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大日本帝国のIFと架空戦記創作論  作者: 三笠 陣@第5回一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞


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11 インド洋の旭日旗(6)

 史実ではドーリットル空襲によって、それまで軍令部・連合艦隊司令部間で次期作戦について対立していたのがミッドウェー攻略作戦へとひとまず注力する結果に繋がってしまった。

 山本五十六が唱える米空母撃滅という目的だけでなく、本土を守るために索敵線を大きく東に広げる必要性が生じたからである。


 たとえ日本の戦争指導方針がイギリス打倒を優先するものであったとしても、やはり太平洋をがら空きにするわけにはいかない。

 ドーリットル空襲は、それを再認識させる事件になるだろう。


 セイロン沖海戦直後には陸海軍によるセイロン島攻略作戦、インド進攻作戦が検討されることになるだろうが、英東洋艦隊を撃滅したこともあり、連合艦隊の全力を投入しての作戦とはならない可能性が高い。

 その分、太平洋方面に艦隊兵力を回すことになる。

 あるいは、アメリカによる帝都空襲をインド方面から日本の目を背けさせるための陽動と考えるかもしれない。

 それでもはやり、太平洋をがら空きにすることはないだろう。


 問題は、7月から9月の間でセイロン島攻略作戦を行う予定でありながら、方角的に真反対のミッドウェー攻略を行うか、ということである。

 まず陸軍は兵力を出そうとはしないであろうし、海軍単独での攻略を行おうにも、すでにガダルカナル島に飛行場を設営して米豪分断を図ろうと準備を進めている以上、海軍単独でのミッドウェー攻略も陸上兵力、設営能力の余裕的にあり得ないだろう。

 ただし一方で、英東洋艦隊を撃滅したこともあり、山本五十六あたりはここで米空母も叩いておこうという欲を出し始めると思われる。軍令部あたりも、そう考えるかもしれない。

 英東洋艦隊の撃滅により、日本海軍は史実以上に慢心しているだろうから。


 3月にラエ・サラモアが米空母の襲撃を受けた後は、5月4日にツラギが空襲されるなど、南太平洋方面で米空母の活動が活発になっている。

 内地で一航艦の整備と再訓練を続けながら、それが終われば一航艦をトラック泊地あたりに前進させ、ソロモン・ニューギニア方面に米空母が現れるのを待ち構えることになるだろう。

 4月時点で日本側は、太平洋に健在なアメリカ空母はサラトガ、エンタープライズ、ホーネット、ワスプの4隻、レキシントンは当初は撃沈したと判定していたが、この頃にはすでに西海岸で修理中との認識に至るようになっていた。

 すなわち、太平洋上には依然として5隻の米空母が存在していると認識していたことになる。

 実際には修理中なのはレキシントンではなくサラトガで、ワスプは大西洋におり、太平洋にいるのはヨークタウンであったが、日本海軍の情勢判断はそれほど間違っていない。

 そうなると、5隻の米空母に対抗するために一航艦の6隻は太平洋から動かせない。


 一方、インド洋から完全に兵力を引き抜くわけにもいかない日本海軍としては、この海域にどの程度の兵力を配置しておくのかも問題となる。

 史実ではセイロン沖海戦後、特設巡洋艦愛国丸、報告丸と伊号潜水艦5隻がインド洋での通商破壊作戦のために配置されているが、イギリス打倒を優先する戦争指導方針の場合は、もっと大規模な兵力が置かれることになるだろう。

 一航艦および馬来部隊は整備のために内地に引き上げることになるが、逆に史実ではMO作戦に参加した第六戦隊の青葉、衣笠、古鷹、加古を中心とした兵力がインド洋に派遣されることになるかもしれない。重巡足柄あたりも加わって、どこかの段階でインド洋を担当する第七艦隊が誕生する可能性もある。

 空母の代わりに水上機母艦として第十一航空戦隊の千歳、瑞穂がインド洋に派遣されることになれば、史実と違って瑞穂が米潜ドラムと遭遇する危険性を低くすることが出来る。

 その後、隼鷹の竣工と龍驤の整備が終われば、この2隻も四航戦としてインド洋に進出してくるだろう。


 むしろ、連合軍商船隊にとっては積極果敢な角田覚治提督に率いられた四航戦の方が、南雲艦隊よりも恐ろしい敵となるかもしれない。

 瑞鳳、祥鳳もインド洋部隊に加われば、連合軍のインド洋航路はほとんど途絶するだろう。

 ただ、瑞鳳と祥鳳はソロモン、ニューギニア方面での航空機輸送などの必要もあり、太平洋とインド洋、どちらの戦線にも配置される可能性があるので判断が難しい。

 妥当なところとしては、片方を四航戦に加えて、残り1隻を航空機輸送に充てるといったところだろうか。

 仮にインド洋の空母戦力が隼鷹、龍驤、瑞鳳の3隻であったとしても、連合国側にとっては十分な悪夢である。


 恐らくはこの3空母に加えて、1942年4月10日編成の南西方面艦隊(司令長官は高橋伊望中将)を基幹とした「印度部隊」によって、セイロン島攻略作戦は実施されることになるだろう。

 史実でもB作戦に組み込まれた三水戦も、作戦に加わるものと思われる。

 また状況次第では、史実渾作戦のように上陸作戦の支援のために臨時で扶桑型あたりが組み込まれる可能性もあるだろう。


  印度部隊  司令長官:高橋伊望中将

 攻略部隊

司令部直率【重巡】〈足柄〉【敷設艦】〈厳島〉

第六戦隊【重巡】〈青葉〉〈衣笠〉〈古鷹〉〈加古〉

第四航空戦隊【空母】〈龍驤〉〈隼鷹〉〈瑞鳳〉

第十六戦隊【軽巡】〈名取〉〈鬼怒〉〈五十鈴〉

第三水雷戦隊【軽巡】〈川内〉

 第十一駆逐隊【駆逐艦】〈吹雪〉〈白雪〉〈初雪〉〈叢雲〉

 第十九駆逐隊【駆逐艦】〈磯波〉〈浦波〉〈敷波〉〈綾波〉

 第二十駆逐隊【駆逐艦】〈天霧〉〈朝霧〉〈夕霧〉〈白雲〉


 間接護衛隊

第二戦隊第二小隊【戦艦】〈扶桑〉〈山城〉

第十一航空戦隊【水上機母艦】〈千歳〉〈瑞穂〉【駆逐艦】〈早潮〉

第七駆逐隊【駆逐艦】〈曙〉〈潮〉〈朧〉〈漣〉


 このあたりの戦力で、1942年7月から9月の間、日本はセイロン攻略に乗り出すのではないかと思われる。

 史実北アフリカ戦線では6月21日にトブルクが陥落しており、これを受けて英首相チャーチルはルーズベルトに対して戦車の支援を要求、これがエル・アラメインでドイツ側が敗北する原因となるわけであるが、セイロン島攻略は時期的にこのM4中戦車を積んだ輸送船団を阻止することになるだろう。

 しかも4月段階で連合軍のインド洋航路にある程度、打撃を与えているわけであるから、ロンメル将軍の攻勢、そして独ソ戦のブラウ作戦は、史実よりも英ソ両軍が弱体化した状況下で始められる可能性がある。


 残りの問題は、南太平洋戦線である。

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[気になる点] ミッドウェー海戦で負けないという前提に? 結果はミッドウェー海戦で負けたからすべてご破算。
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