第08話 06 懐に来る冬
間もなく初夏となる季節の風を受けて黒いトサカがたなびいた。
小高い丘に座ったオルトは渋い表情でぼやいた
「戦争ばっかりで、依頼が少なくなったなぁ・・・」
すぐ隣で、呆けたようにくつろいでいるメノムにそう言う
「ん~、そうねぇ・・・」
頭に青い烏を乗せたピンク髪のメノムが何気に呟いた。
「み~んな、戦争ばっかりで、依頼くれないもんねぇ・・・」
移動も少なくなってきているので護衛も少ない。また、盗賊などを相手にするのとは違い、軍隊が相手になると逆らえば反逆者になりかねないので、護衛がなり立たないこともありうるのだ。
「そうだなぁ・・・」
オルトが話を切り出した。
「久しぶりに、ケストラへ帰るか!」
メノムが露骨に嫌な顔をした。
「いやよ!やっと村から出れたのに、帰っちゃったらまた外に出られなくなっちゃうじゃない!!」
ツンとそっぽを向く、青い烏のファーは激しく動く頭の上で器用にバランスをとってオルトに強く鳴いた。
「今は外が危険だから、村に引きこもった方が安全だと思うぜ!」
説得を試みるがメノムの意志は固かった。
朝になった・・・
移動、兼宿泊を兼ねている馬車を守るように緑色の熊がオルトを睨んでいた・・・
オルトは頭を抱え
「わかった・・・、わかったから・・・村へは帰らない!」
諦めるように大きく聞こえるように言った。
「ホントね・・・」
馬車の幌から不審者を見る顔を半分出しメノムが呟く
「本当だ!だから こいつらをおとなしくさせろ!」
首に巻きついた紫色の蛇と足を執拗に突く青い烏を指さし訴えた。
メノムは少しその様子を見て、大きく不快な表情をすると
「ベ~だ!!」
と大きく舌を出した。
「なんでだよ!!」
オルトが唸った。
メノムは7つの音叉を持つ稀有な存在だった。
ケストラの村では神のように奉られた。
それが嫌だった。同じ年頃の者たちは村の外へも駆け回っているのに、自分は境内の外には出してもらえない。
親とも他人行儀だった。そんな中、無礼にも自分に溜口をきく一見バカな男・・・オルトに惹かれた。
メノムはムスッと頬を膨らませると
「もう、あんな窮屈な生活は嫌なの!」
口早にそう言うと馬車の中に入りシーツを頭からかぶってふて寝した。
村に帰るのが正解だと思うのだが、本人の拒絶具合を見るとそうにはいかない。オルトは頭を抱えた。
一人で生きていくには問題ないが、女の子を連れてではやはり先立つものが足りない。
そんなことを思いながら考え込んだ。
「うーむ・・・こいつらがいるから大丈夫だろう・・・」
自分の足を突く烏と、首に巻きついた蛇・・・そして緑の熊。
「仕方ないなぁ・・・・」とオルトは一人街に向かった。
街には沢山のチラシが貼られていた
個人的な依頼は減ったものの、仕事がなくなったわけではない。
期間的な依頼はあるのだ。例えば戦争に備えて防護柵を作る期間工や、戦争の傭兵など・・・
「まぁ・・・期間工かなぁ・・・」
傭兵は致死率が半端ない、それなら期間工だ・・・オルトは腕をまくりなが、街中に貼られている求人のチラシの一枚に向かって歩を進めた。
「最近はあまり力仕事してないけどなぁ・・・」
そう呟いてそのチラシを手に取った。




