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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

婚約破棄~理由を言われずに、婚約破棄をされた転生公爵令嬢と、その代わりに王子の婚約者になった義妹の話

作者: 山田 勝

「ゲルリンデよ。婚約破棄を宣言する。代わりに、義妹であるメリッタとの婚約を宣言する」


 ザワザワザワ~~~


「殿下、畏まりましたわ。理由をお聞かせ下さい」


 私は、微笑み軽くカーテシーをして、殿下に問うた。

 理由は、大体、分かっている。

 こっちから、願い下げだ。



「理由は、言わない。以上・・」


 ほら、この男はズルイ。私は転生者、ある日、突然、前世の記憶を思い出した。

 日本という国にいたのだ。

 しかし、幻滅した。


 ここは、西欧の中世なのに、男尊女卑だ。


 例えば、男がドアを開けるが、女性を先に通さない。男がささっと、部屋に入る。


 そして、女性に、いやらしいドレスを着せる。未婚の女性は、肩と背中が見えるようなドレス、胸元も開いている。


 夫人になれば、勘弁をさせてもらえるが、それでも、公式の場では、『女』であるうちは、ウエディングドレスみたいなのを着るのが慣習だ。


 だから、私は、殿下が贈ってくるドレスを着ずに、高齢の夫人が好むようなドレスを着ていたものだ。


 学園に行ったときは、皆、どよめいたのよ。



 ☆回想


「ゲルリンデ様・・・いえ、何でもありません」

「まあ、はっきり言いなさい。貴方たちのドレスは、男のためのドレスよ。私は自分が着たいものを着るのよ」


「ゲルデ・・どうした。何かあったのか?」


「まあ、殿下、申し訳ございませんが、私は自分が好きなドレスを着ますわ。私、こういうドレスが好みですのよ」


 言外にお前の趣味は最悪だと言ったつもりだ。



 公爵家に調査が入った。大げさよ。

 お父様は、こってり絞られた。

 家長制度という悪しき制度ね。




 ・・・・・・・・



 ザワザワザワ~~~~


「あの、お義姉様のドレスは、私が欲しがって、もらいました。ですから、お姉様は、このような娼婦のようなドレスしかなかったのです!殿下、ご再考を」


「メリッタ嬢よ。全て、調べたのだ。ここ半年の奇行を、本人の意思だ。優しさは仇になるぞ」



「何ですって!」


 意味不明だわ。肌を隠すのが、娼婦??


 確かに、肌の露出の多いドレスは、義妹にあげたけど、自分が、欲しがったことにしたの?

 生意気な。文明も遙かに遅れている世界の住人なのに、



「ホホホホホ、義妹は、お父様が、どこからか連れてきた愛人の子ですわ。平民に王子妃が務まればいいですわね」


 ・・・お父様がどこからか連れてきた子、お母様は何も言えない。

 これも男尊女卑ね。



「・・・何を言う。メリッタ嬢のアイスブルーの目と、黄金のように輝く金髪、それは帝国の皇室の血筋だ。

 内乱が起きて、我国まで落ちのびて来られたのだ。新皇帝が即位して、恩赦が出された。反乱者の三等親以外は、構わず。王妃にしなければ、敵対したとは見なさない」



「何ですって、そんなことは誰も教えてくれなかったわ」


「そうであろう。貴族なら察するものだ。常識だが・・・」


「もう、良いですわ。私は隣国のルーシー王国に行きます!そこで、官僚として過ごしますわ!今、ルーシー王国の方、いらっしゃいますわね」



 そう、ルーシー王国は、レディーファーストの国として有名だ。

 この国なら、私は輝く。



 お父様もお母様も、何も言わない。


 私は、ルーシー王国に、セルフ追放をした。


 この国では、女性の肌は露出しない。





 ☆ルーシー王国王宮



「貴女、何故、来たの。この国は、男尊女卑の風習が強いわ。貴女の国に行きたかったのに」


 先輩の女官は妙な事を言う。だから、風習を話した。



「・・・肌を露出するのは、殿方の親類から、暴力を受けていないか。痣がないか。性病の証の湿疹がないかを、公然と見せるためよ。

 娼婦は、肌を隠すわ。前の客といたした後をみせないためと、性病の湿疹を隠すため・・・貴女が、婦人のドレスを着たから、暴力があったのかと親御さんが調べられたのよ」



「でも、結婚したら、露出のないドレスを選べますわ」


「それは、キスマークを、おおっぴらにしないためよ・・・未婚の女性が着たら、殿方と婚前に関係していると疑われるのよ。だから、婚約破棄をされたのじゃなくて・・実際にしてなくても、密通があったと思われても仕方ないのよ」


「そんな古くさい風習、なくすべきだわ!」



「ゲルリンデよ。来なさい」


「はい、殿下!」


「・・・・・・」



 先輩の意見は、杞憂だわ。


 この国では、女官であっても、殿方がドアを開け、先に、女性を通す。

 たとえ。王子であっても、変わらない。

 これぞレディーファーストよ。



 カチャ


「さあ、レディ、お先にどうぞ」


「有難うございます」



 バサ!


 部屋に入った瞬間、上下が逆さになった。


 ドサ!


 私の体が見える。


 あれ、私は、首を斬られたの?



「くせ者だ!他国からの刺客だ!」


 だんだん、視界が暗くなる。

 声も聞きづらくなってきた。

 騎士の足音が聞こえてきた。


 ダダダダダダダダ!


 ボン!


 コロコロコロ~~~


 視界が、転がる。首を蹴っ飛ばされたようだ。



「・・・殿下、討ち取りました。やはり、他国の刺客です」


「そうだな。我国の貴族なら、女性をファーストに部屋に通して、安全確認をするのを知っているハズだが、この女、使えなかったな」


「ですが、殿下の命が助かりました」




 ・・・・・




 カチャ


「さあ、メリッタ、いや、メリよ。この部屋は安全だ。はいりたまえ」


「有難うございます。殿下、いつか、殿方にドアを開けてもらう世界ではなく、女性もドアを開けられる平和な世界を目指したいです・・・」


「そうだな。そのために、陛下と兄上、義姉上の治政の手助けをしよう」


「はい」



 ・・・ゲルリンデお義姉様は、いつからか豹変したわ。レディーファーストが足りないと不満をこぼすようになった。

 レディーファースト、遠い未来の平和の世界なら、可能かも。



 その後、長い期間を過ぎ。ルーシー王国の所作は、女性を大事にする慣習だったことになる。

 名前は、レディーファーストと。







最後までお読み頂き有難うございました。

レディーファーストの起源は諸説ありますが、身も蓋もない説で話を作りました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はちゃめちゃ展開で面白かったです。 かなり笑えました。
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