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episode.7 I want to enter if there is a hole.


さらに真っ赤になっているであろう顔を、今更ながら扇で隠すわたくし…時すでに遅しですわね。


「あの時図書館で君に出会ってから、ずっと話してみたいと思っていた。気になりすぎて名前を調べたら、ヴァロワ侯爵のご令嬢で、その…まさかの13歳で。その後も何度か図書館で君を見かけて、その度に君に惹かれている自分に気づいた。だから君の入学に合わせて、ずっと断っていた教師の件を受けたんだ」


「えっ?まさか、わたくしと会うために?」


「そうだよ。じゃないと全く接点もないし、それしかないかなって。ごめん… 当時20歳の私が13歳の君に一目惚れなんて、気持ち悪いよね」


なんてこと!?

わたくしの為にそこまでして下さったの!?

これはちょっと、いえ、かなり、だいぶ…嬉しいわ…。


「いいえ、気持ち悪くなんてありませんわ!わたくし、今でこそ年相応に見られるようになって来ましたけれど、元から少し大人びていて、よく年上に見られていましたの。身長も、その年頃にしては高かったので…それに確かその頃は16歳に間違えられた事もありましたわ。だから気持ち悪いなんて思いませんし、嬉しいです!」


勢いに任せてそんな事を言ってしまったわたくしは、途端に恥ずかしくなって口元どころか顔全体を扇で隠してしまったの。

多分正面から見たら、わたくしモロにお雛様だわ。

ふいに向かいに座られていたシュヴァリエ先生が立ち上がるのに気付いて、少し扇を降ろして見てみれば、なんとわたくしの足元に跪かれ、手を取られたの…これは、あれかしら、プ、プププロポーズ!?

どうしましょう!先生の目がとても、とても蕩けそうだわ!

そして、なんなのかしらこの…ぶわっとダダ漏れな色気は!?


「シャーロット・ヴァロワ嬢、私はどうしても君を諦められない。…どうか、私と結婚してくれないだろうか?これから先、私をずっと君の隣にいさせて欲しい」


キャー!!!

鼻血ものだわ!!!

乙女ゲームってやったことないけれど、きっとこういう時のスチル?とやらにときめくのね!

わかるわ!とてもわかるわ!

そして気づいたらわたくし、元気よく「はい!」って答えていたわ。

流されたわけではないのよ?

だって元々、わたくしにとってシュヴァリエ先生はどストライクだったわけですし!


そのまま見事にコロッとシュヴァリエ先生に落ちたわたくし。

あんなに熱烈にプ、プロポーズされて、落ちない方がおかしいわ。

(むしろこの縁談の話の前から、すでに落ちていた気もしないでもないけれど)

わたくしは夜のうちにお父様に報告して、翌日、早々に婚約を結びましたわ。

お父様、拳を握りしめて泣いてらしたわ。


それからわたくし達は順調に恋人になっていったの。

初めてのデートは博物館だったわ。

様々な遺跡からの発掘品が所狭しと並んでいて、思わず『なんて素敵な土器かしら!』と声を上げてしまって、恥ずかしかったわ。

でも研究者でもあるシュヴァリエ先生は、嬉しそうに目を細めてくれたけれど。

他にも植物園だとか観劇だとか、流行りのカフェだとか。

デートスポットにたくさん行ったわ。

こんなキャッキャウフフなデートなんて前世振りで、とてもときめいたわ…いえ、キャッキャウフフなデート、前世であったかしら…?

前世で過労死する時、わたくしはフリーだったのだけれど、たしか最後の恋人と別れたのはわたくしが死ぬ1年前くらい前だったはず。

その別れた原因も、ストレスで疲れすぎてデートもドタキャンしすぎたのが原因だったのよね。

あの時はもう、なんていうか、睡眠が恋人だったのよ…。

きっと、そこまで好きではなかったのね。

ストレスの少ない今世では、ちゃんとデートを楽しめていて、とても恋愛しているって気分を味わえているわ。


貴族の婚約は周知されるから、恥ずかしながら学院でもわたくしとシュヴァリエ先生の仲は知られているのよね。

ミーシャとソフィアも祝ってくれて、恥ずかしいけれど嬉しかった。

そしてシュヴァリエ先生の言っていた通り、2人は先生の気持ちに気づいていたらしいわ…その話を聞いた時は、ほんとに恥ずかしかったわ…。

2年生でも担任になったシュヴァリエ先生とわたくしは、学院の他の生徒の前ではきちんと『先生と生徒』の距離を保っているわ。

わたくしは基本ミーシャとソフィアとランチをしてるのだけれど、たまにシュヴァリエ先生と2人きりでもランチは取っているの。

先生って授業の準備とか昼休みもやる事が多いらしくて、大変みたいなのだけれど、先生は頑張って時間を作ってくれるの。

高位貴族だと、サロンを借りることが出来るのだけど、そこで2人きりでランチをとる時は、シュヴァリエ先生が甘えてくれるのよ。


「ロティの側は落ち着く」とか。


「膝枕して?」とか。


いつも凛々しい人が、自分にだけは甘えてくれるのって、なんでこんなに可愛らしいのかしら!?

転生してから純真になったらしいわたくしの乙女な心臓が、結婚まで持たないんじゃないかと、最近心配なのよ…。

そんな先生と、今日は久しぶりのランチなの。


「あー、やっと2人で会えた…会いたかった」


そう言って、ランチも食べずにわたくしの腕を優しく引き寄せると、先生とわたくしの視線が絡み合った。


「…抱きしめていい?」


あ、あっあっ甘ーーーーい!

おそらく一瞬で見事に茹でダコになったであろうわたくしは、こくりとひとつ頷いた。

すぐに正面からぎゅうっと抱きしめられ、ふわりと先生の匂いに包まれる…あー、きっと幸せな瞬間ってこういう事を言うのだわ。

先生はわたくしの肩に頭を乗せて息を吐く。

先生のサラサラの黒髪と息が首に当たってくすぐったい。

しかも耳元で突然、「好きだよ、ロティ」なんて囁くから…どうしよう、心臓がきゅんてしてドクンてしてぎゅうってして、色々忙しい事になってるわ!


「せ、先生、早く食べませんと、時間がなくなりますわよ?」


「カイン」


「え?」


「カインて呼んでよ、ロティ」


キュン死にする。


「…カイン、さま?」


「ん。俺の顔見てもう1回呼んで?ロティ」


赤い顔を自覚しつつ、恐る恐る顔を上げれば、目の前には少年の様な輝きを纏った期待の眼差しが。

ねぇ、だから、キュン死にするって。


「カ…カイン、様」


「…はぁ〜、なんでそんな可愛いの?」


「へっ?」


「ロティ、誰かに誘われたりとか、声かけられたりとかしてない?」


「は、はい、大丈夫、だと思いますわ」


「本当?もしそんな事があったら、直ぐに言ってね?消すから」


「はい…って、消す!?」


わたくしがカイン様の物騒な発言に目を白黒させていると、ふいにカイン様の少し骨張った手がわたくしの頬にふれ、そのまま顎に降りてきた。

これは、キスの合図だ。と頭で理解した瞬間、わたくしの唇にカイン様のそれが重ねられていた。

今世で初めてのキスは、優しくて胸が締め付けられるような、幸せな痺れがあった。


「はぁ、早く結婚して、毎日ロティと一緒にいたい。愛してるよ、ロティ」


だから!そんな甘ーーい顔で!声で!言わないでぇ!


「わ、わたくしも、お慕いしております…カイン様」


「え…今の、もう1回…言って?」


ああ、だめだわ。

チョロいと言われてもいい。好き。


「お慕いしております…愛しております、カイン様」


「ロティから言ってくれたの初めてだね、俺もう死んでもいいくらい嬉しい」


そう言いながら抱きしめられたわたくしは、昼休みの間中、ランチそっちのけで、愛しい婚約者様の腕の中で額や頬、瞼にキスを浴び、愛を囁き合っていた。

でも、死んじゃ嫌ですわ、カイン様。


そして間もなく昼休みが終えるという頃、エッタに声を掛けられて初めて…エッタがいた事を思い出したのよ…恥ずかしすぎて死にそうよ…早く言ってよ!


カイン様がわたくしを押し倒したりした時には、真っ先に止めに入るつもりだった、と後から聞いて、さらに恥ずかしい思いをしたわ…。


そんな風に、仲のいい友人と過ごし、婚約者と時々甘い時間を共有しながら、わたくしは学院生活を満喫していたのだけれど。


続きは明日アップする予定です。

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