救いはありますか!?!?!?
ピンポーンと、玄関のチャイムが鳴る。
今年から3年間世話になる予定の制服を着て、俺は急いで外に出た。
「待たせたな」
「相も変わらず遅いね、君は」
「悪い悪い、ちょっとなーーーっ」
「どうかした?」
ボブカット。
艶やかな黒髪。
気さくな口調。
そして何より、新しい制服。
改めて思う。
「なぁ、楓」
「ん?」
「俺たちってーーーー親友だよな?」
「はぁ、誠に残念だけどね。 腐れ縁もここまで続くと親友って言っても過言ではないね」
告白してぇええええええ!!!!
日和見なよ俺ぇえええ!!!
ーーーーーーーー
遡ること数週間前。
中学を卒業した春休み。
短いこの期間は優秀なみんななら高校の予習に時間を削ったことだろう。
だが俺は違った。
生まれてこの方ずっとそばにいた幼馴染の女子。
筑本 楓。
俺は彼女に告白し、順風満帆な高校生活のスタートダッシュを決めるつもりでいた。
そして待ちに待ったデートの日。
俺たちはいつも二人で遊ぶ中ではあるので誘うこと自体には、苦労しなかった。
まぁ『なんか挙動不審……』と訝しげに言われたが……。
バレなかったのでセーフだ。
そりゃそうだろ。
3年間隠してきたこの恋心。
今更バレるなんて毛頭思ってない。
ていうか、気づかれない自信しかない。
「んっ、今日は早いね。 早起き頑張ったねのシールを上げるよ」
「いらねぇよ! ったく」
「ふふ、恥ずかしがっちゃって」
「ッ!!」
「----どうしたのさ。 あ、もしかして」
楓はその場でくるりとターン。
「僕に惚れた?」
「うぐっ!」
やばい。
満面の笑みマジでやばい。
その顔に俺は危うく、告白しそうになるがぐっとこらえる。
「それにしても今日はかわいい恰好だな」
うわああああ!
自分で言ってて恥ずかしいぃぃぃ!
思わず地面に小さく蹲りたくなる。
と、楓から返答がない。
「-----」
「ど、どうした?」
「んんっ、いや。 なんでもないよ」
一瞬沈黙したもんだから言葉を間違えたかと思った……。
楓の表情を見るに先ほどの俺の言葉はそこまでキモイものではなかったらしい。
「それよりもお世辞でも女子にかわいいといえるなんて感心したよ、僕は」
「俺を何だと思ってるんだ……」
「偏屈でひねくれたクソオタク」
「……」
間違ってはない。
うん、間違ってはないが、なんだろうかこのモヤっと感。
「さ、それより今日は僕をとことん楽しませてくれるんだろ?」
「あぁ、このひねくれたクソオタクが楽しませてやるよ」
「偏屈も忘れないでね」
「うっせ」
ともかく、スタートダッシュはなかなか順調にできた。
そのあとも、水族館に行き、ちょっとかわいらしいカフェに行って、最後は駅近くのファミレスとはいってもちょっとばかり上のファミレスで腹を満たした。
そしてーーーー。
解散した。
無論告白はしていない。
もちろん俺だって努力した。
だが、水族館で言われた一言が俺に釘を刺したのだ。
「奏……僕はさ、今の関係すっごく居心地がいいんだ」
「---っ、そうだ……な。 うん、俺もだ」
「小さいころからずっと一緒だった。 困難だって二人で協力して乗り越えてきたんだ。 高校でも仲良くーーーね?」
「あぁ、当たり前だ」
「と、ところでなんだけど……」
「ん?」
「君は好きな髪形とかないのかい?」
「好きな? あーーー、ボブカットとか?」
「ふーん、ま、気に留めておくよ」
「?」
そして見事チキンな俺は告白をせず、二人でいつも通り19時頃に帰宅。
家に帰って妹から放たれた一言。
「根性なし」
今も俺のここに刺さってます……ッ!!!
だが俺はぜってぇ諦めねぇ。
この高校生活で俺は親友ポジから恋人に成り上がってやる!!
ま、まぁ上手くいきそうだと判断できるまではこの恋心は悟られないようにしておこう……。
久しぶりの作品投稿。
相も変わらず僕っ娘が大好きです。