第09話 01 過去なのに・・・ショックだぞ!
昨日から小雨が降り続いていた・・・・
少年は、ただ強い眼差しで、水に吞まれた後の村を見ていた。
家屋は流され、形の半分も残っておらず、下流と思われる場所にはその片割れと思われる家の破片が無残に積み重なっている。
積み重なった瓦礫の中に、壊れた家財道具、家畜の躯、そして・・・村人の無残な姿も見えた。
ガサッ・・・
少年の後ろに動く人影があった。
大人にしては小柄な体格の女性、長い黒髪、ボロボロになった紅いワンピースの服、何よりも全身怪我をして血まみれだった。女性は見た目10歳ほどの少年に
「・・・あなた・・・ご家族は・・・?」
呼吸の整わない状態で質問すると、少年は振り返らずに
「・・・流された・・・」
何かに耐えるように震えるような口調でそう答えた。
「・・・そ・・・う・・・」
返事を聞いて、女性は崩れるように膝をついた。荒い息遣いが聞こえる。
気が遠くなりそうなほどの疲労感が女性の体を襲う、姿勢を保つのが辛いのか、少年を慰める為なのか、女性はそのまま少年に覆いかぶさるかのように、後ろから抱きしめた。
「・・・あなたは・・・強いのね・・・」
大人でも泣いてしまいそうな状況で、悲しみをこらえその惨状を目に焼き付けていた少年にそう言った。
「あなたは弱いのですか?」
子供らしからぬ質問が女性に向けられる。一瞬目をぱちくりさせ、
「・・・そうね・・・強くはないわ・・・」
静かにそう答えた。
「なら、強くなることだ。」
ぶっきらぼうに少年は答えた。
女性はその言葉を聞きフフフと静かに笑った。
「私はシルフィーネ、あなたのお名前は?」
少年は一瞬躊躇したが、
「ヴォルザード・・・・」
そう答えた。
シルフィーネはその名前を聞くと、まるで安心したかのように微笑み・・・ヴォルザードにそのまま体重を預けた。
「ちょっ!!」
いきなりのしかかって来たのでヴォルザードは声を上げて振り向いた
「!!」
そこにいた女性は想像よりも酷い傷を負っていた。そして、支えようと抱きかかえた時に、ドロリとした血が手にまとわりついた。
背中にまるでクマに引っかかれたような大きく深い傷が、肩から腰にかけてついていたのだ。
「・・・ちょっ・・・と・・・油断・・・しちゃっ・・・た・・・い・・・・」
気を失うシルフィーネをヴォルザードは受けとめるように抱きしめた。
雨は降り続いていた・・・・・
シルフィーネが目を覚ますと、何やらがんじがらめになっていた・・・目の前にいる子供・・・ヴォルザードを見て
「ちょっと巻き方間違ってない・・・?」
包帯の巻き方にクレームをつけた。
「仕方ないだろ!子供なんだから!!!」
曰く、手当を試みただけありがたいと思えということらしい。
笑うしかなかった・・・。
どれだけ寝ていたのか・・・まぁ、いくらか魔力が回復してきたので、シルフィーネは自身に回復魔法を施した。
そして包帯を解こうと上体を起こすと、部屋の端にボロボロになった紅いワンピースが目に映った。
ああ、まぁそうなるわね・・・
自身の上半身が包帯しか身に着けていないことに気付いた。
「ふふ~ん!」
わざとらしく声を出すと
「見たい?」
とヴォルザードをからかった。
「お母さんの方が大きくて形が良かったから、あまり衝撃はなかったからねぇ・・・」
即座に残念そうな返事が返ってきた。
シルフィーネは焦点の合わない瞳をヴォルザードに投げかけ
「・・・ちょっと、ショックだぞ・・・」
そう呟いた。




