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2.やさしい院長


「アリア院長……あのこれは違うんです。その…この子……リリが……そう悪さを」

「あら、そうだったの?シスターカレン。でもお外は寒いから中に入りましょう?」


 アリア院長は優しそうな顔で少女リリに笑いかける。


「ほら、こんなに体も冷えてるわ。さあ、中に入ってご飯にしましょう?」

「いや……でもアリア院長!その子は……」


 食い下がるシスターカレンに、アリア院長は初めて困った顔をする。


「シスターカレン?」

「あ、も……申し訳ございません!」


 アリア院長はいつも笑顔だ。だからこそその表情が曇れば周りの人間は焦ってしまう。やさしい院長を困らせてしまったとシスターカレンも慌てたのだろう。

 いつも優しい人にたしなめられてシスターカレンも恥ずかしいのか顔が赤い。

 その様子を見ていたリリに気づくとしっかりと睨みつけている。反省している様子はまったくない。


 リリは心の中で大きくため息を吐くと、院長に促されながら教会に入って行った。


「リリ、許してあげてくれる?シスターカレンもまだシスターになったばかりで慣れていないの。怒られて怖かったでしょうけど、私からもしっかり言っておくわ」

「私は大丈夫です、院長」


 院長は笑いながら、


「やさしいのね、リリ」

「……」


 院長は優しい。だけどリリは何故だか院長に接していると違和感があるのだ。何かは分からないし確信もない、だけど何か引っかかる。

 胸のもやもやを押し込めて院長の話を聞きながら廊下を歩く。


「みんなまだまだ戦争の傷跡が消えないのね。あなたの真っ赤な目が魔物みたいだなんて。みんなも時間が経てば必ずあなたの事を受け入れてくれるわ。だから今はどうか許してあげてね」


 院長は笑っている。

 廊下の突き当たりまでそのようなことを話していたら大きめの扉の前に立った。扉の奥はざわざわと少し騒がしく、たくさんの人がいることが分かる。


「おはようみんな」


 院長が扉を開けるとそこは食堂だ。ざわざわとしていたのに院長の隣にいるリリが目に入ると、わざとらしくシーンと静まり返る。

 孤児院の子供たちが30人ほど。シスターが5人ほどいる。リリを睨みつけるもの、怯えたように大きな子の後ろに隠れるもの、バカにしたように笑い合うもの。リアクションは様々だが、好意的なものは見受けられない。


(別に襲いかかったりしないのに)


 リリはそう思いながら1番端っこの席に座る。年長の子供たちがみんなの席にそれぞれご飯を配っている。固めのパンを1つと具の少ないスープで、この孤児院では大体いつもこの食事だ。

 リリの分を持ってきた最年長の男の子が目の前に来る。

 リリが受け取ろうと手を伸ばすと、リリの手がお皿を受け取る直前に男の子は手を離した。


 ガランガラン


 と大きな音を立てながらお皿が落ち、パンもスープも床にぶちまけられた。

 古い床に落ちたスープはもともとの量も少なかったためか、あっという間に床に吸い込まれたのだった。


昔、初めての一人暮らしで5年ほど暮らした家でのことです。

スープをフローリングにぶちまけ、やべっ拭かなきゃと雑巾を取りに行ってる間に大分染み込んでいました。

そのスープ、ミネストローネだったんです…

みなさんはワックスをかけましょう。

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