなた様の元服を祝っております。」
窓から見える街の風景を見ながら長い金髪をポニーテールに纏めたメイド姿の女性がイルグドに言った。
「・・・子供のころからの夢だったからなぁ・・・・」
感慨深くイルグドは答えた。
“エルフォスを纏う戦士になる。”
それが彼の小さいころからの夢だった。
「・・・しかし、夢がかなってしまうと、目標を失ってしまうな・・・。」
小さくぼそりといった呟きをメイドは聞き逃さなかった。
自分の顔の前に人差し指を立て、満面の笑みで提案をする。
「なら、次はベルガイアですわ!」
唐突に出た伝説の鎧の名は、まさに勇者の鎧、イルグドは予想外に出たその名に少しひるんだが、軽く口角を上げ静かに笑った。
「え~、駄目ですか~。」
メイドはつまらなそうに上目遣いになりながらそう言った。
「・・・いや、タニア・・・それもいいかもな・・・」
含み笑いをしながらイルグドはメイド姿の女性、タニアに答えた。そして続ける。
「しかし、それはまた今度だ・・・。俺は王族としてこの国を守っていく。それが次の目標さ!」
凛とした表情で窓から見える空を見つめそう付け足した
一息つき、タニアに視線を戻し
「それまでも、ちゃんと俺の世話をしてくれよ。」
その言葉を聞きタニアは静かに笑い
「はい、そうさせていただきます。私は一生イルグド様の侍女としてお世話させていただきますわ。」
はっきりとした口調でそう返した。窓から入ってくる風に赤毛の髪が揺れた。
モルベスに新しい風が吹いていた・・・・・・。