墓参り
テーマはスマホ、死別、G線上のアリア
海岸沿いの白い別荘から少し歩いた所の岬。
そこには小さな墓が立って居る。
或る夏の日、私は墓参りに来た筈なのだが...
「やっほ~」
死別した彼女が、律花が墓に座っていた。
「皆まで言わずとも分かるよ。何でボクが居るか、でしょ。
今更ながら未練が出来てね。」
未練とは何かと聞くと律花は答えた。
「生前聴けなかった君の『G線上のアリア』が聴きたくなってね。いいかい、彩音?」
嘆息しつつ、楽器を取り出し、演奏を始める。
この曲は、律花に聴かせると約束したのだが、その約束は果たされなかったんだ。
演奏が終わり、律花は小さく拍手した。
「やはり彩音は上手だ。
これなら今日のオーディションも勝てるね。」
どうして律花がオーディションを知っているのだろう。
疑問が言葉になるより速く、彼女は消えて行った。
「もう時間のようだね。」
という言葉を遺して。
今まで私が見ていたのは幻だったのかもしれない。
ただ、スマホを開くとLINEの通知が一件来ていて、
「ありがとう」
と書いてあった。
登場人物
彩音
ヴァイオリニスト。
オーディションには受かりました。
律花
幽霊の僕っ娘。
病に罹り、海沿いの別荘で療養していたが死ぬ。