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55. ミゥの名残

 すると、シアンは首を傾げ、


「ご主人様、そっち居ると……死ぬゾ?」


 と、右手をすっと差し出した。その真紅の美しい目には愛しい人を見るような切なさが浮かんでいる。


 玲司は首を振り、シアンをじっと見据えて、


「いいかシアン、『損得勘定ばっかりしてたら人生腐る』んだよ。例え死のうが、腐った人生に価値などない!」


 と、こぶしを握って見せつけた。


 パチ、パチ、パチ!


「はっはっは! 見事な演説だよ玲司君」


 百目鬼は玉座のひじ当てにもたれかかったまま、気だるげに拍手をしながら言った。


「降伏を断ったらどうするつもりだ?」


 玲司は百目鬼に聞く。


「まぁ、死んでもらうしかないね」


「ザリォか?」


 ミリエルは鋭い目で百目鬼に聞いた。


「そうだ。今さら隠しても仕方ない。最後にもう一回だけ聞いてやる。降伏するか?」


 百目鬼はあごの無精ひげを指先でなで、ニヤニヤしながら聞いてくる。


「バーカ!」


 ミリエルはそう言うと真紅に輝く弾を無数浮かべ、百目鬼に向けて撃つ。同時にミゥも手近なステンドグラスの窓に紫色の特殊弾を放った。


 百目鬼に撃った弾は玉座に近づいたあたりでシールドに阻まれ、爆発し、煙幕となり、辺りを白く煙に沈める。


 ステンドグラスではミゥの撃った弾が派手に爆発したが、なぜか傷一つつかず、脱出口は作れなかった。


 玲司はドアまでダッシュして体当たりをしたが……、ガン! と跳ね返されて無様に転がってしまう。


 そう、出口は確保できなかったのだ。


「なんだよぉ!? ロックされない仕掛けをしといたのに!」


 玲司が悲痛な声で叫ぶ。


 二人もドアまで駆け寄り、必死に開けようとあがく。


「ちょっとこれ、なんなのだ!?」「今一生懸命解除してる! 待つのだ!」


 ミリエルは脂汗をかきながら目をつぶって、ドアのシールドの解除にかけた。


 すると煙幕が薄くなっていく向こうで百目鬼が笑い、


「はっはっは! 君らの浅知恵などお見通しだよ。そのシールドは君らには破れん。さて、お別れだ。シアン……、()れ」


 そう言ってアゴでシアンに指示した。


 シアンは、


「きゃははは!」


 と、楽しそうに笑うと青く輝く弾を無数、空中にバラバラと浮かべていく。


「止めろぉ!」


 玲司は必死に作業してるミリエルとミゥをかばい、大の字になってシアンを見据えた。


「ご主人様、当たるよ? どいて」


 シアンは今まさに発射の体制で、真紅のきれいな瞳をギラリと輝かせながら玲司をにらむ。


「シアン! 目を覚ませ! こっちに戻ってこい!」


 玲司は必死に説得をする。


 ミゥは玲司の服のすそをつかみ、ブルブル震えている。


「残念でした! チェックメイト♡ きゃははは!」


 シアンが腕をバッと振り下ろした瞬間、ミリエルの足元に隠されていた魔法陣が紫色に強烈に輝いた。


「きゃぁ!」「いやぁぁぁ!」


 叫び声と同時に魔法陣から立ち上がった漆黒の闇はあっさりとミリエルの身体を飲みこむ。後には漆黒の繭だけが残り、表面のあちこちでパリパリとスパークが走っていた。


「うわぁぁ! ミリエル!」


 玲司は闇に飲みこまれてしまったミリエルを見て呆然とする。自分たちの地球の管理者、大いなる理解者の消滅は八十億人の存亡にかかわる事態なのだ。


 あわわわ……。


 ミゥは目の前で消えていった自分の本体にがく然とし、ユラリと揺れ、倒れていく。


「ミゥ! しっかり!」


 玲司はすかさずミゥの柔らかい身体を支えたが、見ると徐々に透け始めている。


「え? こ、これは……?」


 ミゥは涙を浮かべながら玲司に抱き着いた。


「ミリエルが死んだらあたしも終わり……、なのだ。冷たくして……ごめん」


「おい! ミゥ! ミゥ――――!」


 玲司はどんどん軽くなっていくミゥをギュッと抱きしめる。


「あなたに会えて、良かった……」


 か細い声を残し、ミゥはたくさんの光の微粒子を辺りに振りまきながらこの世から消えていった。


「うぉぉぉぉ! ミゥ――――!」


 玲司は膝からガックリと崩れ落ち、頭を抱えた。


 ツンツンしてるけど憎めない可愛くて生意気な女の子、ミゥが殺された。次々と死んでいく仲間。


 玲司はうるんでにじむ視界の中で、チラチラと輝くミゥの名残の微粒子を眺めながらこの世の理不尽を恨んだ。


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