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33. ムニュッとマシュマロ

 シアンはそのまま頭から温水に突っ込んだ。


 そして、温水の中でぐるぐると回っておぼれている玲司の腕をつかみ、表面まで救い上げる。


「ブハッ! ゲホッ! ゲホッ!」


 温水から上半身を出してせき込む玲司。


 シアンは楽しそうに首を振って髪についた水滴を辺りに跳ね飛ばし、


「海王星温泉、どう?」


 と、ニコニコしながら聞いた。


「お、お前なぁ! いい加減に……」


 玲司はシアンの方を向いてそう言いかけ、目の前にたゆんと揺れている豊満な二つのふくらみを見つけ、固まった。シアンの均整の取れた美しい身体は、海王星からの照り返しで青白く浮かび上がり、まるで月明りに照らされたギリシャの女神像のように神々しさすら醸し出していた。


「気持ちいいでしょ?」


 屈託のない笑顔で笑いかけるシアン。


 玲司は真っ赤になって横を向く。女性の裸体は刺激が強すぎる。


「ご主人様、どうかした?」


「お、お前、なんで服着てないんだよ!」


「お風呂では服着てちゃダメなんだゾ! きゃははは!」


「いや、そういう問題じゃなくて。そもそもここは混浴なのか?」


「ん? 家族風呂だよ。入りたいときに各自で作るんだゾ」


 はぁ!?


 玲司は固まった。こんな巨大な施設を風呂に入るたびに作る。それはもはや人類の常識をはるかに超越している。改めてとんでもところに来てしまったことに言葉を失った。


「ご主人様、どうしたの?」


 シアンが玲司の腕にギュッと抱き着いてきて、マシュマロのようなムニュッとした感触が玲司の脳髄を(しび)れさせる。


「ちょっ! ちょっ! ちょっと待ったぁ!」


 玲司は腕を振り払おうとして、グンと力を入れたが、バランスを崩し、そのまま水中へと沈んでいった。


 ボコボコボコボコ……。


 玲司はもがくが、無重力なので水と泡の混合物が視界を遮り、まるでジャグジーの中に入ったかのようでどっちに行けばいいかわからなくなる。


 んん――――!


 慌てているとシアンがスーッと泳いでやってきて、玲司をお姫様抱っこして助け出した。


「ご主人様、遊んでると危ないゾ!」


 上目遣いに叱るシアン。


 玲司はあまりの間抜けっぷりにぐったりとして、ただ、「はい……」とだけ答えた。



        ◇



 一度上がって、もう一度お湯を綺麗な水晶玉のように戻してから再度入浴をする。シアンにはビキニの水着を着てもらった。


「よっこらしょっと……。あぁ、いいお湯だ……」


 玲司はシアンに手伝ってもらいながら、静かにお湯につかった。


 足元には壮大な(あお)い惑星が広がり、頭上には天の川がくっきりと流れている。まるで大宇宙を手にしたかのような気分である。最高の露天風呂と言えるかもしれない。


 ふぅ。


 玲司は天の川を見上げ、ゆっくりと息をついた。


 遠くの方に明るいものが動いているので何かと思ってよく見ると、それはガラスでできた構造体だった。巨大なサッカーボールのような多面体モジュールが無数に長く連なり、それが二本、DNAのようにお互いに絡みあいながら伸びていた。


「あれがさっきいたところだゾ」


 シアンが説明してくれる。ミリエルの部屋はあのモジュールのどこかにあるのだろう。


 くっきりと流れる天の川を背景にガラスの構造体はゆっくりと回り、チラチラと明りを瞬かせている。その近未来的な宇宙ステーションのきらめきに玲司は魅せられ、しばらくその不思議な螺旋(らせん)の動きに見入っていた。


 何とも不思議な世界に玲司は息をついて静かに目をつぶる。


 そして、さっきミリエルに聞いたことを丁寧に思い出していく。地球は壊滅したが直せる。今は時間を止めている。なぜなら彼女が美空の本体で、地球たち? の管理者(アドミニストレーター)だからだ。でも、それには解決しなければならないことがあって、今まで多くの人を送り込んだけれども失敗している。そこに自分も投入される……。


 ふぅ。玲司はため息をついて首を振った。何が何だかさっぱり分からない。ただ一つ言えるのは八十億人の未来はこの可愛い美少女AIと自分の働きにかかっているということ。地球の未来をかけてこの大宇宙の試練を越えねばならないということだった。


 その責任の重さに押しつぶされそうになりながら、玲司はギュッと奥歯をかみしめ、足元に揺れて見える(あお)い輝きを放つ海王星を見つめた。


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