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30. 海王星の衝撃

「なんで身体持ってるの? それにここはどこ?」


 玲司はそう言って部屋の中を見回した。


 広い部屋には最小限のテーブルと椅子が置かれ、壁のそばには観葉植物が林のように茂っていた。そして、観葉植物からは青や赤の小魚が群れて空中を泳ぎ、また枝葉の中へと消えていく。


 玲司はその訳わからないインテリアや巨大な青い星に困惑していた。


「ん――――、どこって言ったらいいんだろう? あえて言うなら海王星だゾ」


「海王星!?」


 玲司はいきなり聞かされた太陽系最果ての惑星の名前に愕然(がくぜん)とした。言われてみたら確かに教科書の隅にこんな青い惑星があったような気がする。しかし、東京で死んだら海王星に来るとはそんな話聞いたこともない。


 玲司は窓に向き、広大な海王星に見入った。紺碧の美しい姿だったが、よく見るとうっすらと縞模様が入り、濃い青の渦が巻いているところも見える。なるほど、この星も生きているのだ。


「なんで海王星なの?」


「あ、それはねぇ。地球を創り出してるコンピューターがその中にあるんだよ」


 そう言ってシアンは海王星を指した。


「コ、コンピューター!?」


 その時、ブゥン! という音がして空間がいきなり縦に割れた。


 空中にいきなり浮かんだ割れ目はうっすらと青い光を放ちながら、さらに横にもいくつかひびが入り、自動ドアのようにぐぐぐっと広がった。


 え?


 玲司はSFに出てくるかのような空間転移ドアの出現におののく。


 すると、パープルレッドの長い髪を揺らしながら気品のある女性が現れた。彼女はほのかに金属光沢をもつシルバージャケットにタイトなスカートという近未来的なファッションで、メタリックな高いヒールのサンダルをカツカツと鳴らした。


 透き通るような白い肌とパッチリとした紫の瞳にはハッとさせる美しさが備わっており、玲司は思わず息をのんだ。


 まるで宇宙人のようないで立ちではあったが、玲司はふと、どこかで見たような面影を感じていた。


 彼女は玲司をチラッと見て、


「あら、あんた、気がついたのだ?」


 と、ぶっきらぼうに言いながらほほ笑んだ。


「え? あ、あなたは……?」


「なんなのだ? 記憶喪失か?」


 彼女は眉間にしわをよせ、口をとがらせる。


 玲司はそのしぐさに見覚えがあった。忘れもしない、今は亡き美空そのものだった。


「えっ? も、もしかして……」


「きゃははは! ご主人様、美空だよ」


 隣でシアンが楽しそうに笑う。


「えっ!? えっ!? 美空!? 死んだはず……だよね?」


「もちろん死んだのだ。君もね?」


 そう言いながら彼女は空中の空間の亀裂からマグカップを取り出し、テーブルに並べ、コーヒーを注いだ。


「わぁい! コーヒーだゾ!」


 シアンはツーっとテーブルまで飛んでいくと、ちょこんと座る。


「君も座るのだ」


 そう言って、玲司の分もコーヒーを置き、彼女はコーヒーをすすった。


 玲司はいったい何が起きたのか、訳が分からないまま首をかしげ、椅子に腰かける。


 コーヒーカップからふんわりと立ち上る湯気を眺め、玲司も一口すする。


 日ごろコーヒーなど飲まない玲司だったが、口の中にブワッと広がるその芳醇なフレーバーと、鼻に抜けていくまるで果物のような香りに思わず声が出る。


 おぉ……。


「ハワイの最上級のコナコーヒーなのだ。美味いか?」


 彼女は紫色の瞳で玲司をじっと見てほほ笑む。


「あ、お、美味しいです」


 玲司は伏し目がちに答える。


「なんで、他人行儀なのだ? 彼女になってほしいって言ってたのに」


「え? あの……。本当に……美空……なの?」


「判断が遅い!」


 彼女は発泡スチロールの棒みたいなものを取り出すと、スパーン! といい音を立てて玲司の頭を叩き、笑った。


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