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52. 禁制の品

「ロ、ロンギヌスだと!」


 ゾルタンは目を丸くして驚き、固まる。


 シアンはロンギヌスの槍を手にすると、ニコッとほほ笑んだ。そのほほ笑みには人知を超えた凄みがにじみ、同時にこの世のものとは思えない美しさをたたえていた。


 槍の石突や口金には見事な浮彫のされた金の金具が付き、穂先は燃えている炎のように赤く光り輝きながら揺れている。これがゾルタンに勝つための武器らしい。そして、この星が滅ぶ原因になるかもしれないという恐るべき伝承の存在。


 シアンはロンギヌスの槍を丁寧に眺め、満足そうに金の浮彫をそっとなでる。


 そしてゾルタンを見下ろし、ニヤッと笑うとブルンと振り回した。


 すると炎状の穂先からは鮮烈な赤い光線がほとばしり、暗雲は裂けて霧消し、モスグリーンのシールドはあっさり真っ二つに両断された。


「イカン! 百目鬼、撤退だ!」


 ゾルタンがそう叫んだ時、シアンはゾルタンの真ん前にワープして楽しそうに笑っていた。そして繰り出されるロンギヌスの槍。


 くっ!


 ゾルタンはワープのコマンドを発行する。ギリギリ間に合ったはずだったが、なぜかゾルタンはワープできなかった。


 炎の穂先がゾルタンの心臓を無慈悲にも貫く。


「ど、百目鬼、貴様! ぐぁぁぁぁ!」


 なんと、百目鬼はゾルタンの腕をガシッと握り、ワープコマンドの発行をキャンセルしていたのだ。


 そして、ニヤッと笑うと、自分は直後にワープして消えていった。


 ゾルタンは断末魔の悲鳴を残し、湧きだすブロックノイズにうもれ、やがて消えていった。



          ◇



「あれ? 百目鬼が見つからないゾ」


 シアンが小首をかしげている。どうやら今までの追跡方法が百目鬼には効かなかったらしい。


「あー! 倒す順番間違えたゾ!」


 そう言ってガックリとうなだれた。


 ミゥはそんなシアンにいきなり飛びついた。


「シアンちゃ――――ん!」


「おぉ、ミゥどうした?」


 ミゥは抱き着いたまま小さく震えている。


 シアンはニコッと笑うと、ポンポンとミゥの背中をやさしく叩いた。


 さわやかな風がビュゥと吹いて二人の髪をやさしく揺らす。


 金星が輝く、群青色への美しいグラデーションの夕暮れ空をバックに、二人の美少女が抱き合っている。玲司はそんな尊いシーンを見ながら、『この世界を絶対に守りたいな』と思い、ほほを緩ませた。



        ◇



「はぁぁ、やっぱりここが落ち着くのだ」


 ミゥは窓の外にドーンと広がる海王星の青い水平線を見ながら嬉しそうに言う。街を潰されてしまったEverza(エベルツァ)の時間を止め、一行は海王星のステーションに戻ってきていたのだ。


「おつかれちゃん」


 ミリエルはゾルタンを倒せた一行をねぎらうように丁寧にコーヒーを入れた。


「そうだ! ミリエルは事前にシアンちゃんのことを教えておいてくれないと困るのだ!」


「あー、ごめんね。でも、ミゥのことはあたしが一番分かってる。こうした方が一番成功するのだ」


 それを聞いたミゥはミリエルをジト目でにらみ、口をとがらせる。そして、コーヒーカップをひったくると、


「わかるけど! 文句ぐらい言わせるのだ!」


 そう言って、そっぽを向いてコーヒーをすすった。


「でもまだまだ解決してないよね。百目鬼も残ってるし、ザリォとやらも嫌な感じ」


 玲司もコーヒーカップを取りながら言った。


「一難去ってまた一難。困ったものなのだ。ふぅ」


 ミリエルは首を振った。


「ロンギヌスの槍があれば有利じゃないの?」


 玲司はコーヒーをすすり、コナコーヒーの芳醇なフレーバーにうっとりしながら聞いた。


「それがねぇ……。あの槍は金星の物なのよ。我々が勝手に使ったのがバレると処分間違いなしなのだ」


 ミリエルはガックリとうなだれる。


「えっ!? そんなにヤバいもの?」


 玲司はシアンに聞くと、


「だから『この星がどうなるか分からない』って言ったんだゾ きゃははは!」


 と、嬉しそうに笑った。


 玲司は渋い顔をしてミリエルやミゥと顔を見合わせた。まさかこの言葉の意味が『規則上どうなるか分からない』という意味だったとは想定外だったのだ。


 ミリエルはふぅとため息をつくと、


「コーヒー飲んでる場合じゃないわね。飲むのだ!」


 そう言ってワインボトルをガン! とテーブルに置いた。


 ミリエルの顔にはいたずらっ子の笑みが浮かぶ。


「キタ――――ッ!」「いぇい!」


 シアンとミゥは小躍りする。


「あ、いや、まず、方針を決めてから……」


 玲司は正論を言ったが、飲むモードに入ってしまった人たちは止められない。


「こういうのは飲みながらの方がいいのだ。君も飲む?」


 ミリエルは紫色の瞳をキラリと光らせ、ワイングラスを差し出す。


 玲司は渋い顔をして首を振り、コーヒーをゴクッと飲んだ。


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