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episode.4 That shocking pink is not good for the eyes.


シャーロット15歳。

わたくしは数日後に王立セスティア学院への入学式を控えていた。

貴族の子息令嬢は、必ずこの学院を卒業しなければならないんですって。

ちなみに期間は3年間よ。

学院に入る前、わたくしは両親とお兄様に相談したの。


「お父様、お母様、お兄様。わたくし、学院ではどの程度の学力で過ごせばいいかしら」


「そうだなぁ…ロティが本気でやると目立つからなぁ」


「ロティちゃんがまた王家のボンクラに目を付けられたら困るわよねぇ」


「そうなんだよなぁ」


「父上、母上。アレン王子は最近頭がピンクの変な男爵令嬢に夢中になっており、婚約者候補のご令嬢方が全員辞退すると噂になっているので、大丈夫かもしれません」


お兄様、なにその頭がお花畑なヒロインフラグ。

あ、今更だけどロティはわたくしの愛称よ。


「ああ、そういえば婚約者候補たちからそのような話が出ているという噂は部下たちから聞いたな。アンリ、あの噂の裏でそんな事になってたのか?」


お父様はこんなに紳士に見えて、実はゴリゴリの攻撃魔法の使い手なのよ。

それで今は魔法省のトップである魔法師団長を務めているから、王宮務めなの。

でも普段は王宮から離れた魔法省の建物にいるから、噂話とかは部下から聞くみたい。

魔法省のトップの座は務めているけれど、お父様の止まらない不敬発言を考えると王家は好きじゃないのかしらね。


「はい、男爵位では王妃に迎えれないのに、あのバカはそれすら忘れてるようで、毎日人目もはばからずイチャコラしてますよ。何やら本来婚約者に使う筈の予算を使って貢いでいる噂もありますし…。それにあのバカは成績が良くないので、あまり優秀な令嬢を好まないそうです」


おう…昔お見合いパーティーで会ったあの上から王子は、バカに磨きをかけたのね。

ていうか、予算の使い込みとか終了フラグじゃない?


「そうなのね、それならロティは自由にしてもいいかもしれないわね?」


「そうだな、もしまた王家に目をつけられたら留学すればいいしな。その時はもちろん、私も行くが」


「あら、そうね。その時はわたくしも行くわよ」


「そうなったら、いっそ国外へ引っ越せば良いのでは?リュシーも喜んで付いてきてくれるでしょうし」


「そうだな!」


「それがいいわね!」


いや、良いのかよ!!

リュシーねぇさままで巻き込むのかよ!

と、つっこみそうになったけれど、それはそれで女神アウラと神シンドラの遺跡に行ける可能性が高くなるし、もしかしてミステリーをハント出来る未来も…うん、いいかもしれない、と思ったわたくしは、気付いたら「そうですわね」と微笑んでいたわ。

そうそう、リュシーねぇさまはお兄様の婚約者で、わたくしをとても可愛がってくれている方だけれど、世界旅行してみたいって言っていたから、喜んで付いてきてくれそうな気はするわ…。



そんなこんなで今日は学院の入学式。

中身が35+15歳のわたくしだけれど、制服が可愛くて、少しテンションが上がるの。

成績順で新入生代表の挨拶を指名されてしまったわたくしは、前世の入学式を思い出しながら、当たり障りのない挨拶をして、無事に入学式を終えたわ。

前世と違って、理事長の挨拶は短くて、イケおじで、好感度が爆上がりしたのだけれど、名前を聞いて王弟だって気付いて、爆下がりしたわ。

陛下にはお会いしたことは無いけれど、なんせアレの製造元って考えると…ねぇ、触らぬ神…もとい、触らぬ王家に祟りなしって感じかしら。

ちなみに担任の先生はめちゃくちゃわたくしの好みどストライクな先生だったわ。


入学式から数日後、学院内の施設の案内とかが終わって、ようやく授業が始まった。

わたくしは既に友人と呼べるご令嬢が2人出来たの。

1人は隣の席のミーシャ・クルーゲル伯爵令嬢で、プラチナの髪にオレンジ色の瞳の可愛い系。

だけど中々毒舌で、その毒が的確でとても好き。

もう1人はミーシャのお友達のソフィア・ミーゼス伯爵令嬢。

ソフィアは黒髪に黒に近い藍色の瞳で、全体的にシャープな美人さんよ。

前世日本人のわたくしはソフィアの色に懐かしさを覚えて涙したわ。

でも何故か色味は日本人なのに、どう見ても美人な外国人なのよね。

これぞミステリー。

ちなみに中身は結構乙女なのよ。


そんな2人と中庭でランチをしていた時のこと。

視界の端っこに、目に痛いピンクが入り込んだ。

気になってそちらを向けば、見覚えのある面差しの令息にへばりつく、ドギツイピンクのご令嬢。

あまりのピンクさに、マナーも忘れてポカンとしていたわたくしに、ミーシャがこっそりと囁いたの。


「ロティ、あれが噂のピンク…じゃなくて、ええとたしか…ミラン・アルニム男爵令嬢よ!」


なるほど、あれが。

ねぇ、目が痛いんだけど。


「あの子、光属性持ちらしいんだけど、何故かそれを自慢してるの」


ソフィアが眉を寄せて首を傾げながらそんな事を教えてくれた。


「え?なぜかしら?」


この世界、光属性持ちは然程珍しくない。


「何だったかしら…あ、そうそう、私はせいじょよ!とかって言ってまわってるのよ。せいじょってなにかしら?」


おう。

あのピンクは多分転生者だ。

多分、ここをどこかと勘違いしてるのね、乙女ゲームとか。

それで光属性持ちの聖女だと自慢してるんだと把握。

絶対近寄らない、と、わたくし決心したわ。

なによりも、わたくしの目のために。


と、わたくしが心の中で拳を握った直後、何故か王子とピンクがこちらへ歩いてきた。

学院内は一応身分は無いというものの、アレン王子は学年ではひとつ上で先輩と後輩という立場だし、なによりも面倒なので、わたくし達は立ち上がった。


「おい、シャーロット・ヴァロワ」


いきなり呼び捨てかーい。


「お久しぶりです、殿下」


仕方なくわたくし達はカーテシーをするけれど、本音を言えばコイツには頭を下げたくないわね。


「お前、いい加減俺を追いかけるのは止めろ」


…はい?


思わず目を瞬かせるわたくし達。

ミーシャとソフィアには、わたくしが王子を嫌っている事を話してある。

というか、2人も例のお見合いパーティーにいたらしくて、その頃からわたくしと同じく王子達を嫌いなんですって。


「なんのお話かわからないのですが?」


「やだぁ、眉間にシワなんか寄せて、こわぁい」


ドギツイピンクがとても似合う口調でそんな事を宣う。

痛い。目も痛いし、ピンクの脳みそも痛い。

きっと頭の中のお花畑にはラフレシアが咲き乱れているのだわ、ショッキングピンクの。


「お前!ミランを睨んだのか?不敬だぞ!」


意味がわからん。

不敬って言われてもね、わたくしは侯爵令嬢、ピンクは男爵令嬢、オーケー?


「失礼ながら殿下。シャーロットは侯爵家のご令嬢で、ミランさんは男爵家のご令嬢です。不敬なのはそちらでは?」


見た目ゆるふわなミーシャが、わたくしを庇ってくれた。


「ひどぉい!わたしの爵位が低」


「そもそも不敬だのと仰る以前に、学院内では身分は平等とされていますわ」


ミーシャがピンクの言葉を遮って、さらに畳み掛ける。

かっこいいわ、ミーシャ。

わたくし惚れそうよ!


「うるさい!俺のミランを見下す者は誰一人許さん!お前らは国外追放だ!」


シャーロット15歳、入学から数日で、まさかの国外追放を宣言されたわ。

婚約破棄じゃなくても、国外追放って宣言されるのね…って、思わず遠い目をしたわたくし。

このバカにわたくし達を国外追放させられる権力がある訳ないから、別に何とも思わないけれど、むかっ腹がたつわね。


「何をされているのですか?」


ミーシャとソフィアと共に、このバカどうしてくれよう、と天を仰いでいたわたくしたちの元に現れたのは、わたくし達の担任で、わたくしの好みどストライクなカインズ・シュヴァリエ先生。

サラサラの肩より少し長い黒髪は輝いていて、黒曜石の様な瞳からは色気が漂う…若いのに優秀で、もうめちゃくちゃわたくしのタイプなのよ!

朝教室で会ったばかりだけれど、至近距離のシュヴァリエ先生、色気ヤバ…コホン、今日も尊いわ。


「カインズ!こいつらを国外追放したから、連れて行け!」


「…は?殿下はバカですか?あ、バカでしたね」


お、おう?…シュヴァリエ先生、まさかのミーシャ以上の毒舌?

ミーシャも『ロティ、先生はわたくしの仲間だわ!』といったキラキラした眼差しでわたくしを見る。

これはあれね、『あまり理解してもらえない趣味を持つ者が、同じ趣味を持つ友人と出会えた感動』に近いわね。

『ええ、間違いないわ!』と思いを込めて、ミーシャを見つめ返して頷くわたくし。


「なっ!カインズ、不敬にも程があるぞ!お前も国外追放にしてやる!」


「出来るものならばどうぞ。殿下、王宮に知らせておきますので、今日はお帰り下さい。腕にぶら下げているアルニム嬢もです。誰か、連れていきなさい」


シュヴァリエ先生の声に従うように、ワラワラとどこからとも無く現れた、忍者…?いえ、どちらかというと外国人が忍者に憧れてコスプレしたような…ジャパニーズニンジャ、とでも呼ぼうかしら。

とにかくそのような人達が、喚くバカとピンクを連れて消えた。


わたくし達は暫く、ポカーンと2人が消えた先を見つめていたの。


「ヴァロワ嬢、大丈夫でしたか?国外追放なんて寝言、あなたは全く気にする必要はありませんからね」


シュヴァリエ先生の優しげな声に我に返ったわたくし達は、何度もお礼の言葉を述べて、昼休みを終えたわ。

元々高かったわたくし達の中のシュヴァリエ先生の好感度は、勿論爆上がりよ。

わたくしなんて元々激高だったから、もはや惚れそう。

というかこの頃からミーシャとソフィアがニヤニヤとわたくしを見る事が増えたのだけれど、なぜ…?


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