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大日本帝国のIFと架空戦記創作論  作者: 三笠 陣@第5回一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞


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22 漸減邀撃作戦の可能性(3)

 「昭和十五年度帝国海軍作戦計画」が裁可されたのは、1939年12月14日である。

 時期的に、第二次欧州戦争(当時はまだ「世界大戦」ではない)が勃発した直後であり、また海軍自体も陸軍の動員令に相当する出師準備を行っていない。出師準備が行われるのは、1940年11月15日になってからである。

 しかも北部仏印進駐も行っておらず、1941年12月段階と状況がだいぶ異なっているので、どこまで参考とすべきかは疑問が残る。


 昭和十五年度帝国海軍作戦計画では、第五編が「対支作戦中米国、露国、英国及仏国ノ内二国乃至四国ト開戦スル場合ノ作戦」と題され、それぞれの作戦計画が述べられている。

 そこでは「開戦初頭速ニ在東洋ノ敵艦隊ヲ撃滅シテ東洋海面ヲ制圧スルト共ニ陸軍ト協同シテ呂宋島及其ノ附近諸要地竝ニ香港ヲ攻略シ仏領印度支那北部ノ要地ヲ又為シ得ル限リ仏領印度支那南部ノ要地ヲ占領ス」と記されている。また、やはり開戦劈頭のグアム島攻略も組み込まれている。

 ここでの米太平洋艦隊に対する対応としては「敵艦隊ノ主力東洋海面ニ進出スルヲ待チ之ヲ邀撃撃滅ス。此ノ場合努メテ米英両国ノ艦隊ヲ個々ニ撃滅ス」という方針が述べられている。


 主要な兵力配置は、次の通りである。


南支およびルソン島方面……第二、第三艦隊

香港および南支海面……第二遣支艦隊

南洋群島……第四艦隊

ハワイおよび米西海岸……第六艦隊

本土東方海域……第五艦隊

本土近海……連合艦隊主力


 ただし、場合によっては第三、第四艦隊は連合艦隊主力の作戦に呼応した行動を取ることが定められている。


 以上、二つの作戦計画を見ていくと、やはり米太平洋艦隊の迎撃に用いることが出来る兵力は、南方作戦に投入する兵力を除いたものとならざるを得ない。

 すなわち、第一艦隊、第四艦隊、第五艦隊、第六艦隊、第一航空艦隊である。

 昭和十五年度の方ではウェーク島攻略はないため、第四艦隊はグアム島攻略を完了次第、連合艦隊主力に合流出来るはずである。史実でもグアム島攻略は2日で完了しているため、短期間で合流が可能となるであろう。

 なお、連合艦隊直属の潜水艦戦隊である第四、第五潜水戦隊は南遣艦隊に取られてしまっているので、こちらは合流が困難となると考えられる。

 その他、細かな駆逐艦兵力については南方攻略部隊には微調整してもらい、一部を本土近海に留めるという想定は可能だろう。


 そこから米太平洋艦隊の迎撃に備えられる主要な兵力を書き出していくと、恐らく次のようなものになる。


  第一艦隊  司令長官:山本五十六大将(正確には高須四郎中将)

第一戦隊【戦艦】〈長門〉〈陸奥〉

第二戦隊【戦艦】〈伊勢〉〈日向〉〈扶桑〉〈山城〉

第三航空戦隊【空母】〈瑞鳳〉〈鳳翔〉【駆逐艦】〈三日月〉〈夕風〉

第六戦隊【重巡】〈青葉〉〈衣笠〉〈古鷹〉〈加古〉

第九戦隊【軽巡】〈大井〉〈北上〉

第一水雷戦隊【軽巡】〈阿武隈〉

 第六駆逐隊【駆逐艦】〈雷〉〈電〉〈響〉〈暁〉

 第十七駆逐隊【駆逐艦】〈浦風〉〈磯風〉〈谷風〉〈浜風〉

 第二十一駆逐隊【駆逐艦】〈初春〉〈子日〉〈初霜〉〈若葉〉

 第二十七駆逐隊【駆逐艦】〈有明〉〈夕暮〉〈白露〉〈時雨〉


  第四艦隊  司令長官:井上成美中将

司令部直率【軽巡】〈鹿島〉

第十八戦隊【軽巡】〈天龍〉〈龍田〉

第十九戦隊【敷設艦】〈沖島〉〈常磐〉〈津軽〉

第六水雷戦隊【軽巡】〈夕張〉

 第二十九駆逐隊【駆逐艦】〈追風〉〈疾風〉〈夕凪〉〈朝凪〉

 第三十駆逐隊【駆逐艦】〈睦月〉〈如月〉〈弥生〉〈望月〉

第七潜水戦隊【潜水母艦】〈迅鯨〉【潜水艦】呂号潜水艦9隻


  第六艦隊  司令長官:清水光義中将

司令部直率【軽巡】〈香取〉

第一潜水戦隊【特設潜水母艦】〈靖国丸〉【潜水艦】伊号潜水艦12隻

第二潜水戦隊【特設潜水母艦】〈さんとす丸〉【潜水艦】伊号潜水艦8隻

第三潜水戦隊【潜水母艦】〈大鯨〉【潜水艦】伊号潜水艦9隻


  第一航空艦隊  司令長官:南雲忠一中将

第一航空戦隊【空母】〈赤城〉〈加賀〉

 第七駆逐隊【駆逐艦】〈曙〉〈潮〉漣〉

第二航空戦隊【空母】〈蒼龍〉〈飛龍〉

 第二十三駆逐隊【駆逐艦】〈菊月〉〈夕月〉〈卯月〉

第五航空戦隊【空母】〈翔鶴〉〈瑞鶴〉

 附属【駆逐艦】〈朧〉〈秋雲〉

第三戦隊【戦艦】〈比叡〉〈霧島〉

第八戦隊【重巡】〈利根〉〈筑摩〉

第二十一戦隊【軽巡】〈多摩〉〈木曾〉

第十八駆逐隊【駆逐艦】〈霞〉〈霰〉〈陽炎〉〈不知火〉


 開戦時の第五艦隊はまともな戦力が軽巡2隻しかいないので、いっそ一航艦の護衛に加えてしまおうということで、このような形とした。


 こうして見てみると、重巡部隊と水雷戦隊の兵力が圧倒的に不足していることが判る。

 基地航空隊である第十一航空艦隊もフィリピン攻略で引き抜かれてしまっている以上、敵艦隊の戦力を漸減するための鍵は、一航艦の6空母の活躍にかかっていると言っても過言ではない。

 史実の一航艦の活躍を見れば、これでマリアナ沖で米艦隊を迎撃すれば、少なくとも1944年のマリアナ沖海戦よりもよほど戦えると思えるが、当然ながらそれは史実を知る者の考え方である。


 当時の軍令部や連合艦隊司令部としては、これでは漸減邀撃作戦は成り立たないと見て、山本五十六の提唱する真珠湾攻撃を認めてしまったのも、ある程度は頷ける戦力であった。

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