第八話
宿に帰り恒例のステータス更新をする。
名前:アキミチ
種族:人族
年齢:16
職業:武具師
レベル:30
HP:3000/3000
SP:3000/3000
STR:1(30)
INT:1(30)
DEX:30
スキル:【スラッシュ】【ロングスタブ】【エアブレイド】【陰陽中】【ファイアスタンプ】
スキルポイント:
パッシブ:【経験値30%UP】【DEXフィルター】【武具製作】
レベルも30になり、4等級のなかでもかなり強いんではなかろうか?
しかし、潜入調査のことも考えると『白魔導士』と『シーフ』のスキルは欲しい。
特に命の危険が伴う状況では『白魔導士』の回復は絶対に欲しい。
ということで白魔導士のスキルを取るために武器を製作する。
それと同時に、ゲーム時代にはできなかったあることを試すことにした。
素材を並べる。
今回は2種類の武器を作る。
武具製作欄からそれらを選び作成した。
1つはペンダント型の『聖』の力がこめられた武器だ。
これは『白魔導士』の杖には『聖』の力が込められていることから、他の武器に『聖』の力を組み込めば作れると思ったからだ。
と、いうか製作欄にあったので出来ることはわかっていた。
ゲーム時代だとこんな融通は利かなかったが‘‘今‘‘はこれができてよかった。
試しに『刀』と『ペンダント』を装備してみる。
そこでステータスのスキルを確認する。
スキル:【スラッシュ】【ロングスタブ】【エアブレイド】【陰陽中】【ファイアスタンプ】
【ヒール】【ホーリーヒール】【ハイヒール】【エリアヒール】【ホーリーライト】
白魔導士5つのスキルを無事獲得できた。
さらにゲーム時代にはできなかった同時装備までできている。
これはゲームバランス崩壊だな。
『刀』を外し、今回もう一つ作成した武器を手に取る。
スキル:【ブレイド】【ハイド】【ファストムーブ】【アサルトダイブ】【ナルカミ】
【ヒール】【ホーリーヒール】【ハイヒール】【エリアヒール】【ホーリーライト】
『短剣』を装備すると『シーフ』のスキルを無事獲得していた。
夜遅くなっていたがいてもたってもいられなくなって、塔のポータル前に来てしまった。
「よし!少しだけ!」
スキルを試したいという欲望を抑えきれずに5層に狩りに入った。
スキルを試した結果ゲーム時代と違う仕様に少し驚いた。
まず、『白魔導士』と『シーフ』のスキル同時使用が可能だった。
試しに片手に『刀』もう片方に『短剣』を装備すると『シーフ』のスキルが使えなくなった。
『補助スキル』と『攻撃スキル』の違いなのか、単純に武器のせいなのか?謎が深まった。
そして『シーフ』のスキルは、発動がどれも早く連撃に向いているのだが火力か低いのと、なんと『短剣』の向きが違うとスキルが発動しないのだ。
具体的に言うと「順手」で【ナルカミ】が発動せず、逆に「逆手」で【アサルトダイブ】が発動しないのだ。
ゲーム時代はスキルを発動すると自然に持ち方が変わっていたが、今は自分で持ち方を変えないといけない。
今回の調査では『シーフ』のハイドが役に立ってくれるだろうから基本的には『短剣』を装備した状態でいとくことにした。
本当は『黒魔導士』のネックレスも作っておきたがったが、素材が足りないためまた後日作ることにした。
あらかたスキルを試し終わって宿に帰る途中少し遠くから女の子の声みたいなものが聞こえた。
結構遠くからだったが耳までクリティカルげ聞いているのか確信めいたものがあった。
【ファストムーブ】(素早さUP)と【ハイド】(干渉があるまで姿を消す)を掛けて急いで向かった。
ついた場所は路地裏だった。
現場であろう場所にはおびただしい量の血痕が残っておりただ事ではないことを物語っていた。
「これは...」
先ほど悲鳴が聞こえたばかりなので何かの争い事があったのは間違いない。
そしてまだ近くにいるはず。
自分がきた方面とは逆に1本道しかないため急いでその道を辿る。
途中道が二手に別れたが、真ん中の『屋根』の道を通り両方の道を見えるようにする。
すると、何かを担ぎながら歩く怪しい影を見つける。
ここで相手の前に飛び降りて何事かと聞くのが正道だろうがそんなリスクは取りたくない。
先ほどの悲鳴が『女の子』で担がれているのがその『女の子』だった場合救出が最優先だ。
奪い取って確認した後に勘違いだったら謝ればいいし。
方針を決めてから素早く実行に移した。
まず、相手の足を止めるために気づかれないように素早く接近して足を掬う。
転んだ勢いで担いだものが前に飛んだ。
俺はそれが人であることをなんとなく感じ取ったので急いでその人の下にもぐりこむ形でキャッチする。
「な!」
相手はビックリしながらも武器を取り出す。
「何者!」
相手が思わず呟く。
しかしそれは悪手だ。
こちらはずっとタイミングを計っていたのだ。
相手が言葉を発すると相手の‘‘ずれ‘‘を感じる。
「シッ!」
俺はスキルを使わずに相手の懐に飛び込む。
黒いフードを被った相手は俺に硬直の瞬間をつかれ対応が後手に回る。
しかし、黒フードもなかなかの手練れのようでスキルを使わずに対応してきた。
(この黒フード対人戦になれてる...いや殺しに馴れてるのか?)
「くっ!」
黒フードも強いとはいえ最初でペースを握った俺は流れを相手に渡さない。
すると相手は自爆覚悟なのか姿勢を低くしてスキルを発動した。
「コイツは!」
1対1なら完全な悪手だが、今の俺には後ろに守るべきものがある。
まぁ守るだけならいけそうだが相手の狙いは別だろう。
しかし、守るという選択肢を捨ててまでコイツを捕まえるべきか判断できない今俺は袋の人を守りに入った。
「ガキンッ!」
相手のスキルを受けて流すと黒フードはその力を利用してそのまま俺たちの後ろへ走り去ってしまった。
「どうするか。」
今追いかければ俺ならば追いつけるだが、袋の中身の確認が優先されるべきだろう。
俺は黒フードを追いかけないことにし、袋の中身を確認する。
中身は悲鳴の元であろう女の子が入っていた。
袋から完全に出し、状態を確認する。
袋の中は血が溜まっておりかなり危険な出血量なのがわかる。
とにかく俺の今の一番の回復量を持つ【ハイヒール】をかける。
なにも反応がない...
首筋に手をあて脈を確認するが、ダメなようだった。
俺は仕方なく女の子を袋に入れなおし冒険者ギルドに向かった。
その時にⅠのバッシュさんに幼い女の子が襲われたろいう連絡を入れた。
ギルドに着くと、俺は受付に行ってバッジを提示しながら言った。
「女の子が殺されていた。冒険者ギルド戦闘員のⅠに連絡を入れているどこか使っていい場所はありますか?」
受付の男の人は一瞬ビックリしたような反応をしたが俺のバッジを見て察したのか奥の部屋へ通してくれた。
俺は待っている間に先ほどの戦闘を振り返る。
こちらの不意打ちから立て直す冷静さ。
ペースはこちらにありながらも粘り強い戦いに、冷静な判断。
そしてなにより刃を交えた時の違和感。
力量はこちらが完全に上だが、‘‘無理やり‘‘攻撃を防ぐ力技みたいなものがあった。
たまに、戦闘技術はないが目が異常によくステータスが高いものが同じようなことをするが、それ以上に目が良かった。
目がかなりいいレベルの相手は何度もしてきた、だがそれを上回る目のよさ。
まぁ1対1なら負けはしないが、やりようによってはやられるかもしれない。
そんなことを考えていると扉をノックする音が鳴った。
「バッシュとギルド長だ!入るぞ!」
「どうぞ。」
Ⅰがギルド長を呼んだのだろう。
「襲われた女の子は?」
俺は袋を指さした。
Iが袋を開ける。
「ハイヒールをかけたがその時にはもう駄目だった。」
俺が女の子の状況を告げる。
「ハイヒール?お前は刀を使っていると聞いていたが...まあいい。オイ!」
Iが呼びかけるとギルドの職員が入ってきた。
「この子はすでに亡くなっている。急ぎ身元を確認をして親族がいないか調べろ。」
「はい!」
そういうと女の子をギルド職員が運んで行った。
「それじゃあ早速だが話を聞かせてくれるか?」
俺は頷き当時の状況を話した。
「なるほど、戦闘時間は短く相手の力量はかなりのものだったと。」
「ああ、犯人に繋がるものは何も得られなかったが。」
「いや、いい今回の件で犯人は戦闘に長けたものだということだけでも分かってよかった。これからの情報収集は戦闘員のみに絞らせる。」
「ああ、その方がいい。それと戦闘に長けているついでに殺しにも慣れている感じだった。」
「なに?」
「俺は対人が得意なんだが、相手も対人に馴れている感じがあったし攻撃も全部急所を狙うやり方だった。」
急所はみんな警戒するので普通は別の場所に意識を逸らしてから狙うものだったが、相手は攻撃以外の動作で俺を誘っていた。
無駄なく急所を狙うやり方だった。
「話を聞いていると凄まじい相手だな。」
「まぁ複数人相手にできるような技量ではなかったから完全に1対1特化型だったな。」
「そんな相手をお前は捌き切ったのか?」
「こっちは最初に不意打ちをしてペースを握っていたからな。女の子を気にせず戦えるならまず逃がしはしない。」
「ハイヒールも使えるようだがお前は一体...」
「企業秘密だよ。俺のことを探るよりも事件のことを探った方がいいんじゃないか?」
「すまない。マナー違反だったな。引き続き調査を頼むよ。」
「ああ、今度は相手が殺人者ということはわかってるからな容赦はしない。」
「そうだな、状況があるなら殺しても構わないが証拠がないい状態で殺すのはできるだけ避けてくれよ。」
「ああ、わかってる。その時の状況を見て判断するよ。」
「頼む。」
その場で助けるべき命があるなら俺は間違いなく殺すだろう。
1対1で対峙するなら探ってみる価値はあるかもしれない。
「それじゃあ、これ以上報告することはないからもういいか?」
「ああ、報告ご苦労様。後ほどギルド員全員に今回の内容をメールしておく。」
「わかった。じゃあ夜遅くまでお疲れ様。」
俺は報告が終わると退室した。
今回はこの世界にきて初めて対人戦、いや、命のやり取りをした。
戦っている時は余裕がなく何も感じていなかったが、今になって手が震えていた。
(ダメだ!こんな覚悟じゃ!今日もあの女の子の悲鳴を聞きながら救えなかったじゃないか!)
知らない女の子の死。
悪いのは犯人なのはわかっている。
だが、暗く重い気持ちはどうしようもなくアキミチにのしかかってくる。
その日は女の子を思ってなのか、自分の心の弱さになのか涙を浮かべながら眠りについた。