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のじゃロリ九尾ツヅリ様の紀行  作者: 終乃スェーシャ(N号)
一旅目:タスマニア〜タスマニアンデビル無しで
3/5

タスマニアへ向かう2 羽田空港(ANA)→シドニー行き.一泊目。朝

 クラスはビジネス。金の無駄な気がしたが、他に座席もなかった。最終目的地はタスマニアだが直行便はないためシドニーを経由し、一泊挟んでから向かうことになる。


「おお、見ろ主。エコノミー三席分でビジネス一席とは贅沢じゃなぁ?」


 座席はそれぞれがL字が交差するのような形となっており、足を伸ばすどころか完全に横になることもできた。前の座席と交互になっているため間違って蹴ってしまうこともない……のだが。


「これじゃあ隣同士になれんのぉ」


 ツヅリ様はいささかご不満であられた。神威そのものであるからシートベルトも関係なしに、座席の背に顎を乗せてこちらへ顔を向ける。


「……ってなにをしてるんじゃあ?」


「見てわかりませんか? もし飛行機が墜落して連絡が途絶えたときのためにツブヤイターにフライトコードを書いてるんですよ。NH08……」


「なんというか、飛行機が怖いって大変じゃの」


 同情の眼差しをよそに離陸。朝には出たが、およそ8時間ほどのフライトで、オーストラリアは時差が約4時間。到着は夜になり、機内食は3回来る。


 これは自論だが、日本人だから魚にしようなんて思うと案外ハズレを引くことが多い。機内食で一番外れないのは鳥だ。そして可能なら照り焼きがいい。


 パンかライスは正直どちらでも良くて、パンのほうが雰囲気はいいが機内食のものはどうもパサパサする。それでも日本の航空会社のものは美味しいことに変わりないのは信じてもいいだろう。


 飛行機やフライト時間にもよるだろうがメニューは一応つねに置いてあり、夜食用のラーメンなんかも頼めるらしい。……今回は頼まなかったので違う機会に試そうと思う。



挿絵(By みてみん)

 朝食だか昼食だか(記憶曖昧)。右からお洒落なイカ飯。覚えてない。大根のなんか(覚えてない)。覚えてない。

 塩はパンのためにあり、つけたほうが喉の詰まりにくい気がする。

挿絵(By みてみん)

 おそらく昼食。見ての通りで味は美味しい。

挿絵(By みてみん)

 夕食。この食事が機内食だと一番良かった。安定の鶏にライス。パンは同じだが、卵も味が染みていて美味しい。



 そんなこんなで夜にシドニーに到着。飛行機内でも金さえ払えばWi-Fiが使えるのが幸いか。(ただし回線は酷く途切れる)。


 長く座っていると腰が痛くなってくるので、ツヅリ様と一緒にしばらく伸びていた。深呼吸をすると、空港の独特な匂いと温暖な雨の香り。


 日本と違いシドニーは真夏で、気温差は軽く20℃以上はあっただろう。暑苦しいからすぐに上着を脱いだ。ツヅリ様は無意味にももこもこの尻尾で自身を仰いで……萎れた。


「……大丈夫ですか?」


「そう見えるかえ…………? わっちは寒暖な地出身なんじゃあ……らっせーらー」


 着陸時に激しい振動で酔ったのもあってか完全にダウンしているようだった。仕方なく、背負って空港を歩いていると通り過ぎる人達の視線が気になってくる。


「……ああ、こっちじゃマスクしてないんですね」


 息苦しいのですぐに外した。タクシー乗り場に出ると、植え込みには無数の椰子が植えられていた。


 夜闇で影しか見えない。写真は撮った方が良かったかもしれないが、真っ暗すぎて何も映らなかったのですぐに諦めてしまった。


 オーストラリアのタクシーは基本的に信じてもいいだろう。治安において問題はなく、観光のみであれば少なくとも差別的な様子も遭遇したことはない。


 シドニー、the Rocksにて。ホテルに着いたころにはツヅリ様も回復していた。豪奢な照明を見上げ、ちょっとだけ狭いエントランスを見渡して微笑む。


「ふむ。いい場所だな」


 したり顔を浮かべる神様。冬服装備はほとんどがパージしてシャツ一枚。むにゃりと誇らしげに胸を張っていた。


「今日はもう寝るだけですけどね」


「ゃん。すけべぇ」


 ケラケラと。ツヅリ様は嘲ると大げさに体をくねらせる。


「そういう意味じゃないんですけどね」


 部屋にはでかいベッドが1つ。風呂とトイレは同じ浴室。Wi-Fiは完備しており、QRコードを読み取るだけでルームサービスを頼めるらしい。


 気づくや否や、ツヅリ様はポチポチとサラミの盛り合わせとハラペーニョ、赤ワインを頼まれました。私はお酒を飲まないのでジンジャーエールです。


 とりあえずレモネードかジンジャーエールは外れにくいから。


「ふふん、これで幾らかかった?」


 ソファにぐでりと伸びてしまうとぴょこぴょこと白銀の耳を揺らし尋ねた。


「はは、見たくないからカード払いなんですよ? ツヅリ様」


 適当な答えを返す。支出で言えばビジネスクラスの座席がトップだろう。


「ほょっかー」


 死ぬほど興味なさげな返答。サラミを食みながらひっくり返ってだらけ始める。ぐびぐびと神威の欠片もなくワインを啜り飲んでいく。


「はぁ……。他の神様にとやかく言われないんですか?」


「みんなこんなもんなんだなそれが」


 脱力すると肩に顎を乗せてくる。流されるように背を摩っていると、そのうちすぅ、すぅと小さな寝息が部屋に響いた。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 一泊目を過ごした。


 スマホのアラームに起こされる午前七時。日本だとまだ深夜だが、すっかり陽光も差し込めている。


 起き上がると、一つしかないベッドのほとんどがツヅリ様に独占されていた。白い掛け布団も、ベッドスロー(掛け布団の上にある細長い硬めの布。ひんやりする)の全てがツヅリ様ゾーンに引っ張られている。


 代わりにこれがあればいいだろうとばかりに無数の尻尾が私の身体を覆っていました。……暑苦しいぐらい。


 すこしばかり尻尾を吸うと、華奢な肩が寝たままビクンと跳ねた。


 服を着直す前に先にシャワーを浴びに行って戻ると、ツヅリ様もいつの間にか起きていて、乱れた服もそのままに窓に張り付いていた。


 朝になると大きな窓からの景色が見えてくる。夜と違い、写真を撮っても自分が窓に映るなんてこともないだろう。


 見下ろせるのは日本よりもずっと広い車線の高速道路。点々と茂るユーカリ。海岸の周辺は高層ビルが並んでいる一方で、どこか牧羊的な雰囲気もある。シドニーとしての都会と、オーストラリアという国柄の二面性が窓一枚に収まっているように思えてくる。



挿絵(By みてみん)



「ほら、とっとと朝食を食べに行くから服を着てください」


「おお~! そうだな? なんだかわっちに不敬な口ぶりだがまぁ許そう。なんたって朝食の場所、25階じゃろう?」


 バカと神様は高いところが好きだ。……こんなことを書いたら怒られるだろうか。


挿絵(By みてみん)


 朝食はメニューが数種類あった。


 パンとジュース類は各自が勝手に取れる。オーストラリアということもあって、ベジマイトがケチャップやマスタード、ジャムと並んで存在を主張していたので思わず手に取った。


 メニューは卵料理にソーセージとベーコンを足すかどうか、のような感じだ。自分はオムレツを、ツヅリ様はスクランブルエッグを頼んだ。


 頼んだのは自分だが、朝からソーセージにベーコン。炒めたマッシュルームにオムレツといささか重い。


挿絵(By みてみん)

 朝食。日本人には重いが、朝食らしさがとても良い。……朝食だからか。


 その後聞かれる珈琲か紅茶か。英語がダメでもこの辺は最低限分かれば案外話は通じるだろうけど、空港職員と比べると発声が早いのでツヅリ様の頭上にハテナマークが浮かんでいた。


 ツヅリ様は食事になると蟹料理以外でも沈黙して頬張るタイプなので静かになる。永遠の十代とも言うべき胃袋はそうこうしているうちにぺろりと平らげて、クロワッサンを追加で取りに行くほどだった。


 自分は満腹感と戦いながらベジマイトをソーセージに付けて食べた。


 よくネットで調べると世界一まずいジャムなどとレッテルを貼られているが。勘違いしてはいけない。


 ベジマイトはジャムではない。


 そもそも砂糖漬けではないのだから、ジャムと思って食べれば舌がバグってまずいと感じ取るのも無理はないだろう。


 味は塩っ辛く、口に含むと存外に旨味がある。しょっぱさゆえに塩辛に例えられるが、磯っぽさはない。


 パンよりご飯のほうが合うのではないかと考えているが試したことはない。独特の臭いはあるがチーズには似ていない。知らない薬品のような香り。


 なので味として総合すると知らない薬品の香りがするしょっぱ旨いものである。……美味しいのか不安になるが。もし機会があれば試してみて欲しい。


「ん、満足じゃ。そろそろ戻ろうぞ?」


 ツヅリ様はぺろりと舌を巻いて、牙を見せて笑って見せた。これからシドニー空港に戻ってタスマニアのホバート空港へと向かう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 写真が付くととても臨場感がありますね。 なんだか旅行に行きたくなります。 無理のない範囲で頑張ってください!
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