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8☆砂漠越えの旅路
「はあはあ、喉が渇いた」
「私も」
ルシアンとキャサリンは皮袋に入った水を飲んだ。
不思議なことに、いくら飲んでもその水は減らなかった。
「魔法が効いてるのかな?」
「王様の魔法?」
「うん」
太陽は空高くじりじりと砂漠を焼いた。幾重にも巻いた布地が子どもたちを守った。サコムが用意してくれたラクダが陰を作ってくれた。
砂で足を取られそうだが、確実に一歩ずつ前へ進んでいた。
「砂嵐は来ないね」
「それも魔法?」
「そうだね」
もしもどちらか一人だったら、きっと途中で挫けてしまうだろうとお互いに思っていた。
歩き疲れたころ夜が訪れて、がくん、と気温が下がった。
砂の谷でラクダに寄り添って二人は眠った。
「指輪の石が夜空を映しているわ……」
キャサリンが夢うつつでつぶやいた。
ルシアンが寝ぼけて、「指輪に宇宙を閉じ込めたのかい?」と聞いた。
夜空に星が一面に瞬いていた。本当に金粉をまいたようだった。
王がこの指輪は宇宙と繋がっていると言っていたが、子どもたちは星空を歩く夢をみた。
不思議な縁がみんなを繋いでいる。
宇宙の理かもしれない。
そんな気がした。