第08話 05 ガルド回想
ガルドは広場の中心にいる二人をじっと見ていた。
「なんて奴だ・・・本軍は街の外に待機して、二人だけで・・・かつて敵対していた群衆の中に入るとは・・・」
ぼそりと呟いた。
しかも本陣とは言っても数十人の軍勢で、街を囲むわけでもなく、近くにキャンプを設営しただけという布陣・・・
「器が違うな・・・まるでザルのようだ・・・」
ガルドが再び呟いた。大きいようで何もない・・・何も無いようで、惹かれるものがある・・・
皮肉のある苦笑いをした。
あの時、あの二人に負けてから、ガルド達はイルに身の上を説明した。
獣人は元々戦闘は望んでいなかったのだが、他の種族により戦争を強要されていたのだ。
その種族とはリザードマンだ。彼らは数が多く獣人を圧倒した。彼等の指示通りより人間と最前線で戦闘を強いられることとなった。
故に戦死者を最小にするために、ガルド達の精鋭のみが闘い、他は街の防衛と称して戦闘をさせなかった。
イルは、「ああ、そうだろうな、調べた人数からすると戦闘に参加している人数が少なかったしな。」と言った。
「調査済みか・・・」
苦虫を嚙み潰したような表情でイルを睨んだ。確かに今回の戦闘で、どちらにも戦死者はいない。これも我々を知っていたからこその結果であるとガルドは唸った。
「知ることは武器なのさ。」
その落ち着き諭すような言葉は、先程のいかれたようなスカウトをする彼とは別人の言葉にも思える気がした。
”どちらが本性なのか・・・”
更に唸ることしかできなかった。
「我々は、君達を同朋に迎えるつもりだ。」
ガルドを含むスカウトされた3名にイルは言った。
「同朋を裏切れというのか!」
当然のように声が上がった。タニアの冷徹な瞳がその者を睨みつけ、大鎌を持つ手に力が入った。
それに気づいたイルが小さく苦笑いをしながら、静かに手で制止した。
「そうだねぇ・・・君の言う同朋がどこまでを言うかわからないが、君達の街の人々を迎え入れたいということになるかねぇ。」
一瞬ガルド達は言葉が出なかったが、
「我々の街を・・・」
その呟きにイルは答える
「そうだよ、君たちは動きが俊敏で、優秀な者は単体の行動にも長けている。情報を収集するのに君達以上の適任は少ない.。」
ガルドの視界が変わった・・・いや実際には変化などないのだが、目前の視界が広く澄み渡った気がしたのだ。
”なんだ・・・こいつは・・・”
ガルドは知らず知らずのうちにイルに惹かれていた。
街に帰ったガルドは街の長老達と話を行い、話をまとめる。そして何人か同行して再度イルと話をすることとした。
「条件がある。」
ガルドの一言目にイルは待ってましたと言わんばかりに言葉を待った。
「リザードマンから我が街を守ってくれ!」
イルの瞳が輝いた。
「いいぞ!」
高速で返事が返ってきた。
「しかし、奴らも同朋になってもらう計画故、滅ぼすわけにはいかんぞ!」
きっぱりとそう言ってきた。
「奴らを味方にできるというのですか!!」
ガルドが思わず声を上げた。
「ああ!全てというわけにはならんだろうがな。」
”なんだ・・・この自信に満ちた返事は・・・”
そこから先は、言葉が出なかった。
そして・・・
そこから数日のうちに、この街を見張っていたリザードマンの軍勢と、イルの軍の交戦があった。
目を見張るのが、あの傍らにいる女の強さ、それに及ばないがイルの強さ、統率の取れた少数の兵士。
イルとタニアの2つの隊に別れ、見事なほど鮮やかにリザードマンを退けた。
「いやー、けっこう素早い種族だねぇ。」
街の付近のリザードマンを退けた5日後にイルが帰ってきた。
「ああ、この街には手を出さないように、彼らの本陣に伝えてきたよ。友好的にね。」
ニカッと少年のような笑顔をガルドに見せ、そう告げた。
ガルドが敵わないなぁと苦笑いした。




