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60. 未知との遭遇

「え? あれぶつからない?」


 玲司は冷汗をかきながらヒレの動きを予想してみるが、このままだと魔王城直撃である。


「それが、金星人(ヴィーナシアン)の神判なのかも……」


 ミリエルは青い顔をしてすっかりクジラに圧倒されてしまい、覇気がない。


「ちょ、ちょっと! しっかりしてよ! 地球を元に戻してもらわないと困るよ」


「そうは言うけど、あたしらに何ができるのだ?」


 ミリエルはちょっと悔しそうに玲司を見る。目に浮かぶ涙に玲司は言葉を失う。こんなに弱気なミリエルは見たことが無かった。


 玲司はキュッと唇をかんだ。


 このままだと地球は、日本は、亡くなった八十億人は戻らない。電子のチリとなってこの世から忘れさられて消えて行ってしまう。そんなことは絶対に避けないとならない。


「諦めちゃダメ! 諦めたらそこで試合終了なの!」


「うーん、しかしなのだ……」


 ミリエルは口をとがらせ、うつむく。


「『できる、やれる、上手くいく!』これ言霊だからね。何とかする道を考えよう」


 玲司は自分を鼓舞するように言った。


 しかし、できる事なんていくら考えても全く思いつかなかった。


「うーん、あのヒレぶった斬る?」


 シアンはロンギヌスの槍をブンと振ると、穂先の炎をゴォォォと吹かせた。


「え!? 斬れるの?」


 ミリエルは驚いて聞いたが、シアンは、


「わかんない。やってみる? きゃははは!」


 と、楽しそうに笑う。


 玲司とミリエルは顔を見合わせて肩をすくめた。


 そうこうしているうちにもヒレは迫る。厚さが三キロメートルはあろうかという巨大なヒレは、全長数百メートルしかない魔王城全体からしてみたら圧倒的なスケールで、ぶつかったら粉々にされてしまうだろう。


「うわぁ! 下りてくるのだぁ」


 ミゥはおびえ、玲司の腕にしがみつく。玲司はそんなミゥの頭をそっとなで、


「ギリ、抜けられないかな?」


 と、シアンに聞く。


 シアンは指でヒレの動きを計測し、


「うーん、当たるのは城の上部だけっぽいゾ。みんな、床に伏せて。あと三十秒!」


 そう言って床を指した。


 三人は渋い顔をしながら床に伏せる。


 窓の向こうには金属光沢を鋭く放つヒレが、煌びやかな金星を映し出しながらゆったりと降りてくるのが見える。


「おい! 私はどうなんだよ!」


 縛られて空中に浮かばせられたままの百目鬼が叫んでいるが、誰も相手にしない。全て自業自得なのだ。


「あと十秒だゾ!」


 そう言ってシアンは仁王立ちし、ヒレに備える。


 ミゥは目をギュッとつぶって何かぶつぶつ唱えている。玲司はそんなミゥに、


「大丈夫だよ、これ言霊だからね」


 そう言って優しく頭をなでた。


 ミゥは今にも泣きそうな顔で玲司を見ると、ギュッと玲司に抱き着き、玲司の胸に顔をうずめる。


 ツンツンしてたミゥも、やはりか弱い少女なのだ。玲司はミゥをやさしく抱きしめ、運命の時を待つ。


「五、四、三、二……」


 カウントダウンが続き、緊張感が最高潮に高まる。


 直後、ズン! という轟音と共に大地震のように城は揺れ、部屋の上半分が吹き飛んだ。


「キャ――――!」「うはぁ!」「いやぁぁぁ!」「きゃははは!」


 上層階はヒレの直撃を受け、粉々になりながら吹き飛ばされ、壁や柱が崩落してくる。


 シアンは楽しそうに、落ちてくる瓦礫を吹き飛ばし、切り裂き、獅子奮迅の活躍でみんなを守ったのだった。



       ◇



『な、何とかなったかな?』


 嵐が過ぎ去り、玲司が顔を上げるとそこには満天の星々が見渡せた。もう壁も天井も無かったのだ。


 横にはまだ巨大なクジラの巨体が高速で通過している。ただ、進路は変えたみたいで徐々に遠ざかっている。


 城は粉々にされ、空気も失ったが玲司たちはシールドを纏っていて何とか助かっていた。


『うーん、いや、これからが本番だゾ』


 シアンは通り過ぎていくヒレの方を眺めながら険しい表情で言った。



        ◇



 ヒレの向こう側に閃光が走り、そこから真紅の光が輝きながら城へと飛んでくる。一行は固唾を飲んでその光跡を追った。


 輝きはやがて城までやってくると瓦礫だらけの壇上で止まり、しばらくゆっくりと明滅した後、閃光を放ち、その姿を露わにした。


 それは三メートルはあろうかという巨大な水晶のタブレット(石碑)だった。長細い五角形で、下へ行くほど細く、一番下はとがっている。水晶の中には黄金の板が溶け込んでおり、表面に浮き彫りされた幾何学模様のような碑文が黄金の板のラインを屈折させていた。それはまるで現代アートのような美しさをたたえている。


 そして、紫水晶の球がほのかに輝きながら、いくつかクルクルと石碑の周りを回っており、近づきがたい印象を受ける。


 こ、これは……。


 玲司はこの得体のしれない未知との遭遇にゴクリと生唾を飲んだ。


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