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53. 魔王城で待つ

「はいはい、じゃぁ乾杯なのだ!」「カンパーイ!」「かんぱーい!」「……」


 玲司は渋い顔でコーヒーのマグカップをワイングラスたちにぶつけた。


「でさー、シアンちゃん、ロンギヌスの槍ってどうやって出したのだ?」


「そうそう、それ! あれって金星の物でしょ? どうやって出したか不思議なのだ」


 ミリエルとミゥは興味津々である。


「ん? これ? 普通に金星のサーバーにあったゾ」


 そう言いながらシアンは、空間の裂け目からするりとロンギヌスの槍を取り出した。焼け焦げた自然の枝は微妙にうねりながら持ちやすそうな柄となり、穂は赤く炎のように揺れ動いている。


「金星のサーバー!?」


 ミリエルは驚く。海王星は実は金星にあるサーバー群で作られた世界なのだ。金星の衛星軌道上には無数のサーバーが運用されており、その中の一群が自分たちの海王星を合成している。しかし、地球人が海王星にアクセスするのが簡単じゃないように、海王星のミリエルたちにとっても金星はとても行くことができない神域だった。


「どうやって行ったのだ?」


 ミゥは身を乗り出して聞く。


「バグのないシステムはないゾ。システムの隙がありそうなところをチクチクずっと叩いてたらある日通れたゾ」


「すごいすごい! シアンちゃん、すごーい! もう一度カンパーイ!」


「カンパーイ!」「カンパーイ!」「かんぱい」


 女性陣は調子が上がって早速二本目のボトルを開けた。



 結局その晩は遅くまでどんちゃん騒ぎとなり、今後の方針の議論なんて全然されなかった。とはいえ、それほどまでにミリエルたちにとっては辛い時間だったのだろうと思うと、玲司は突っ込めなかった。


 しばらく、酔っぱらいのバカ話を聞いていたが、素面(しらふ)ではいつまでも付き合い切れない。玲司は早めに切り上げ、部屋の隅で勝手にベッドを出して転がる。そして、三人の(かしま)しい笑い声を子守歌に玲司は眠りに落ちていった。


 そして、翌朝――――。


 シアンがいなくなっていた。



       ◇



 シアンが行方不明になるなんてことは初めてで、ミリエルたちもあわてて探し回った。


 八方手を尽くしたが見つからず、諦めかけていたところに一通のメッセージが届く。そこにはただ、


『魔王城に来て』


 としか書かれていなかった。



        ◇



「うはぁ! これが魔王城! スゲー!」


 玲司は小高い丘に立ち、上空にゆったりとたたずむ天空の城『魔王城』を見上げて叫んだ。


 ゴツゴツとした岩肌を晒す空飛ぶ島の上に建てられた白亜の城。大理をふんだんに使った見事なつくりは映像で見た時よりもはるかに荘厳で、心に迫る美しさを放っている。玲司はため息を漏らし、しばらくその神々しい威容に見とれていた。


「でも、本当にこんなところにいるのかなぁ……」


 ミゥは腕を組み、首をかしげながらいぶかしげにつぶやく。


 確かに、シアンがこんなところにいきなりやってきて、三人を呼び出す理由が全く分からない。


 何かのサプライズを企んでいるというのだったら分からなくもないが、百目鬼やザリォの計略だったとしたら待っているのは死……。


 玲司はぶるっと身震いをするとミリエルに聞いた。


「ワナだったらどうするの?」


 ミリエルは魔王城を険しい目で眺めながら、


「そん時はそん時なのだ。どっちみちシアンちゃんがいなかったら、あたしらは百目鬼に勝てないのだ」


 と、腹をくくったように言い切った。


 玲司はふぅ、と大きくため息をつく。


 横ではミゥが画面を展開し、魔王城の内部を必死に解析している。そして、


「今のところは……、特に怪しい気配はないのだ。突入する?」


 と、チラッとミリエルを見た。


 ミリエルは玲司と目を合わせると、ゆっくりとうなずいた。


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