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9☆老人と王

ひんやりとした空気が心地よかった。

老人は、よく食べて活力を取り戻した。

「ハルシオン。娘から話を聞いている。その足は娘をかばって悪くなったのだね?」

「もう、済んだことだ」

王はかぶりを振った。

「娘のミランダは、初恋の相手を追ってわしの元に帰ってきたが、結婚してルシアンを産んだあと夫が亡くなってな。お前さんにもう一度会いに行くと言って旅に出たが、砂漠の西の町に着いて、流行り病にかかったと便りが届いた」

「私に会いに戻ったというのか?」

「そうだ。わしのもとに幼いルシアンを残して行った」

現在ルシアンは十五歳。いとこのキャサリンは十三歳。およそ十年前にミランダは旅に出たという。

王は、ミランダのことを想った。

キャサリンに面影を重ねた王は危うくキャサリンを引き止めるところだった。

ミランダもハルシオン王のことを想っていたのか?

「どうか、無事でいてくれ、ミランダ!」

王は両手で顔を覆ってむせび泣いた。

「そして、子どもたちよ、ミランダのもとにたどり着いてくれ!」

老人も同じ思いだった。

「わしにもう少し力があったなら、みんなを助けたのに!」

サコムが、

「大丈夫です。きっといい方向に向かいます」

と二人を元気づけた。




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