1☆砂嵐
「おじいちゃん!キャサリンがついてきてないよ」
ルシアンが血相を変えて言った。
「なんだと?あれほど気をつけてやってくれと言っただろう」
ルシアンにしてみれば、自分が前を見失わないでいることがやっとだったのだ。ついてきているはずの女の子がいないと気づいたときどれほどぞっとしただろうか。
「僕、僕、キャサリンを探しに戻る!」
「馬鹿いいなさい。あてもなく戻ってどうなる?」
「でも僕の責任だ!」
ルシアンは知らずに泣いていた。
風と砂がこれでもかとたたきつけてくる。
「いかん。ワシらまでキャラバンとはぐれてしもうたぞ」
「おじいちゃん……」
「探しに行くか?」
「うん」
二人は後戻りすることに決めた。
「キャシー、キャサリン!」
顔にぐるぐる巻のターバンの下でルシアンは声をからしてキャサリンを呼んだ。
どちらにしても、この砂嵐がやまないことには、話にならない、と老人は思った。
さああ。
!?
打って変わって、青空が見えた。宇宙まで続く空の色は、高く澄み渡っていた。
「ここどこ?」
ルシアンが、突如目の前に現れた白亜の宮殿を見上げて叫んだ。
「オアシスじゃ」
老人は、澄んだ水が足もとまで届いているのに目をみはる。
「キャサリン!おじいちゃん、キャサリンがいたよ」
水際で意識を失って倒れている。
「生きておる」
「水!水を飲もうよ!」
二人はオアシスの水をこれ以上もう飲めないというほど飲んだ。
そして、疲労と安堵感からキャサリンのそばで倒れ込んだ。
気を失った3人をオアシスの住人が見つけて、宮殿内に運んでくれた。そこは熱砂の地獄から隔たった、静謐な場所だった。