第09話 12 立ち向かう闇
シルフィーネの額に汗が浮かんだ。
実際かなり無理をしているのだが、そのそぶりは見せない。
実際スキル色の強い闇魔法を使い始めたのもこちらの方が詠唱の少ない技能が多く、息切れの多い今となってはそちらの方が都合がいいからだ。
シルフィーネは手を前にかざし魔力を込めた。
すると彼女の後ろにある闇から再び闇の牙がヴォルザードを襲う。先程よりも速度があり数が多い。
”あなたのシャイニングブレイドは高位の光属性だから、対抗できるんだけどね”
ヴォルザードはその言葉を反芻するが如く思い返した
”そうだ、この剣は光の魔剣、闇を打ち消す剣!”
ヴォルザードは咄嗟に剣を前に構え叫ぶ
「我が想いに応えろ!闇を打ち消せ!!」
そう言いながら前方の空間を切り裂いた。
すると・・・切りかかった空間から光があふれ、闇の牙をすべて打ち消した。
「あらら・・・やっぱり・・・お手軽マジックだと・・・負けちゃうわ・・・ねぇ・・・。」
シルフィーネがこの状況でも嬉しそうに微笑みながらそう呟く。
ヴォルザードというと、自分の剣がこんなにも強力な光属性があるのだとは知らなかったので、自分の起こした状況に驚いたが、気を取り直し、
「このまま押し切る!」
ともう一度空間を切り裂いた。
光の刃がシルフィーネを襲う。
シルフィーネの背後にあった闇が彼女を包むように動き、光の刃を受け止め光と共に消滅する。
それと同時にシルフィーネが詠唱を始める
「踊れ!暗き闇の中で、昇れ!光を喰らいし夜をよこせ!」
地面に映ったシルフィーネの影からツタのように影が伸びヴォルザードを囲う円となり、そのまま影が上に伸び彼を包みこむ
そして次の詠唱を・・・と、息を吸った瞬間、シルフィーネがガクリと崩れ左ひざをついた。
「ぐっ!!ゴホッ!ゴホッ!」
呼吸が苦しくなりむせ返した。
”魔力を・・・使い過ぎたわ・・・ね・・・”
だが、まだ負けるわけにはいかない!
歯を食いしばり、片膝をついたまま体制を整える。そして、ヴォルザードを閉じ込めた影に向かい右手をかざし、ゆっくりと息を吸った。
ガン!!ガン!!と影の中から音が聞こえた。シルフィーネはこんな状況にも満足げに微笑んだ。
”・・・まったく・・・強くなったわね・・・”
そして・・・
「天に在りしは全て星!」
唱え始めるとまだ昼間だというのに辺りが薄暗くなってきた。
「煌めき!瞬き!輝けし!」
暗くなった空に小さく輝く光が見える、それはだんだんと轟音を伴って大きくなる。
「来たれ!洛星!!」
詠唱が終わると同時にシルフィーネの眼前にあった影に一閃の光が横に走り影を砕き、ヴォルザードが現れる、そして頭上に燃えながら落ちてきた隕石を一瞥するとシャイニングブレイドを下に構える
「聖なる刃に在りしその姿、我が呼び声に応えよ。」
唱えながら剣を振り上げ始める。シャイニングブレイドを光が包み、ハンマーの形を作り始める
「聖なる大槌」
辺りに轟音が鳴り響き、巨大な火花と石の破片が飛び散る。
二人の周りは光に包まれた。
光がやむ前にシルフィーネがネクロマンサーを前方へと構える
ガキン!と強い音が鳴った。ヴォルザードが切りかかってきたのだ。
だんだんと光が晴れ始めるなか、その剣戟をシルフィーネは受け流し、自分はすべるように下に回り込み、
「はっ!!」
と鋭い声を上げネクロマンサーを振り切った。
ヴォルザードの手からシャイニングブレイドが弾き飛ばされる。いつしか光はやんでいた。
宙に飛ばされたシャイニングブレイド、振り上げたネクロマンサー・・・・
「!!」
シルフィーネは眼前にいるはずのヴォルザードがいないことに気付く。彼の気配は・・・
”・・しまっ・・・”
「翳す我が右手に宿りし光の護符!!」
ヴォルザードの右手に光が走る、シルフィーネの無防備になった左方向から拳を繰り出す
「神の鉄槌!!」
魔力を帯びたその拳がシルフィーネの鳩尾を捉え爆発でも起こったかのように光がはじけた
「!!」
シルフィーネは声も出せずにそのまま宙高く弾き飛ばされた。
拳を出した後にヴォルザードはグラついたが、シルフィーネを追う様に空へ跳躍し、シルフィーネよりも上に上がり再度拳をシルフィーネの背中へ向け突き出した。
強い衝撃と共に、骨の折れるような感触があった。
シルフィーネは悶絶するも、意識はまだあるようだ。
”まだ意識を持っているなんて・・・”
ヴォルザードは驚愕する。そして、シルフィーネの背中に掌を押し付ける
シルフィーネも限界だが、自分も限界に近い。
「これで決める!!」
ヴォルザードは魔力を推進力として使い地面に向け加速した。




