第09話 05 眩しかった・・・・
ヴォルザードは空を見上げた。
あの日から降り止まない雨。不意に現れた育ての親。それはいつしか日常になった。
シルフィーネ・・・彼女が居なければ、自分はもう一度空を見上げる事ができただろうか・・・
彼女は何故俺を育てたのか・・・
答えはあの渦巻く雲の下にいる。
まだ遠くにあるが、眼前にある圧倒的な存在感を放つ、天までも立ち上がる巨大な雲の渦を・・・ヴォルザードは見上げた。
「あら、あなたは左利きなのに右で剣を持つのね」
シルフィーネが興味深そうに言う
「あなたを模してるからそうなるんですよ!」
ヴォルザードが不機嫌に答えた。
「えっ!?」
きょとんとした表情を見せ感嘆の声を上げたる、いわゆる目の前にある姿が鏡写しになっているのだというのだ。
するとシルフィーネは、生き生きとした表情で体を乗り出してヴォルザードに詰め寄る
「ちょ!ちょ!!ちょっと!!!それ、左で同じことできる?」
キラキラした目で来た要求をヴォルザードは断れなかった。
左手で剣を持つ、ここ暫くはシルフィーネを真似るために添え手で使っていたのだが・・・
中段に広く構える、そして一度素早く右側へ振り、返し手で左に強く振る。
「えいっ!」
シルフィーネの気の抜けたような掛け声と共に何やらゲンコツ大の何かが飛んできた。
——— スパンッ ———
と心地よい音が聞こえた。
「!!」
ヴォルザードには手ごたえは感じられたが、抵抗なく振り切れたことに驚いた。
「あ~ら!!素晴らしい!!」
しゃがみながら真っ二つに切られたリンゴを受け止め嬉しそうに声を上げた。
「あなたやっぱり剣の才能あるじゃない!!」
シルフィーネの屈託のない笑顔が眩しかった。
渦巻き立ち上る禍々しい雲を見上げヴォルザードが静かに瞼を閉じ、シャイニングブレイドを持つ手に力を込めた。
雨は降り続いていた。




