第07話 01 始まりの戦火
「世界は変わってしまったのさ・・・」
ギムがウェインに語り掛けた。
ウェインは、目を閉じたまま動かない。
「『世界の中心』を手に入れれば、どうにかなるかもねぇ・・・」
ウェインは静かに目を開いた。
「『世界の中心』・・・白き御影・・・冥府の女王・・・」
そう呟くとラグナロクを握る手に力を入れた。
「世界を・・・取り戻す・・・」
ウェインが静かに呟いた。
ドォォォォォン!!
大きな爆発音が辺りに響く。
「弓を引けー!!」
「歩兵隊、前進!!」
怒号が飛び交う戦場。大陸の西に位置する亜人率いる国「バルゾナ」と人間が率いる国「ダージェス」との間で戦火が始まり、その勢いはとどまることを知らない。
「さて、シガよ・・・お前はどう出る?」
ダージェルの国境近くの丘に立つギムが薄笑いを浮かべそう呟いた。
「それを想像するだけで、心が躍るようだよ・・・」
その言葉は風の音にかき消された。
戦火は続いていた。
悲しい瞳でその戦いを見ていた
”泣いては駄目だ・・・”
強く念じ、瞳を閉じる。
「大丈夫か?」
その姿を見て心配そうにレオンが声をかける。
シルフィーネは言葉を出せなかった。
折角、平和になったのに・・・やっと共存が見えてきたのに・・・・
心が砕けそうだった。
「でも・・・今はまだ泣いてはいけない・・・」
シルフィーネは胸に手を当てながら、しゃがみこみ俯いた。
”どうして・・・戦いが始まったのか・・・”
理由はわからないが、原因には目星をつけている。
「ウェイン・・・」
小さく呟いた。
血なまぐさい風が吹いていた・・・。
星が輝いていた。
「ああ・・・星が見える・・・」
感慨深そうに声を出す。
400年の間、暗闇に閉じ込められていたビエラの目は輝いていた。
あの闇から出た後に長い銀髪の男の幻影から、
「ウェインは生きていて、君を待っている」
と聞いたビエラは、その場所を目指して進んでいた。
ー--ウェインと会えるー--
その思いを胸に・・・満天の星空を見上げた。
「嬉しそうだね・・・でも・・・君には役に立ってもらいたいことがある・・・」
背後から男の声が聞こえた。
「えっ・・・」
ビエラは聞き覚えのある声の主を確認するために振り向く。
「!!」
振り向くと同時に、眼前に闇が広がった。思わず「きゃっ!!」と発したが、その黒い闇にかき消された。
何も見えない・・・何も聞こえない・・・自分の声さえも・・・
手足・・・いや、全身の感覚が感じられない・・・。ビエラは孤独に戻されたのだ。
”なに、これは・・・”
ただ、ウェインと会いたいという想いで耐えてきたあの暗闇の時でさえ、自分の感覚は感じられていたのだが、まったく今の自分の把握さえも難しいこの空間で、ビエラは絶望を感じた・・・。
”ウェ・・・イン・・・”
心の中で不安そうに呟いた。