3☆ラピスラズリの指輪
王がキャサリンを心配して、顔を見にわざわざやってきた。
「王様。足は大丈夫ですか?」
「うむ。それより、そなたに渡したいものがあって来た」
それはラピスラズリの指輪だった。丸い瑠璃色の石は金粉をまぶしたようにパイライトが豊富で、金の台座に収まっていた。
「これを私に?」
大きさはキャサリンの親指にちょうどよかった。
「昔、砂漠を渡る途中の旅人がここに来て、再び砂漠へ出て行く時にこれを残して行った。この国に残るように言ったのだが、恋人に会うために出て行った」
王は遠い昔を懐かしみながら、キャサリンの両手を包み込むようにそっと握ると、人恋しいのか、なかなか手を離すふんぎりがつかずにいた。
「幸運がお前に訪れるように。おまじないだ」
「ありがとうございます」
「この石は宇宙と通じておる」
「えっ?」
「夜空と同じ色をしておるだろう?」
「そうですね……」
素直に綺麗だとキャサリンは思った。
「元気を出すように」
そう言い残して玉座へ帰っていった。
サコムが、王の想い人の思い出話をキャサリンにした。キャサリンは、本当にこの指輪をもらって良いものか思案した。いずれ、ルシアンたちと一緒にここから出て元の生活に戻る日が来るだろう。そうしたら、これは、王に返せばいい。キャサリンはしばらく預かっておくことにした。