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聖人シモンと星の銀貨  作者: 日比野暮
第3章 聖人シモンと精霊姫の復讐
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第3章 28話 恒例行事

 国王陛下に謁見した後、僕たちは再び転移門(ポータル)を潜りモルトへと戻った。ちなみに、師匠は国王陛下と別の相談事があるらしく、そのまま王宮に居残ることになった。一体なんの相談なのか少し気になったけど、僕たちに相談するような話ではないと師匠が言うので深くは訊ねなかった。国王と大賢者の間柄ともなれば、相談事も色々とあるのだろう。



「それにしても、この転移門(ポータル)という魔法は素晴らしいな」


「シモン君、当家のお抱え冒険者にならない?」



 オールストン伯爵とセルマ様は初めて経験した転移魔法をいたく気に入ったようだった。お抱え冒険者のお誘いには少し心が動いたけど、結局お断りした。折角グウェンさんと一緒に暮らすことになったんだし、しばらくは二人の自由な生活を満喫したかったからだ。


 伯爵夫妻の引き留めをどうにか振り切って屋敷を辞した後、僕たちは街の市場をぶらぶらしながら自宅に向かう。



「これで本当にひと段落ですね」


「シモン、また敬語に戻ってるわよ」


「あ、すいません……じゃなくて、ごめん」



 グウェンさんに敬語を使わずに喋るのはまだ難しい。なんといっても僕より年上だし冒険者としての経験も長い。そしてなにより、彼女は飛び切りの美人である。今もすれ違う男たちのほぼ全員が彼女を振り返っていく。こんな人を相手にくだけた接し方ができるほど、僕は異性に慣れていないのだ。



《心の中でさん付けしてる時点でダメダメなの》


「ちょっと、僕の心を読まないでくれる!?」


「シモン、たとえ心の中であっても敬語はやめてね」


「うっ……分かりまし、いや、分かったよグウェン」



 にっこりと微笑むグウェンさん……いや、グウェンの注文に、僕はもはやぐうの音も出なかった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 自宅に着いた僕たちはそれぞれ応接間のソファに腰を落ち着ける。オールストン伯爵と国王陛下に報告を済ませた今、ディアボロに関わる厄介ごとも今度こそひと段落だ。

 さて、これからどうしよう。差し当たってやらなければならない事も無いし、しばらくはこの家でのんびり過ごそうか。たまにはギルドを覗いてみて、面白そうな依頼があったら受けてみるのもいいな。


 そんな事をなんとなしに考えていたら、ステラがわざとらしい呆れ顔を僕に向け、ぴんと立てた人差し指を左右に振ってみせる。



《ちっちっちっ。シモン様ったら大事なことを忘れてるの》


「えっ?もうやる事は無いと思うけど」


《恒例のステータスチェックを忘れてるの》


「あっ…………!!?」



 そういえばステータスの事をすっかり忘れてた!

 待て、今回僕は何をした?



  ・ディアボロの全拠点を掃討して子供達を救った

  ・ダンテが放った破滅の爆炎(メギド)を無効化してヴァレリアの街を救った

  ・グウェンさんの聖痕から〝聖なる力〟が戻ってきた

  ・ダンテを討伐して将来の禍根を断った



 ヴァレリアって確か王国第二の都市だったよね……。これ駄目じゃん。明らかに駄目なやつじゃん……。

 自分の行状を思い出すごとに体中から血の気が引いていき、僕はがっくりと両膝をついた。



《シモン様の諦めがついたところで、シモン様のステータスを御開帳~♪》


「ははは……もうどうにでもしてくれ……」




─────────────────────

名 前:シモン

種 族:人間(真聖人)

性 別:男

年 齢:18


生命力:3000000 (+3848164)

魔 力:3000000 (+3830012)


筋 力:3000000 (+3838275)

体 力:3000000 (+3898539)

精神力:3000000 (+3819842)

知 能:3000000 (+3842984)

感 覚:3000000 (+3808348)

器用度:3000000 (+3878520)

敏捷度:3000000 (+3829475)


祝 福:聖人の奇跡 星の銀貨


技 能:仙術  Lv68

    根源魔法Lv285 付与魔法Lv64

    戦闘技 Lv108

    物理耐性Lv36  石化耐性Lv16

    魅了耐性Lv38  混乱耐性Lv16 恐怖耐性Lv16

    狂化耐性Lv10  毒耐性 Lv20 麻痺耐性Lv16

    気配探知Lv206 危険感知Lv98 隠密  Lv45

    地図作成Lv26  罠解除 Lv7  開錠  Lv5

    料理  Lv198 解体  Lv8

    交渉  Lv35  推理  Lv4


称 号:悪魔殺し 魂の救済者

─────────────────────




 …………。


 なんですかこれ。


 ほんともう、なんなんですかこれ。




《今回助けた人の数は317291人。これで通算381729人になったの。さらに〝聖なる力〟が戻ったことによって基礎ステータスも大幅アップなの!》


「大幅にも程があるだろ!!少しは遠慮しろ僕の身体!!!!」



 各種ステータスが補正値込みで軒並み600万越えとか人間辞め過ぎだろ!そりゃダンテも裸足で逃げ出すわ!


 これまで出鱈目だったのは補正値だけだったのに、〝聖なる力〟のせいか基礎ステータスまで爆上がりしてしまっているのが一層泣けてくる。なんというかこう、根っこから人間じゃなくなっちゃったというか……。


 落ち込む僕を励ますかのように、グウェンが声をかけてくる。



「シモン、元気出して。そのステータスのお陰で私たちは助かったんじゃない」


「そ、それはまあ……そうだけど」


「それに、次また悪魔に遭遇したら生け捕りにするよう国王陛下から依頼を受けてるでしょう?あのダンテよりも上位の悪魔が現れたら、今のステータスでも足りないかもしれないわよ」


「うっ……」


《グウェンの言う通りなの!だからシモン様はさらに人助けをしてパワーアップしなきゃならないの!》


「どうして……どうしてこんなことに……」



 これ以上さらに強くなれとか、この守護天使は鬼じゃなかろうか。

 しかし、ほんの3ヶ月前までは狩人として慎ましく暮らしていたのになあ。どうしてこうも人生が狂ってしまったのか。


 ソファで頭を抱える僕の肩に、後ろからグウェンがそっと手を置いた。



「元気を出して。貴方の人生が変わったおかげで救われた人も大勢いるわ。勿論、私もその一人よ」


「……そうだね。ありがとう、グウェン」


「どういたしまして」



 僕に呼び捨てにされたグウェンは嬉しそうに微笑んだ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 寝室のベッドに潜り込むと、すぐに心地よい眠気が瞼を重くする。


 小さい頃からずっと眠るのが怖かった。エルマー兄さんを目の前で失い、ディアボロに攫われる悪夢に何度うなされてきたことか。


 でも、その悪夢の元凶を振り払った今、私は毛布の中で久々の安らぎを感じていた。



「そこにいるんでしょう?」


《……ばれたの》



 金髪碧眼の可愛らしい天使がぺろりと舌を出して姿を現す。シモンの守護天使を自認するこの子は、不思議なことにどこにでも現れる。



《なんで分かったの?》


「多分、貴女が本気で気配を消していなかったからだと思うわ」


《……否定はしないの》



 昼間から薄々勘付いていた。この子は私に何か話したいことがあるらしい。だから、わざとこうして私に気づかれてみせたのだろう。



《グウェンには謝らなきゃいけないの》


「どうして?」


《シモン様がエルマーの生まれ変わりだって知ってて、ステラはずっと黙ってたの。ごめんなさいなの》


「なあんだ、そんな事」



 律儀に頭を下げる天使の姿に思わず微笑みが漏れる。



「謝らなくていいわ。貴女がなぜ黙っていたのかは何となく分かってるから」


《えっ》


「シモンの正体を知ったら、多分私はディアボロと最後まで戦えなかった。だから貴女はそれを秘密にしたんでしょう?」


《……グウェンには敵わないの》



 私はディアボロを心底恐れていた。それでも立ち向かっていたのは正義感でもなんでもない。ただ、私のために死なせてしまったエルマー兄さんへの罪滅ぼしをするという一心だった。


 しかし、そのエルマー兄さんの魂が生きて私の前にいると知ってしまったら──私は戦いなど放り出し、彼と共に逃げる道を選んでいたかもしれない。



「ひとつ教えてくれるかしら」


《内容によりけりなの》


「貴女がシモンとダンテを戦わせたのは何故?」



 あの戦いが始まった時点では、シモンよりもダンテの方が明らかに強かった。ステラがシモンの守護天使であるならば、その戦いを止めなければならなかったのでは。



《……シモン様には時間が無いの》


「時間がない?ま、まさか死の病に……!?」



 蒼白になってベッドから立ち上がろうとした私をステラは優しく制した。



《そういう意味じゃないの。シモン様が病気で死ぬようなことは無いから安心するの》


「……そう」



 ホッとする私に聞こえないほどの小声でステラが呟く。



(〝約束の未来〟まであと少し……それまでに、シモン様にはもっと強くなってもらわなきゃならないの)


「何か言った?」


《ううん、なんでもないの》



 白を切ったステラが、急に悪戯っぽい表情を浮かべる。



《そんなことよりグウェン、シモン様の事をどう思ってるの?》


「どういう意味?」


《もちろん男としてどうかってことなの。寝室で女子同士がする話といったら恋バナと相場が決まってるのー》


「……はあ!?」



 シモンを男性として意識……?


 確かに頼りがいはある。優しいし料理も上手い。こうして一緒に暮らすことにも何ら抵抗はない。

 そして何より彼はエルマー兄さんの生まれ変わりだ。大好きだった兄さんの魂が彼の中で息づいているというだけで、自分の冷え切った心が温かさを取り戻していくのを感じる。


 でも、エルマー兄さんの人格は輪廻とともに失われ、二度と戻ってこない。魂は同じであっても、やっぱり別人なのだ。



「残念だけど、貴女が期待するような感情はまだ無いわ」


()()ね……ふーん》



 そう言ってにんまりと笑うと、ステラは空気に溶けるようにして消えていった。



 ()()……?

 言われてみると自分でも不思議だ。何故私は『()()』なんて言葉を使ったんだろう?



 まあいい、今夜はもう眠ろう。今の疑問には、ここで暮らすこれからの時間が答えを出してくれる筈だ。


 毛布を頭からかぶって目を瞑ると、立ち去りかかっていた眠気がすぐに戻ってくる。眠りの精霊に意識を委ねる間際、グウェンの脳裏に黒髪の青年の顔が一瞬だけ浮かんで消えていった。

これで第3章本編は終了となります。

ここまでお付き合いくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。

感想など頂けますとなおのこと嬉しいです。


明日、例によって本章の登場人物紹介を投稿しますが、その後は少し投稿をお休みして書き溜め作業に専念するつもりです。

暫しお待たせすることになりますが、どうかご了承くださいませ。

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