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King of Sords  作者: カピパラ48世
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第09話 13 母という呼び名

闇に潜む温もり


闇に抱擁される安寧


闇より受けし


夜のやすらぎ


        フェルムトリア戦記 母 より



ヴォルザードは右手でシルフィーネの背中を押さえ、落下する。

”そのまま地面のぶつけても彼女の頑丈さではダメージはないな・・・”

最後の魔力を右手に込めた。

「最後だ!!」

叫びながら魔力を込め地面へとシルフィーネを・・・

ドオオオォォォンという大きな地響きと共に着地をした。


ヴォルザードはうまく着地できずに地面に転げ、何とか地面に転がった状態で上体を起こすと、蜘蛛の巣のようにひびの生えた地面の中心にいるシルフィーネを見た。

自分も力を使い果たして動けないが、彼女はピクリとも動かない。

「・・・やっと・・・勝つことが・・・」

そう呟いた時、シルフィーネに動きがあった。

ピクリと右手が動くも、上腕の健が切れているので、そちらでは大きな動きができないのか、反対の左手に変更し体を支え上体を起こし始めた。

「・・・まったく・・・ホントに負けず嫌いですね・・・」

ヴォルザードは苦笑いする。

血まみれになった彼女はゆっくりと立ち上がり呼吸を整えると、そのままゆっくりとヴォルザードに歩を進める。

左手にも力が入らないのか、ネクロマンサーがその握る左手から離れ、乾いた音を響かせ地面に落ちた。

それでもフラフラと、ゆっくりとヴォルザードに近寄ってくる。

体力切れ、魔力切れのヴォルザードは力を入れ立ち上がろうとしたが、力なく崩れ尻もちをついた。

「・・・ぐうぅ・・・」

ヴォルザードは唸った。

‘もうあなたは血まみれではないか・・・もうフラフラではないか・・・何が貴方をここまで動かすのか・・・’

とうとうシルフィーネはヴォルザードの目前までたどり着く。そして立ち止まった。

シルフィーネは強い眼差しで、ヴォルザードを見下ろす。


短い時間二人はそのままの姿勢で動かなかった。


その緊迫をヴォルザードが破る

「シルフィーネ・・・あなたは・・・」

そう言葉を出そうとした刹那・・・シルフィーネが立ち崩れ、ヴォルザードに覆いかぶさるように倒れる、そのシルフィーネを抱き留める様に受け止める。

すると・・・囁くようにヴォルザードに耳打ちする。

「・・・麒麟・・・を・・・神獣を、・・・一撃で・・・屠るなんて・・・ね・・・・」

ゆっくりと囁き始めた。


「・・・あなた・・・は・・・強い・・・の・・ね・・・」


その言葉を聞き・・・ヴォルザードは子供の頃の記憶が蘇った。初めて彼女・・・シルフィーネと出会った日のことを・・・

ヴォルザードは上体を起こし、まるで・・・大切なものを扱う様に丁寧に・・・力なく寄りかかるシルフィーネを抱きかかえると、堪えるような表情をして返事をする


「あなたは・・・あなたは、弱いの・・・ですか?」


子供のころの記憶が蘇る・・・姉のように、家族のように・・・師匠として・・・そして・・・


そんな感慨に浸っているヴォルザードを見て、シルフィーネは小さく口角を上げる・・・

「・・・フフフ・・・そう・・・ね・・・強くは・・・ない・・わ・・・」

あの頃と同じ答えを静かに返す。


そう・・・あの日から・・・

・・・あの時から闇を感じていた・・・


安心して眠れる夜を・・・


「なら・・・なら・・、俺が・・・強くなる・・・よ・・・。」

ヴォルザードは目を潤ませながら、あの頃と違う返事を返し、強くシルフィーネを抱きしめた。動けないシルフィーネはただ体を預けヴォルザードの耳元で呟くように小さな声で言う

「・・・フフフッ・・・そうね・・・でも・・・今回も・・・ちょっ・・・と・・・油断・・・しちゃっ・・・・・」

その言葉を言い切る前に、シルフィーネの体が、まるで糸の切れた操り人形のようにガクっと崩れ、小さな寝息を立て始めた。その姿を確認すると、ヴォルザードは大きくため息をついた。

「・・・負けましたよ・・・あなたには・・・」

清々しい表情だった。


「まったく・・・破天荒な、母さんだよ・・・」


そう呟き感慨に浸ろうとしたその時、ヴォルザードは不意に自身が前に引っ張られるのに気付いた。

自分の襟首を力なく握り、ひ弱ではあるが、今出せるいっぱいの力で引き寄せているか弱い腕が見える。

「えっ!」

思わず声を上げると

「・・・言いなさいよ!・・・」

と、声が聞こえた。

見ると、先程気を失ったはずのシルフィーネが、恥ずかしそうに期待の込めた瞳でこちらを睨んでいる。

「・・・な、なにを・・・」

ヴォルザードは思わず聞き返す

「もう一度『お母さん』って、言いなさいよ!」

眠いのか、少々()()()()()()言葉を放った。

ヴォルザードは、しんみりした雰囲気を崩され、苦笑いすると、少々時間を置き

「言いません!」

と、はっきりした口調で返した。

「なに・・・よ・・ケチ!!」

挿絵(By みてみん)

ケチという言葉ははっきりとした発音だったが、それを言い放つと、往生際悪く何か呪文のように愚痴を言いながら眠りについた。

呆れた表情でその一部始終をを眺め、再び眠りについたのを確認すると

「・・・プッ・・・アハハ・・」

と笑いが込み上げてきた。

「・・・まったく・・・あなたはとんでもない人ですよ・・・」

笑いながらそう言うと

「シルフィーネ!」

自分にとって唯一無二の存在であるシルフィーネ(おかあさん)という名前をはっきりと呟いた。

再度挿絵差し替えました

ちょっと修正しました

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