第08話 09 再会の親子
「息子よ・・・元気だったかい・・・」
シルフィーネは大剣の主にそう言った。
白い鎧に身を包んだ若い男は、苦笑いをすると。
「元気だよ・・・シルフィーネ。」
と、振り下ろす剣に力を込め、よそよそしく答える。
「あら・・・元気そうで・・・なにより・・・ねぇ・・・」
その剣に対応すべく力を込めながらシルフィーネは答えた。
「・・・でもね・・・」
シルフィーネは力を込めて剣を押し返す。
「お母さんを呼び捨てとは・・・あんまりじゃないかしら!」
その声に乗せて剣を弾き返した。
「!!」
予想外の力に男はたじろぎ、シルフィーネを見た。
剣を渾身の力で弾いたシルフィーネは、深く息を吸うと
「・・・ねぇ・・・ヴォルザード!」
かつて息子として育てた男の名を呼んだ。
体格のよい体つきに白い鎧を着、白地に金色の装飾の大剣、銀髪の端正な顔立ちの男・・・ヴォルザードは、小さな笑みを浮かべた。
「あなたは、お変わりないようで・・・。」
シルフィーネは剣を構えるのをやめ、ちょっとグラビアっぽい姿勢をして、ニヤリと笑った
「変わったわよ。あの頃よりも美人になったでしょ!」
キョトンとした表情を浮かべた後にヴォルザードが笑った。
「その黒い剣も相変わらず素晴らしい剣ですね。」
あえてシルフィーネの容姿にではなく、黒が基調で赤と金の装飾が施された片刃の剣・ネクロマンサーを褒め称えた。
「私のシャイニングブレイドも、自慢の剣でしてね・・・」
ヴォルザードが力を込めると、剣が雷光を発し始めた。
「水属性のあなたにこの雷撃が防げますか?」
5メートルほど離れただけの距離から、見た目からも大きな雷撃が剣から飛び出した。
シルフィーネは手を大きく横へ振る。
ドォォォォン!と大きな音が辺りに響いたと同時にシルフィーネから10メートルは離れた地面に落雷した。
「!!」
ヴォルザードが驚きの表情を出した。
「あなたはホントに非常識ですね・・・一体何をしたんですか・・・」
シルフィーネはニッコリと笑いながら
「教えたげなーい」
と、意地悪そうに答える。
ヴォルザードはクスリと笑い、冷静に分析し始めた。
手を横に振って現れたのは水だ。雷はそれを追いかけるように逸れた・・・
ハッとした。
「水に砂鉄を混ぜたのですね。」
それを聞いたシルフィーネは不機嫌な表情になり、
「なんだぁ!見てたんじゃん!」
つまらなそうに答えた。
水に混ぜた砂鉄に雷撃の電気が伝わり、地面へと誘導したのだという。
「いや、見えはしなかったのですが・・・」
ヴォルザードは申し訳なさそうに返事した。
精霊の性質を持って鉄を操る者など想像していなかったが・・・ここにいた・・・
あっけにとられて思わず苦笑いした。
「あなたが普通の鉄を触れるとは想像していなかったです。」
正直に伝えると
「触れるわけないじゃん!」
あっけらかんと答えた。
「だって触ったら大火傷しちゃうもん。あんた知ってるでしょ!」
いや、敵に弱点を教えてどうする!とヴォルザードは思ったが、自身が彼女の子として育てられていた頃の記憶が蘇った。確かに鉄で火傷していた記憶はあった。
それなら・・・
「鉄をぶつけてみよう。」
シルフィーネはギョッとした。
「・・・あ・・・あら・・・お母さんの嫌いなものは・・・無い無いしましょうねぇ・・・」
明らかに焦りながらうろたえ始めた。
「まったく・・・もう子供じゃないんですよ!」
わざとらしく呆れた口調でそう言い返すと、雷を纏った剣が磁力を纏い、地面から砂鉄の塊が現れた。
「エグイの出したわねぇ・・・」
少々怯える表情でその塊を見た。
ヴォルザードはそんなシルフィーネにお構いなく、剣を大きく振るう。すると、砂鉄の塊がシルフィーネに向けて飛んできた。
「まったく!!」
そう言うと一歩下がり両手を前に突き出した。
ギギバキギッ!!
音にするとこんな感じの音が大きく響いた。
砂鉄の塊は大きなドーム型を作り固まった。
「まったく・・・今度は一体どうやって乗り越えたんですか・・・」
呆れた声でそう言った。
「そうねぇ・・・」
ドームからではなく違う方向からシルフィーネの声が聞こえた。
「!!」
ヴォルザードが身を捻るようにその場を離れると、そこに黒い一閃が瞬いた。
「あら、避けられちゃった・・・」
後ろからいきなり現れたシルフィーネの斬撃を何とか躱したのだが、よろけて鉄のドームを触った。
「冷たい・・・?」
砂鉄がまるで氷のように冷たく固まっていたのだ。
「まぁ、常套手段よね。」
氷のドームを築き、それでガードしたのだという。
さらに・・・シルフィーネの足元を見ると地面に穴があった。
「それでそこまで掘り進んで後ろに来たのですか・・・」
全く非常識な行動力だ・・・
「あら、だってあなた転移魔法使えないから、転移したら不公平って思ったんだけど・・・」
自分の常識を語り始めた。
ヴォルザードは目眩したかのように左手を顔に当てると
「まったく、あなたは私を舐めているのですか?」
少々イラついた口調で攻め立てた。
「・・・ん~・・・」
シルフィーネは少々考えるそぶりを見せると
「あなたと同じ条件で私が勝てば、もう歯向かう気にならないでしょ?」
あっけらかんとした口調が、聞こえた。
その迷いのない言葉に言葉を失い一瞬呆然としたが、すぐに我を取り戻し剣を鞘に納め
「今回は諦めます。」
と小さく言った。
すると、シルフィーネは満面の笑みを浮かべ
「いつでも甘えに戻ってきなさい。」
ニカッとした表情でそういうと、ヴォルザードはふてくされた顔をし、
「甘えません!!」
そう言うと踵を返し歩き始め、現れた時と同じ強い光を纏い消えた。
それを目の当たりにしたシルフィーネは驚いた表情を見せ、
「・・・えっ・・・」
と呟いた。
「あれって転移魔法よねぇ・・・・」
シルフィーネは苦笑いした。




