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44. ヴィーナシアン

 あっという間に丘の向こうへと消えていってしまったシアンの方をぼんやりと眺めながら、玲司は聞いた。


「この辺にはどういう魔物がいるの?」


「オークとか、コボルトとか……、稀にオーガも出るのだ」


 まるでラノベやアニメに出てきた世界そのままである。


「オーガ……。そういう魔物は誰が作ってるの?」


「設定だけやっておくと、後はシステムが自動生成してくれるのだ」


「ふぅん、便利だね。でもなんで魔物と魔法を追加したの?」


「いろんな設定の中で人類がどうやって独自の文化を築いていくのか、というデータ取りなのだ」


「はぁ、実験……なのか」


 魔物を配置し、魔法を使えるようにすることがただのデータ取りなんだそうだ。玲司は言いようのない違和感を抱き、眉をひそめる。なぜそんなことをするのだろうか?


「地球は一万個もあるのだ、Everza(エベルツァ)ならではの文化を作らないと埋もれておとりつぶしになってしまうのだ」


 ミゥは肩をすくめる。


「おとりつぶし!? 消されちゃうの?」


「そうなのだ」


「えっ!? 一体だれが?」


 玲司は驚いた。地球が消される、それは悪い奴が壊すとかならわかるが、地球運営側がやるというのだ。そんなことがあっていいものだろうか?


「まぁ、いろいろあるんだけど、最終的には金星のお方なのだ」


「き、金星?」


 玲司はいきなり出てきた惑星の名前に驚く。海王星だけで終わっていなかったのだ。玲司はこの世界を取り巻くとんでもない不思議な構造に言葉を失った。


 要は金星の人たちが海王星の人たちに地球を作らせて文化文明を発達させている。そして、出来の悪い地球は消すという事らしい。一体なぜそんなことになっているのか玲司は見当もつかず、静かに首を振った。


 すると、遠くの方で、打ち上げ花火のようにドン! ドーン! と爆発音が響いた。きっとシアンだろう。一体何をやっているのだろうか?


 玲司は眉をひそめてミゥと顔を見合わせる。


 すると遠くの方からズズズズと地鳴りが聞こえてきた。


「な、なんなのだこれは?」


 よく目を凝らしてみると、遠くの方から土煙をまき上げながら魔物の大群が押し寄せてくるのが見えた。それはゴブリンやオークだけでなく、サイクロプスやゴーレムなど、レアな巨大魔物も混じっている。


 玲司は真っ青になった。


「ど、どうしよう?」


 こんな多量に押し寄せてくるのを、一匹ずつ照準合わせて倒していたのでは間に合わない。


 すると、シアンがツーっと飛んできて、


「呼んできたゾ!」


 と、嬉しそうに報告する。


「いや、ちょっと、呼びすぎだよ! あんなのどうやって倒すのさ!」


 玲司は頭を抱えて怒る。


 それを見たミゥは、苦笑いをして言った。

 

「君にはまだ荷が重いか。じゃ、シアンちゃんやってみるのだ」


「はいはーい! シアンにお任せ。きゃははは!」


 シアンは嬉しそうにくるりと回り、ピースサインを横にしてポーズを決める。まるでどこかのアニメのヒロインみたいだ。


 そして、腕を高く掲げ目を閉じるシアン。


 あんなたくさんの魔物を一体どうやって倒すつもりなのか。玲司は不思議に思いながら見ていると、シアンはパチンと指を鳴らした。


 直後、激烈な閃光が走り、全てを焼き尽くす熱線が一行を貫いた。


 それはまるで核爆弾が炸裂したように、莫大なエネルギーが草原を、その周りの森を一斉に炎へと変えた。


 アチ――――ッ!


 玲司の服も一瞬で燃え上がり、あまりの熱さに身もだえる。物理攻撃無効でなければ即死だった。


 あわてて巨大なシャボン玉のようなシールドを張るミゥだったが、直後に強烈な衝撃波が一行を襲い、シールドごと吹き飛ばした。


 ぐはぁ! ヒィ! きゃははは!


 一行はゴルフクラブで叩かれたボールのように一直線に大空に向ってはじかれる。そして、上空高く舞い上がると、数キロ先の森へと墜落していった。


 木々がなぎ倒された森の上で何度かバウンドしたシールドは、やがてゴロゴロと転がって止まる。無数の小石が空から降り注ぎ、シールドに当たってパラパラと音を立てていた。


 玲司がそっと目を開けると、そこには紅蓮の炎を集めた巨大なキノコ雲が赤黒く光りながら空へとたち上っている。


 魔物を倒すためだけに森を焦土に変え、一帯を地獄絵図に落とし込んだシアンの滅茶苦茶さに、玲司は呆然としながら、ただ禍々しいキノコ雲を眺めていた。

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