4☆ルシアンの目覚め
「キャサリン、キャシー」
うわごとのようにルシアンが呼んでいた。キャサリンはルシアンの手を握り、「ここにいるわ」と返事した。
「キャサリン」
ぱち。ルシアンの目が開く。
「ルシアン」
キャサリンが微笑んでいる。ルシアンはホッとして大きく息をはいた。
「僕、どのくらい眠ってた?」
「3日」
「えっ?」
そんなに?と彼は自分で驚いていた。
「おじいちゃんはまだ目が覚めないの」
「そうか……」
ルシアンは、隣のベッドで横たわっている老人に目を向けて、心配そうにまばたきした。
サコムが果物を運んできて、キャサリンの時と同じように皮をむいてルシアンに食べさせてくれた。
瑞々しくて甘い果実はルシアンの空腹と喉の渇きを癒してくれた。
「生き返る〜」
ルシアンがしみじみ言った。キャサリンが笑った。2人の子どもたちはきゃあきゃあ言ってはしゃいだ。
「お2人は兄弟なのですか?」
と、サコムが聞いた。
「いとこです」
「そうですか。どことなく似ておられるので」
「おじいちゃんと一緒にルシアンのお母さんに会いに行く途中だったんです」
「それで砂漠越えですか……」
「キャラバンの人たちに迷惑かけてしまったかしら?」
「仕方ないさ。生きていただけでもめっけもんだよ」
ルシアンは、
「それにしてもびっくりしたよ!砂嵐がさあっと収まって、オアシスと白亜の宮殿が目の前に突然現れたんだから!」
と興奮して言った。
「魔法みたいだったね」
キャサリンもそう言った。
「魔法です」
とサコムが言った。他の2人は笑ったが、サコムがあまりに真面目な顔だったので、笑いを飲み込んでしまった。