第11話 03 どれよ!
「諦めて引き返せだと!!」
水壁に写し出された文字を見てジェイクが怒りを露わにする。
「おい!落ち着け!奴らの思う壺だぞ!」
ミガルが窘めるも聞いてくれなさそうだ。
しかし今度はどうしたことだ、光は消えずに文字を形成し続けている。
「そこの茜色の戦士さんは謎が解けたかしら?」
シルフィーネのその言葉を聞きミガルは苦笑いする。
”全く、上から目線で・・・”
気に喰わなかったが、自分たちが格下の扱いの中にすっぽりと納まっていることに納得してしまったのだ
「ん?ちょっと待て!」
ミガルは言葉の違和感に気付いた。
「何故、俺が茜色の戦士なんだ?」
褐色の肌に黒髪の自分を想像し思わず聞き返してしまった。
シルフィーネはキョトンとした表情を見せる
「あら・・・本当ねぇ・・・なんでかしらねぇ・・・」
とぼけた口調でそう言うと
「そうねぇ、あなたのオーラが茜色だからかしら。」
優しく微笑みながらそう言う。
ミガルは帯刀している自分の剣、ベルセルクを確認する。この剣は茜色が基調の剣だが、鞘は白が基調で外からは剣の色は見えない。
ベルセルクのオーラが見えているのだと確信した。
「それで、どう?謎は解けたかしら?」
担任の先生がちょっとした難問を生徒に聞くかのように尋ねる、ミガルは頭を掻きながら「ちっ!」と舌打ちし
「減衰・・・でいいのか?」
ぶっきらぼうに答えた。
「あら!難しい言葉知ってるじゃない!正解よ!!」
そういうと簡単な解説を始める
「今回は、上昇させると同時に、光を細かく細分化して、進行方向の違う光と衝突させて消滅させていったのよ!」
今の文字は減衰させずに水の中を漂わせているとのことだ。
簡単に言いやがる・・・かなり高度な技だぞ!
ミガルは苦虫を噛み潰したかのような表情で彼女を見る
”・・・今回は・・・って事は、まだ別の方法もあるってことだな・・・”
ほどほど嫌気がさしたのだが・・・
「闇の属性と聞いていたが・・・光も操るのか?」
思い切って質問を投げてみた。光と闇の両方の属性なら、今回は引き揚げた方がいい。
シルフィーネはフフフと笑みを浮かべ
「ナイショよ、女性は謎が多いほうがいいでしょ。」
ウインクしながらそう言った。
「気に喰わんな。」
ミガルが小さく呟くと
「ジェイク!もう一度撃て!」
早口に指図する。
「まぁ、よくわからんが、何か考えがあるんだな。」
ニヤリと笑いシャイニングソードに魔力を込める。
「行け!!」
その言葉と同時に再度9本の光の矢が放たれた。
ミガルはジェイクが構えた時にはその場にいなかった。
一閃の影となったミガルはシルフィーネの水の壁目掛け進む
「行け!!」
背後からジェイクの声が聞こえ光の矢が迫るのがわかる。
「はっ!!」
短い気合の入った掛け声を入れると、茜色の剣ベルセルクを右手で抜き水壁に切りかかった。
茜色の美しい光が起こり、水壁は横一文字に切られた。光の矢は幾つかは水に吸い込まれたが、残りの矢がその間を過ぎて行くのを確認する
「3本か・・・」
過ぎて行く3本の矢がシルフィーネに襲い掛かる。
「きゃっ!」
そんな短い声を上げて3本とも避ける。
「まぁ、それも想定済みだが・・・」
そのあとにすかさずミガルが切り込む。
シルフィーネは遠ざかるように右側へステップする
「逃がさん!」
ミガルが速いステップでそれを追い切りつけるとガキーンという金属音が上がった
シルフィーネがネクロマンサーを出し受けとめたのだ。
そこへ光の矢が反転してシルフィーネを襲う。
「ん~!もう!」
そう言うとシルフィーネの背後に闇が現れる。
「影牙!」
小さく呟くように言うと、影の牙を出し光の矢を消滅させる
その隙をつきミガルが剣を振るう、影牙が何本かミガルに向かったのだがそれはベルセルクで破壊したようだ。
「あなた結構強いわね。」
ネクロマンサーでミガルの剣をうけ、嬉しそうな言葉を出した。
「舐めるな!」
一度バックステップをし右足に力を入れ力を溜め、左足で強く踏み込むと同時に右足で大地を蹴る。
大きく素早く力強く旋回し右手で持ったベルセルクで切りかかる
その剣をシルフィーネはひらりと跳躍し躱した
”この距離で!!”
この短い距離での渾身の一撃がこうも容易く躱されるとは思いもよらなかったのだ
「凄いわね、あなたは・・・」
完全にミガルが負けた攻防だが、シルフィーネはそう言うと
「剣に乗ろうと思ったけど、ちょっと出来なかったわ。」
あっけらかんとした台詞にミガルは間を置いた。
”間違いなく引き上げた方がいい”
闘うにしても準備が足らなすぎると判断し、来た時と同じ速度でジェイクの付近へと引き返す
「見たか?あの化け物ぶりを」
「ああ・・・奴は間違いなく化物だな。」
ジェイクとそのやり取りをすると
「ちょっと何よ!こんな可愛い女の子に化物ってないでしょ!!」
少々遠くで抗議しているシルフィーネを無視し
「引き上げるぞ。今回は準備が足りなかった!」
「仕方ないな・・・」
そう言うと、五人の周りに淡い光が立ち上る・・・と、うっすらと姿が消えていき転移した。
五人が消えた後、残ったシルフィーネ達は迫りくる軍勢を『雨の鉄槌』にて鎮める
「全く、私たちはこのままでいいのかしら・・・」
イリアがぼやいた。確かにほぼシルフィーネ一人で片を付けている
「あら、立会人がいないとこういうのは成り立たないのよ!」
シルフィーネがそう言う、曰く、こういう立会人は格のある人物が適任というのだ
「まぁ、一応小国とはいえ王女ですけど!」
ちょっと不機嫌そうに応えるイリアをよそに、シルフィーネがレオンに
「そう言えば、シガとはこの先で待ち合わせだったかしら。」
と確認をする。
その言葉に、イリアとヒューイは反応する
「えっ!!」
イリアの脳裏にいつぞや自分で言った言葉が浮かび上がった
『化け物は化物を呼ぶ』
もしかして同一人物なのか?
イリア、ヒューイ、ウィドは驚きを隠せなかった。
「ちょっと、シガって、長い銀髪の男の事よね!」
イリアがシルフィーネに言い寄る
「えっと・・・長いことは長いわね・・・銀・・・そうねぇ・・・金髪?・・・銀髪っぽいかなぁ・・・」
容姿の一致を確認すると、
「リグアル公国で城からウィンディーネと飛んでいった男よね!!」
更に追い打ちをかけるように質問をする。
「えっと・・・そんなこともあったわねぇ・・・」
上目遣いで思い出しながら返答をする
「それよ!!!」
まるで謎が解けたかのようにイリアが大きな声で言った
シルフィーネがびっくりした表情で目をぱちくりして彼女を凝視し、
「・・・どれよ・・・?」
と呟いた。
ここにきて、
そう言えばシガとイリア達はまだシルフィーネの知り合いとして会ってないなぁ・・・・
・・・と・・・
思い出した次第にございます。




