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episode.5 Good for the future of this country.


翌日、ヴァロワ家のタウンハウスに見慣れない馬車が来て、わたくしも呼ばれたの。

今日は休日だけれど、ソフィアもミーシャも予定があったから、わたくしは1日書庫に篭ろうとしていたのに。

知らない馬車で我が家にくる人でわたくしにも用があると考えると、昨日のバカとピンクの件に関する人かしら…?

これに関しては昨日の内に家族には報告済みなのだけど、お父様とお兄様のそっくりなご尊顔に、同じ青筋が見えて、申し訳なかったわ。

ちなみにお母様はメラメラと負のオーラを背負って、妖艶な微笑みを浮かべていたわね…正直、お父様達より怖かったわ。

さらに怖かったのは後ろに控えていた執事のシリウス。

シリウスからは、静かなのに鋭利な殺気が漏れていたのよ…あの瞬間、『シリウスはきっと何人かは殺ってる』と思ったわ。

間違っても本人には聞けないけれど!


「ああシャーロット、こちらにおいで」


応接室に行くと、貴族の仮面をぴっちりと被った両親がいて、その向かいに見覚えの無い男性がいたの。

わたくしはお父様の隣に立って改めてその男性を見たけれど…やっぱり見覚えはないし、なんだかぼんやりした薄い顔の方ね。

挨拶をするにも、爵位によってどちらから挨拶するかとか面倒で、お父様から紹介されるのを待つ事にしたわ。

それにしても…何だかとても若いわね?わたくしと同世代に見えるのだけれど?


「シャーロット、こちらはカルマン子爵令息のアルフレッド君だそうだ。アレン王子殿下の側近らしいよ」


あのバカの側近…なるほど、だからお父様とお母様はその仮面を被ってらしたのね…あっ、またシリウスから殺気…気付かなかった事にしましょう。


「お初にお目にかかりますわ。ヴァロワ侯爵家のシャーロットと申します」


「あぁ君が。私はアルフレッド・カルマンだ。君のひとつ上の学年だ」


なんなのかしら、このエラソーな子爵令息。

ひとつ上とは言っても、ねぇ…。

わたくしだけなら兎も角、お父様の前でこの態度はどうなのかしら。

やっぱりアレの側近だと似るのかしら?

それとも似ているから側近に取り立てられたのかしら?

わたくしがそんな事を考えていたら、エラソーな子爵令息が爆弾発言を投下したの。


「今日はアレン殿下から、ヴァロワ侯爵令嬢…ああ、もはや侯爵令嬢では無くなるのか。シャーロット嬢に国外追放の通達を預かってきた」


カルマン子爵令息は、サラッとそんな事を抜かしたの。

わたくし、耳が悪くなったかしら?と両親を見てみれば…うん、聞き間違えでは無かったようね。

隣のお父様とお母様の魔力が、ゆらりと大きく揺れたわ。

因みにシリウスの殺気も二割増し。

タウンハウスが無事でありますようにと、祈らずにはいられないわね。


「君、それは陛下はご存知か?」


「いえ?そんな必要はないでしょう。罪人を追放するのですから」


「そうか。それを置いてさっさと帰れ、クソガキが」


わぁ、お父様、極道みたいで素敵…じゃなくて。

怒ってらっしゃるわ。


「なっ!殿下の側近である私に対してそのような暴言をするなど!失礼ですよ!?」


エラソー子爵令息、このお父様に言い返せるとは…しかも両親のこのむせ返るような魔力プラスシリウスの殺気にもたじろがないとは、ある意味凄いわね。

…まさかただ単に気付いてないとか、ないわよね?


「何故だ?私はこの国の魔法省の長で、ヴァロワ侯爵家の当主だ。それに比べて君は単なる子爵令息。そんな君が侯爵家の長女を勝手に国外追放などしてみろ。陛下はお前の家ごと潰すだろうよ」


「ま、魔法省の…!?い、いえ、しかし私はアレン王子の側近で…!」


え。

もしかしてこの方、王子の側近のくせに魔法省のトップの名前も知らなかったのかしら…?

頭、大丈夫?


「だから何だと言うのです?アレン王子は陛下より偉いの?そして、その側近でしかない貴方は何様なの?わたくしの娘を馬鹿にする前に、ご自分の立場を考える事ね。この暴挙に対して陛下からお咎めがないという自信があるのなら、聞いてみたらよろしいわ。さぁ、お帰りになって下さる?目障りよ」


わぁ、お母様、極妻みたいでかっこいいわぁ…じゃなくて。

お母様の言う通り、目の前のエラソーな子爵令息はただの貴族の息子ってだけで、なんの地位もないのよね。

まぁそれはわたくしもだけれど。

それよりも…。


「お待ちになって、お父様、お母様。ねぇカルマン子爵令息さま?その通達とやらはクルーゲル伯爵家とミーゼス伯爵家にも届けられるのかしら?」


「あっ、当たり前だ!」


あら、お父様とお母様にタジタジだったくせに、わたくし相手だからと少し生き返ったわね。


「そう…クルーゲル伯爵様は近衛師団長、ミーゼス伯爵様は騎士団長様ですわ。御二方とも、娘を溺愛されてますのはご存知?カルマン子爵令息さま、首と体が離れないよう、くれぐれもお気をつけあそばせ?」


「えっ…」


この後すぐ、顔を引き攣らせたカルマン子爵令息アルフレッドは、シリウスを筆頭としたヴァロワ侯爵家の使用人達に物理的に追い払われたわ。

わたくしは厨房から塩を拝借して、タウンハウスの入口にそーい!とバラ撒いた。

不思議そうに見ていた使用人に『厄除けよ』と説明した所、何人もの使用人が「そーい!」と塩を撒いていたわ。

ついでに盛り塩もしておきましょう。


さて、エラソー子爵令息とバカ王子はどうなることやら?



エラソー子爵令息が帰った後、わたくしはすぐに魔法でミーシャとソフィアに知らせを送ったの。

数時間後、2人から報告が来たわ。

お父上に溺愛されている2人は、どちらも家の中どころか敷地にすら入れずに追い払ったそうよ。

2人と2人のお家に気苦労がなくて良かったわ。


そういえばあの後、お父様とお母様が例の通達を握りしめて、王宮に向かったの。

いつもは馬車なのだけれど、怒り過ぎた勢いか、お父様の転移魔法でね…。

多分陛下に陳情を述べに行ったのだと思うわ。

苦労かけてごめんなさい、お父様、お母様。


それから5日後、なんとアレン王子が廃嫡されたのよ!

これには流石に驚いたわ。

どうやら学院でのピンクとのアレコレは、わたくしが知るより酷かったらしくて、その内容はよく聞く『王家の影』的な人達から報告が行っていたらしいの。

あとあれね、予算の使い込み。

それで元々、あのバカは廃嫡するかって話になっていたそうなのよね。

アレン元王子は、辺境にある北の塔という場所に幽閉されたらしいわ。

話に聞く限りでは、塔の中も一年中極寒らしいわ。

あと、ピンク男爵令嬢…アルニム男爵令嬢だったかしら?彼女はなんと、男爵の娘じゃなくて、夫人と愛人の子供だったんですって。

男爵は元々、娘の我儘に困り果ててたらしいんだけれど、王家からの調査結果で知らされた男爵がブチ切れて、夫人とは離縁したそうよ。

ピンク男爵令嬢のお母様も元男爵令嬢で、その夫人と共に夫人のご実家へ戻られたのだけど、学院も退学になったたらしいわ。

学院の卒業資格が無いのって、この国の貴族では有り得ないことなのよ。

アレン王子との事は、アレン王子に婚約者がいなかったから不問になったらしいけれど、それでも将来が閉ざされた様なものね。


そうそう、あのバカが言っていた、わたくしがバカを追いかけているとかいう話。

あれはバカが王妃様に『ヴァロワ侯爵令嬢のような妃を見つけなさい』と言われて、それを側近達に話した所、バカの側近共が何を勘違いしたのか、『きっとヴァロワ侯爵令嬢が妃になりたくて王妃様に頼んだんだ!』と脳内変換されたらしいわ。

冗談じゃないわよね。

そんな側近達も、それぞれ何かしら罰を受けたそうよ。

その中にはもちろんエラソー子爵令息もいたわ。

…あら、エラソー子爵令息って呼んでいたら、本名を忘れたわ。

顔もよく分からないぼんやりした顔だったし。

まぁ彼も実家に見切りをつけられて鉱山に送られたらしいし、もう会うこともないでしょうから問題ないわね。

何よりも王家というかこの国にとっても、あのバカやバカの側近のバカ達が排除されたのは、きっと将来的に良いことだと思うわ。


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