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プロローグ

彼は玉座に1人座って、物思いに耽っていた。

頭の冠が重すぎてずり落ちてくるのを何回も押し上げて、退屈を持て余していた。

「サコム!サコムはおらぬか?!」

耐えきれずに臣下を呼ぶ。

「御前に」

白い装束の浅黒い肌の男がこうべをたれる。

「何か変わったことはないか?」

「昨夜の砂嵐で、キャラバンからはぐれた者が数名、ここへ辿り着きました」

「なに?その者たちを連れてまいれ」

「とても衰弱しております。せめて数日時間をください」

「なんだ……」

彼はがっかりした。

ビロードのマントをひるがえして立ち上がる。

「その者たちが動けぬのなら、私が出向こう」

こぶし大のルビーのはまった錫杖をついて歩く。彼は足が悪い。

「もったいない」

サコムはそう言って彼の後に従った。

3人。老人1人と子どもが2人。清潔な水を飲んで、命のともしびが長らえた。

「肌が黄色いな」

「外国人でしょう」

「遠い国から来たのだな?」

「さようで」

「私も違う世界を旅してみたい」

「しかしながら、あなたはここの王です。残念ながらそれはかないません」

「わかっている。言ってみただけだ」

この国は小さなオアシス都市で、周りの砂漠に行く手を阻まれた閉鎖世界だった。

時間は砂が流れ落ちる速度で進む。無味乾燥な空気に王は退屈を持て余す。

「ここはどこ?」

小さな声がした。女の子が目覚めたのだ。

「ここは砂漠の中の白亜の宮殿ですよ」

サコムが優しく声をかける。

「不思議。あんなに喉がからからだったのに今は湿ってる」

「オアシスの水を飲んだのですよ」

「ルシアンとおじいちゃんもいる!途中ではぐれて、もうダメだと思ったのに!」

女の子はわあ、と歓喜の声をあげた。

「そなた、名はなんと申す?」

「キャサリンです。あなたは誰?」

「この国の王だ」

「まあ!えらい人なんですね」

「特別えらいわけではない」

王は謙遜して言った。

「この国で過ごすことをゆるす」

「ありがとうございます」

サコムがキャサリンに果物を運んできて皮をむいてやった。とても美味しそうに彼女はその恩恵に預かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「頭の冠が重すぎてずり落ちてくるのを何回も押し上げて」や「時間は砂が流れ落ちる速度で進む」といった写実的な描写に、登場人物や場所がどういう状況なのかといった情報が含まれていて詩的に感じられ…
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