2☆ジャスミン茶
かぐわしい花の香り。鼻孔に広がるなんとも言えない幸せな感じ。
氷でも入っているような冷たさに目をみはる。
「おいしい!でもこれは、どうしてこんなに冷たいんですか?」
キャサリンが尋ねると、サコムが微笑んで答えた。
「この宮殿の地下深くに氷の部屋があるのですよ」
砂漠に囲まれたオアシスの地下に氷?キャサリンは好奇心で目を輝かせた。
「行ってみたいです。そこへ」
「だめです」
「なぜですか?」
「地下には、亡くなった方々の遺体も安置してあって、彼らの許しを得ないで近づくと恐ろしい悪夢にみまわれます」
「サコムさんは許しを得たの?」
「毎回祈りを捧げてから降りてゆきます」
サコムは、お茶に香りをつけるのに使ったジャスミンの花を少しとっておいて、キャサリンにくれた。キャサリンはこの白い花を愛でながら、自分にあてがわれたベッドで午睡を楽しんだ。
「キャサリン」
彼女を呼ぶ声がした。
「ルシアン!目が覚めたの?!」
ルシアンはどこか顔色が悪かった。しかし、キャサリンのそばにいてホッとしているようだった。
「夢を見たんだ。地下深くに降りてゆくとたくさんの人たちがさまよっていて、柩がいくつもあって、その中の一つに君が横たわっていたんだ」
「まあ!」
「夢は夢でしかないね。今こうして、君は生きている」
生きている!なんて素晴らしいことだろう。
「ルシアン、あなたも生きているのね!」
「ああそうだ……。もう駄目かと思ったんだけど」
「そんなこと言わないで。お願い。……おじいちゃんは?」
「まだ眠っているよ」
「早く目が覚めないかなぁ」
「キャサリン、キャサリン」
誰?
ふっと目覚めたキャサリンは、夢の中でルシアンと会っていたことを悟った。
「ルシアン、おじいちゃん」
二人が眠り続けている部屋に入ってキャサリンは泣きじゃくった。
「大丈夫。もうすぐ二人とも目覚めますよ」
サコムが優しくキャサリンに言った。