7☆ハルシオン
「おじいちゃん?」
7日目の朝、老人が目覚めた。
「ワシは……何日眠っておった?」
乾いた声だった。
「一週間。よかった目が覚めて」
「サコムさんを呼んでくるよ」
ルシアンが駆けていった。
「ここに、ハルシオンはおるか?」
「ハルシオン?さあ」
キャサリンが首をひねっていると、
「王の名前です」
と、駆けつけたサコムが答えた。
「そうか、ハルシオンは王になっておったか」
「知り合いなの?」
「いや、直接は知らぬのじゃが、娘から話に聞いておる」
「娘、って、ルシアンのお母さんのこと?」
「ミランダじゃ」
「ルシアンの母親がミランダ?」
サコムがごくり、と唾をのんだ。
「なんだって?」
みんなが振り向くと、王が真っ青な顔で立っていた。
「ルシアン、今一度お前の顔をよく見せておくれ」
王が震えながら男の子をじっと見つめた。
「そうか……いやしかし、ならばなぜ私はキャサリンがミランダに似ていると思ったのだ?」
「ルシアンとキャサリンは、いとこだそうですよ」
サコムが言った。
「ルシアンのお母さんのお兄さんが私のお父さんなんです」
キャサリンも、うちふるえながら言った。
「ルシアン。お前のお母さんが病気で会いに行くところだと、言っていたね?」
「はい」
「サコム!大急ぎで旅に必要な食糧など集めてまいれ」
サコムは飛び出していった。
「ルシアン、キャサリン。私は本当に悪かった。どうかミランダにその顔を見せてやってくれ」
「じゃあ、行っていいんですね!」
「もちろんだ!」
子どもたちは大喜びでとびはねた。
「ワシは、身体が言うことをきかない。二人だけで行けるか?」
老人が言った。
「おじいちゃん……」
「一刻も早く行ってやってくれ。西を目指すんだ。コンパスは持っておったな?」
「うん」
「もしもコンパスがいうことをきかなくなっても、太陽が沈む方向を目指すんじゃ。そこに小さな町がある」
「そこにお母さんがいるんだね?おじいちゃん」
「そうじゃ」
急遽子どもたちだけで旅支度をすることになった。
「王様。指輪をお返しします」
キャサリンがラピスラズリの指輪をはずそうとしたが、王はそれをとどめて、
「これは持ってゆきなさい。ミランダにかえしてやってくれ」
と言った。そうして、
「子どもたちが砂嵐に遭わず、無事に目的地に着けるように」と指輪にまじないをかけてくれた。
「じゃあ、行きます」
「くれぐれも気をつけて」
大人たちに見送られ、キャサリンとルシアンは砂漠越えの旅に向かった。