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episode.8 The princess looks like a wildcat, but the contents are stray dogs.


突然、他国からの留学生が来たの。

身分は王女様らしくて、それも周知もなし。

カイン様もギリギリまで知らなかったらしくて、朝の教室でわたくし達に紹介する時、戸惑った顔をされていたわ。


「皆さんごきげんよう。わたくしはリリアナ・エヴァーン。エヴァーン王国の第二王女ですわ」


真っ赤な髪のリリアナ・エヴァーン王女は、美人ではあるけれどどこかキツい印象。

つり目気味の目がなんというか…ヤマネコっぽい美女だったわ。


「突然だが、王女殿下はこれから1年半、この学院に通う事になった。当学院内では身分が平等という規則は、王女殿下にも了承を頂いている。セスティア王国に来られたのも初めてらしいので、皆助けてやってくれ」


わたくし達生徒がカイン様の言葉に頷こうとした瞬間、リリアナ王女がカイン様に振り向いた。


「やだ、カインズったら。貴方がわたくしの面倒を見るのよ?」


そんな事を宣ったリリアナ王女が、カイン様の胸にそっと手を触れた。


おい、おまえ、人の婚約者に勝手に触んなや?

しかも今呼び捨てで呼びやがったな?

喧嘩売っとんのか!?あぁ!?コルァ!


「ロティ、ロティ!魔力漏れてるっ」


おっと、心の声が荒れすぎましたわ。

隣のミーシャがわたくしの腕に触れて魔力を中和してくれて、ようやくわたくしは我に返ったの。


「王女殿下、私には愛する婚約者がいますんで、触らないで頂けます?あと、名前呼びも、御遠慮願いたいんですが」


「はっ?えっ?ちょっと貴方、わたくしに何を言ってるか分かってる?」


「はぁ、分かってますけど」


「貴方ねぇ…王女であるわたくしに向かってそんな暴言、許されると思ってるの?貴方、顔がいいからわたくしの世話をさせてやろうと言っているのよ」


「は?嫌ですよ。ただでさえ忙しくて婚約者との時間も取れていないのに、その上王女の世話なんて本当に勘弁して欲しい」


突然険悪になったカイン様とリリアナ王女を見守るクラスメイトから、コソコソと囁きが聞こえてきた。


「シュヴァリエ先生って、ほんとヴァロワ嬢の事好きだよな〜」


「学院のベストカップルに横槍入れる王女の勇気は称えるけど…無理だろう」


「まぁおふたりの仲を知らないのかもしれないけどさぁ、それにしてもあの態度は、シュヴァリエ先生には逆効果だよな」


「そうね、王女じゃ先生のタイプじゃないわね。優しく凛々しいシャーロット様と真逆そうだもの。全てにおいて」


「まぁ今日1日でも先生とヴァロワ嬢の様子見たら、王女も即行で諦めがつきそうだけどな〜」


「1日どころか、歴史学の授業を1回受けるだけでわかるんじゃない?」


「あ、たしかに!歴史学の授業中、教科書じゃなくヴァロワ嬢見てるもんな〜。それでも教科書の内容を全て諳んじてるし、授業もすげぇわかりやすいから、全く文句無いけどな!」


「わかる〜!視線はほぼシャーロット様で、教科書はもはやアクセサリーよね!しかもその熱い眼差しに全く気付かず、熱心に教科書読んでるシャーロット様がまた可愛いのよね〜!王女には太刀打ちできないわよ」


「そうね、いくら王女っていってもね…。それにシュヴァリエ先生はロティ以外見向きもしないもの。多分先生にはロティ以外の女性は女性にすら見えていないわ。もう、さっさと結婚したらいいのに」


「「「「『それな!!』」」」」


恥ずかしい…そんな風に見られていたなんて…穴があったら入りたいって言葉は、こういう時に使うのね…魔法で掘ろうかしら、穴。

ていうかベストカップルって何!?

あと、歴史学の授業中、わたくしずっとカイン様に見られていたの!?

そして最後のコメント。

ソフィア、なぜ野次馬に混ざっているのよ!?

しかも結婚て…っていうか、ちゃっかりわたくしの精霊のツヴァイまで同意してるんですけど!?

ねぇ、ツヴァイ『王女ないわー』とか言いながらわたくしの頭に座らないでくれるかしら。


「ちょっと!うるさいわよ!ていうか誰よシャーロットって!まさかここの生徒なの!?」


王女が吠えた。

吠え方はヤマネコと言うより、野良犬…いえ、野犬かしら。


「シャーロットは私の愛する婚約者ですが、あなたに紹介する気はございません。というかうるさいのはあなたですよ、王女」


「はぁ!?」


「はぁー。面倒なんで理事長に話して別のクラスにしましょう。そもそも王女ではこのクラスの学力についてこれませんし」


「ちょ、それは秘密だって言ったのに!あんたなんかクビにしてやるから!」


「はいはい、できるならどうぞ。さ、王女、理事長室行きますよ。では皆さん、今日も頑張って下さい。…ロティ、後でね」


王女を魔法で拘束したらしいカイン様が、わたくしに笑顔を向けてひらひらと手を振る。

わたくしが慌てて「はっ、はい!」と返事を返すと、カイン様は「シャーロットってどいつよぉ!」と喚く王女を無視し、頷いて教室を出ていった。


クラスのそこかしこから、ヒュゥ〜!と口笛が吹いた。

隣のミーシャまで「ロティって本当に愛されてるわよねぇ。で、結婚式はいつよ?」とか言う…。

は、恥ずかしい…本当に掘ろうかしら、穴。

それにカイン様…王女を拘束なんかして、大丈夫なのかしら?


その日の昼休み、いつもの貸切サロンに現れたカイン様は疲れきっていて、いつもより甘えてきた。

そんなカイン様の話では、どうやらリリアナ王女はキース王子との婚約狙いでセスティア王国に来たらしいのだけど、学院の教師として紹介されたカイン様を気に入ってしまい、学力が全く足りないのに我儘を通してカイン様のクラスに入ろうとしたらしいわ。

わたくしのいるクラスは、学年で一番学力が高いの。

クラス分けは年単位で、年間のテスト順位で来年度のクラスが決まるのだけれど、わたくしはカイン様が受け持っている成績優秀者のクラスの生徒という席を死守する為、ずっと学年一位を取り続けているのよ。

だって、カイン様は生徒にも人気があるんだもの…。


そういえば、「ロティが嫉妬して魔力をダダ漏れさせてくれた時、嬉しくてにやけそうだったよ。残念ながらその時のロティの顔は見えなかったんだけどね…」なんて言われたわ…ああ、もう!わたくしそのうち、本当に隠れる為の穴を掘りそうだわ。


話がズレたけれど、リリアナ王女はエヴァーン王国の王女なのだし、エヴァーン王国からキース王子に求婚したらいいのに、って思ったのよね。

そしたら、どうやらキース王子には婚約者候補が居るらしいのよ。

貴族では有名な話だったらしいんだけど…なんせわたくし、王家に関する話は避けてたから。

カイン様もそれは知っていたけど…『他の男の話なんて聞かせたくなかったし』って、少し拗ねた顔で言うのよ…何その可愛い顔!狡い!!!

コホン、えっと…ミーシャとソフィアも王子の事は嫌いだけど、知ってはいたらしいの。

でもわざわざ話題に出すことはしなかったらしいわ。

そしてそれがなんと、エヴァーン王国の第一王女なんですって。

姉妹で取り合いとか、いやー、ないわー…。



数日後の友人とのランチでの話。


「今回リリアナ王女がこの国に来たの、リリアナ王女の生母の側妃様の独断だったらしいわよ」


そんなネタを投下するのはミーシャ。


「えっ、それ本当?その側妃様、大丈夫なのかしら」


若干顔色を悪くするのはソフィア。


「どうかしらね…。というか、第一王女との話も消える可能性があるみたいよ…ソフィア、もし流れた場合、あの王子なら何があるか分からないわ。気をつけてね?」


なんとソフィア、7歳の時の例のお茶会と銘打ったお見合いパーティーの後、さらに何度目か後の再お見合いパーティーに渋々参加した所、突然キース王子に気に入られてしまったらしくて、キース王子と婚約させられそうになった経験があるらしいのよね。

その時はソフィアの家柄とかもあって、なんとか回避出来たらしいのだけど。


そしてこのミーシャの一言がまさかフラグになるなんて、思ってもみなかったわ。



数日後のカイン様とのランチでの話。


「あの我儘王女、こっそり留学を決めた事がお父上である国王にバレたみたいだよ。それでセスティア国側が向こうの国王から依頼されて、こちらから王国に強制送還させたんだってさ」


「えぇ…?普通に考えたらこっそり1年半も留学なんて、無理ですわよね?側妃様はバレない自信でもあったのかしら…?」


「それがね、留学は王女が勝手に決めたらしいよ。留学の書類は理事長じゃなくて副理事長が確認してたらしいんだけど、後で調べたら偽造書類だったしね。本来はキース王子に会って、短期間で仲良くなるのが目的だったらしい。側妃様としては、すぐに落とせれば落としてこい、って感じだったんじゃないかな」


なんということでしょう…あら、このセリフ、何だったかしら?

じゃなくて、リリアナ王女はちょっと行き当たりばったりすぎじゃないかしら。

あと、婚約者候補の第一王女との件は、まだどうなるか分からないみたい。


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