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40. 伝説の最強冒険者

「あら、ミゥさん、お久しぶり。お知合いですか?」


 エンジ色のジャケットをピシッと着込んだ金髪の受付嬢は、ニッコリと営業スマイルで話しかける。


「ただの腐れ縁なのだ。ど素人だが頼む」


「分かりました。そうしたら、まず男性の方、こちらに手を当ててください」


 受付嬢はそう言いながら大きな水晶玉を取り出して、カウンターの上に載せる。


「え? 載せるだけでいいんですか?」


 透き通って真ん丸の水晶玉の上に玲司は恐る恐る手を載せる。すべすべの手触りでひんやりとしている。


 受付嬢が何やら呪文を唱えると、水晶玉はぼうっとほのかにオレンジ色の光を放つ。


 受付嬢はそのその光をじっと見て、


「うーん、Gランクですね」


 と、用紙に【G】と書き込んでいく。


「クフフフ、ど素人なのだ」


 ミゥは嫌な笑いを浮かべる。Gランクはかなり下の方のクラスのようだ。


 玲司はムッとして、


「なんでギルドカードなんて要るんですか? ゾルタン捕まえに行きましょうよ」


 と、言い返す。


 するとミゥは肩をすくめ、


「あんたみたいなのがゾルタンのところへ行ったら即死なのだ。まず、魔物と戦いながら戦闘に慣れてもらわないと話にならんのだ。で、そのためにはギルドの許可がいる。そのくらい想像力働かせてくれないと困るのだ」


 といって玲司をジト目で見る。


 玲司は仏頂面で目をそらした。


「ミゥは何ランクなの?」


 シアンが聞く。


「あたしはCランク。でも管理者だから本当は無敵なのだ。クフフフ」


 と、ドヤ顔で答える。


「ふぅん、じゃあ、同じくCランク目指すゾ!」


 そう言いながらシアンは水晶玉に手を載せた。


「C? ねーちゃんが? Cってのは一部のエリートしかなれないランクだぞ。わかってんのか?」


 皮鎧を着た筋肉むき出しのムサいやじ馬が近づいてきて、ニヤニヤしながら言う。


「放っておくとSになっちゃうからCに調整するんだゾ」


「こりゃ傑作だ! Sだってよ! みんな聞いたか?」


 男はロビーを振り返り喚く。


「いいぞ、Sねーちゃん!」「冒険者なめんな!」「今晩どう?」


 下卑(げび)たヤジが部屋に飛び交う。


 受付嬢は、


「静かにしてください!」


 と、可愛い顔に青筋を立て、ロビーをギロッとにらむ。その気迫に冒険者どもは気おされた。どうやら冒険者たちは受付嬢には頭が上がらないようで、お互い目を見合わせながら小声で何かをささやきあっている。


 もう……。


 受付嬢はため息をつくと水晶玉に視線を移し、呪文を唱えた。


 水晶玉が輝きだす。オレンジに輝くと次に黄色になり、黄緑になり、そして緑がかったあたりで止まる。


「おい、ホントにCだぞ」「マジかよ……」


 それを見たやじ馬たちはどよめき、そして言葉を失う。Cというのは一部のエリートを除けばベテランで到達できるかどうかのレベルである。まだ若い女の子がCランクなのはヤバいことだった。


「えっ? し、Cランク……ですかね?」


 受付嬢が目を丸くしてつぶやくと、


 ミゥはいたずらっ子の顔をしてシアンの後ろにそっと近づき、脇をくすぐった。


「きゃははは!」


 シアンが嬉しそうに笑った瞬間、水晶玉は赤になり水色になり、最後は紫色に激しく光を放ってパン! と音を立てて割れてしまった。


 え?


 凍りつく受付嬢。ザワつくロビー。


「ミゥ! いきなり何すんの?」


 シアンはそう言って素早くミゥを捕まえるとくすぐり返した。


「キャハ! フハッ! やめるのだ! キャハハハ!」


 ミゥは笑いながら逃げようとするが、シアンは楽しそうにミゥの動きを封じながらさらにくすぐった。


「分かった! ギブ! ギブ! 降参なのだ! キャハハハ!」


 ミゥは観念した。


 受付嬢はじゃれあう二人を気にもせず、紫色になって砕けた水晶玉を前に固まったまま困惑している。


「あのぉ……。紫は何ランクですか?」


 玲司は恐る恐る聞いた。


「紫は……Sランク。だけど、こんなに鮮やかな紫は見たことがないわ。SSとかそれ以上なのかも」


「SS!?」「紫なんて初めてだぜ」「おいこりゃヤバいぜ……」


 ロビーではやじ馬たちが青い顔をしながらザワついている。


 SSランクであればもはや伝説級の最強冒険者らしい。このままだと国中にシアンのことが広まってしまう。しかし、ゾルタンを探す上で目立つのは避けるべきだった。


「最初、Cランクでしたよね? CでいいじゃないですかCで」


 玲司は急いで交渉する。


「えっ? でも……」


「これはミゥがくすぐったからだゾ。Cちょーだい」


 シアンはニコニコしながら受付嬢に手を出した。


「うーん……。まあ確かに壊れた水晶玉の結果は使えませんし……。とりあえず、暫定でCで出しておきます。その代わりまた後日再計測させてくださいよ」


「分かったよ! きゃははは!」


 シアンは屈託のない笑顔で笑った。


 帰り際、やじ馬たちは小声で話しながらシアン達と目を合わせないようにしていた。本能的にヤバい奴らだと気が付いたようだ。冒険者にとってヤバい奴からなるべく距離を取るというのは、生き残るうえで大切なスキルだったのだ。


 玲司はやじ馬たちの変わりようがひどく滑稽に思えて、ついプフッと噴き出してしまう。


 敏感なやじ馬たちはそれを聞き逃さない。何人かにギロリとにらまれ、玲司は逃げるように我先にギルドを後にした。


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